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【渦中の話】イングランド プレミアリーグの昨季を振り返って今季を予測しよう 結城康平

インタビュー【渦中の話】結城康平

イングランド プレミアリーグの昨季を振り返って今季を予測しよう

昨季の2016-17シーズンは、アントニオ コンテ監督が率いるチェルシーがリーグ優勝を成し遂げた。3バックの守備システムを柱に、堅守でチームを作り上げた。プレミアリーグは、コンテ監督に代表されるように、いくつかのクラブで有名監督が指揮を執る。マンチェスター・ユナイテッドはジョゼ モウリーニョ。マンチェスター・シティはジョゼップ グアルディオラ(ペップ)。トッテナム・ホットスパーはマウリシオ ポチェッティーノ。リバプールはユルゲン クロップ。こうしていくつもの名将と呼ばれる指揮官の名前を列挙できる。それだけ監督の生存競争も激しく、成績が少しでも下り坂になれば、たちまち解雇されてしまう。昨季も、次のようなありさまだ。

フランチェスコ グイドリン(スウォンジー)2016年10月3日解任
アラン パーデュー(クリスタルパレス)2016年12月22日解任
ボブ ブラッドリー(スウォンジー)2016年12月27日解任
マイク フィーラン(ハル・シティ)2017年1月3日解任
クラウディオ ラニエリ(レスター)2017年2月23日解任
アイトール カランカ(ミドルスブラ)2017年3月16日解任
デイビッド モイーズ(サンダーランド)2017年5月22日辞任

2017-18シーズンに入っても、その傾向は続く。クリスタルパレスの監督であったフランク デ ブールは、わずか4試合で解任され、後任には元イングランド代表監督のロイ ホジソンが指名された。

イングランドで監督業を行う人たちの労働組合「リーグ・マネジャー・アソシエーション(LMA)」の発表によれば、1人の監督が解任されるまでの時間の平均年数を、1.16年と算出する。監督が出たり入ったりの激しい動きがあるプレミアリーグの昨季を振り返りながら、今季の動向を予測してみたい。

語り部は、イングランドサッカーに詳しい結城康平(@yuukikouhei)です。

昨季注目のワトフォード

――昨季、注目していたチームは?

結城 シーズン前は、マンチェスターCとマンチェスターUに注目していました。そのほかで言えば、ワトフォードにも注目していました。ワルテル マッツァーリが監督になるので気になっていました。

――マッツァーリは、ナポリ(2009-13)やインテル(2013-14)で監督を務め、ナポリ時代に3バック採用。チーム躍進の基礎を築いた人物ですね。ワトフォードでのマッツァーリ監督は、降格だけは免れましたが、悲惨な結果に終わりました。

結城 メンバーがシステムに合わなかった。それが、苦しんだ理由ですね。

――ワトフォードは昨季17位でした。

結城 プレミアで3バックが流行(はや)っていて、3バックが得意な監督が入った時に、どういう風にチームに化学反応が起きるのか、と思って見ていました。マッツァーリ監督は、メンバーがハマるとけっこう面白いサッカーをします。イタリア人監督らしく、緻密な攻撃パターンをチームに仕込む腕がある監督だったので、それがプレミアに来てどうなるのか、と気にはなっていました。ナポリ時代はラベッシ、カバーニ、ハムシクの組み合わせでリーグ最強のトリデンテを生み出した監督ですし。

――イタリア人監督であっても、選手に彼のやり方を、戦術を落とし込むことができなかった、と考えていいんですかね。

結城 報道によると「英語がそこまで得意じゃなかった」という話もありました。チームの中心FWがトロイ ディーニー選手など放り込むことで強さを発揮する選手だったこともあり、サイドから連係して崩していく動きができる選手が少なかったことにも苦しみました。今季はマルコ シウバが監督ですからね。

マルコ シウバは昨季途中(2017年1月)から、ハル・シティの監督に就任しました。チームは結果的に降格したのですが、最下位が決定的だったチームを、残留させるかどうかまで持ってきた。その手腕が評価されて、今季はワトフォードを率いることになったのです。戦術的に器用な面子ではないので、どのようにチームを導くかには注目です。

――マルコ シウバは、ポルトガルのスポルティング(2014-15)で監督をしていて、その時にちょうど田中順也選手(現ヴィッセル神戸)が柏レイソルから移籍しました。ポルトガルカップで優勝して、7年ぶりのタイトルをスポルティングにもたらした。当時、『サッカー批評』(双葉社)で田中順也選手の連載をしていたので、シウバ監督には注目していました。今季のワトフォードの成績が気になりますね。

昨季はELを獲得したマンチェスターU

――マンチェスターCとマンチェスターUの監督に関して、期待されたような成績を残せていたとは言えませんよね。サッカー自体もそれほど良かったとは言えない。モウリーニョ監督は、UEFAヨーロッパリーグ(EL)優勝という結果を残しましたが、ペップは、バイエルン監督時代と比べて、戦術的な斬新さはほとんどなかったです。

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