川本梅花 フットボールタクティクス

【無料記事】取材は「武蔵野市立武蔵野陸上競技場」より

取材は「武蔵野市立武蔵野陸上競技場」より

JFL(日本フットボールリーグ)に所属するラインメール青森の1年間を通した戦いが終わった。11月13日の日曜日、MIOびわこ滋賀との最終戦をホームグラウンドで迎えたラインメールは、0-2の完敗を喫した。セカンドステージは勝点28で5位。年間通算順位は、勝点45の8位だった。なお1つ上の7位には、同じ県のライバルチーム・ヴァンラーレ八戸がいる。

ラインメール青森は、セカンドステージの第1節(6月19日)対FC大阪戦[1〇0]から第8節(9月11日)対奈良クラブ戦までの8試合のうち、第7節のブリオベッカ浦安戦の引き分け[0△0]をはさんで7連勝を飾り、スタートダッシュに成功する。一時は首位をキープしたが、第11節(10月16日)のホンダロックSC戦での大敗[0-3]をキッカケに失速していくことになる。

僕が見に行った試合は、ホンダロックSCに大敗を受けての次の試合となった第12節(10月22日)の東京武蔵野シティFCとの一戦であった。戦いは、MF村瀬勇太の先制点からFW中村太一の勝ち越し弾で2-1の勝利を得た。この勝ち星が、サポーターにとって今季最後のうれしい贈り物となった。

【黄色の瞳】Note.6:取材は「武蔵野市立武蔵野陸上競技場」より

写真はスタンドから試合を見つめる少年の後ろ姿だ。青森からチームを応援するためにスタジアムがある三鷹まで駆けつけた。お母さんと一緒だったから、少年の自由意思ではないのだろうが、少年が見つめる先にラインメール青森の選手たちがいた。

社会人リーグから昇格した初年度のラインメール青森が、1939年に創設された歴史を持つ横川電機を起源とする東京武蔵野シティFCに、実力差を見せて勝利を収めるなど、本当なら「奇跡」と呼べる出来事である。少年の目に映るチームが、今年度にやり遂げた戦いは、ものすごく称賛に価することなのだ。

試合が終わって監督会見が行われる。先に登壇したのは、東京武蔵野シティFCの吉田康弘監督だった。監督から発せられた第一声がこれである。

「実力差を感じました」

吉田監督の言葉を聞いて、僕も同じような印象を抱いていた。

「実力の差が出た試合だった」

しかしラインメール青森は、この試合の後に失速する。失速の原因は明らかで、相手に研究されたことである。守備が良いラインメール青森は先制点が欲しい。しかし先に相手に先制点を奪われたら、攻撃のために前がかりにならざるを得ない。そこを突かれて失点を重ねて悪循環に陥ったのである。

ラインメール青森がJ3に昇格するためには、ライセンスで規定されているいくつもの事柄をクリアしないとならない。それは、この日の少年が、自分の意思でラインメール青森を応援しようと駆けつける日まで待つ必要があるかもしれない。道のりは険しいが、東京武蔵野シティFC戦での試合を見て、ラインメール青森の未来は輝くものとなるだろうと僕は確信を抱いたし、そうなることを心から願っている。

川本梅花

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