石井紘人のFootball Referee Journal

【無料記事】レフェリーを目指す人へ三級審判員インサイドレポート

■体力テストで3名が脱落
日本の審判員は1級を頂点に4級まであり、1級の中にPR(プロフェッショナルレフェリー:日本サッカー協会と契約するプロの審判)や国際審判がいる。
私も、そのカテゴリー内の3級審判員の資格を取得しているのだが、今回はその3級審判員試験とはどのようなものかをレポートしたい。

 

3級審判員は、簡単な講義の後の筆記試験を受ければ、ほぼ全員が合格する4級審判員とは違って、落ちる人間が毎回2割はいるという。
3級審判員に合格するためには、第一関門として12分間の間に2200mを走らなければいけない。これが何気にハードである。不合格者3人という数字は少なく感じるかもしれない。しかし、余裕を持ってクリアした合格者もまた少ない。早い人でも3000mはいかない。平均が2500mくらいだ。
もちろん、100%で走っている審判員は少ないだろうが、表情から推測すると70~80%は出ていただろう。かく言う私も同様で、記録は2600m。翌日からの筋肉痛がひどかったのを思い出す。

その第一関門を突破すると、最終関門の筆記試験が行なわれる。

 

試しに2問。
<下記の判定と対応を答えよ(ゴールならば、そのままゴールと記入)>
*原稿末尾に答え記載。

1)PKを蹴った選手が、ポストに当たった誰も触れていないボールを頭でゴールに押し込んだ。
2)スローインのときに、スローインしようとする選手の前で相手選手が両手をバタバタ広げてプレッシャーをかけている。

4級審判員と比べると難問が多かったため、簡単な事例しか思い出せないのだが、このような問題を20問近く解く。そして、昼食後に結果発表があり、17人が残念な結果となった。


疑問符がついた講義内容
3級審判員受験の条件は、4級審判員を取得後6か月以上経ち、かつ15試合以上審判を経験していなければいけない。そんな人たちが集まっているにもかかわらず、体力試験と合わせて20人も落ちている。
また、試験後、皆が焦りながら答え合わせしていたように、合格した審判員も100%の自信は持っていないようだった。

だからこそ、合格後1時間30分に渡って行なわれた講義は、もっと有意義なものであってほしかった。

インストラクターの紹介や、審判とは何かというものが流され、審判報告書の書き方を学ぶ。これは、マニュアルを配ってもらえれば理解できる。
そうではなくて、難しかった筆記試験の答え合わせをして、わからないことがあってはいけない審判の、わからないことをなくすこと。まずこれをやらなければいけないのではないだろうか。
そして、審判員が集まる場なのだから、日本の審判の基準を統一する場としても使うべきだ。

 

■審判のレベルアップは協会全体の取り組みが不可欠
ルールブックの文章をプレーに当てはめていくのは非常に難しい。私がFBRJにて、レフェリングを分析し、その対応を読者の皆様と考えているように、審判たちも様々な考えでレフェリングをしている。
だからこそ、審判資格取得の場でも、様々な映像を使って、なぜこのような判定をしたのかを解説し、基準を示す講義をしてほしかった。

たとえば、Jリーグで審判問題と言われた映像を使い、喧々諤々の議論を行う。稀な判定を知ることで審判に必要な経験値を上げることにもなる。さらにいえば、そういった場が審判資格取得の場にあれば、資格を取得しようと思うサポーターもあらわれるかもしれない。指導者ラインセンスはJFAの考えを知る場になっているように、審判資格も、それくらいの講義を目指すべきではないだろうか。

今回、3級審判員の資格を取得して思ったのは、審判から見ても審判は難しいということ。そして、審判界にはまだまだ改善の余地があるということだ。それを指摘するのがメディアの役目、FBRJの責務だとも自戒している。(了)

 

◇答え合わせ
1)判定「他の競技者が触れていないのでファールをとる」→対応「触れた地点から、相手ボールで間接FKを行なう」
2)判定「笛を吹き、試合を停止させ、妨げた競技者に反スポーツ行為で警告を与える」→対応「同じ地点からスローインで再開させる」

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