石井紘人のFootball Referee Journal

家本政明「ファウルの○×だけでなく、マネジメントを突き詰める」

こういうようなシーンです。『その気にさせる』マネジメントというお題で、それぞれのグループでディスカッションして頂きます。目的が、選手を『その気にさせる』マネジメントということなのですが、なかなかそういう風に言われても、難しいと思うので、一応、ゴールを設定します。そのゴールの前に、今の状況はPKですよね。それにも色々な状況があって、どっちがPKを得ましたか?

 

「栃木です。」

 

ですよね。ホームとアウェイは?

 

「アウェイです。」

 

ホームチームが、ホームチームのスタジアムで、アウェイ側のサポーターの前でPKをとられた。ハンドリングは、誰が見てもハンドリングだと思いますか?

 

「誰が見てもではないです。」

 

ですよね。まぁ、ハンドの概念自体が非常に難しいのもあります。その中で、このディスカッションでの到達点は、このファウルに対する議論ではなくて、どうすればスムーズにコントロールできたか。スムーズにするために、選手を『その気にさせる』にはどうするべきだったか。グループの1~3は、主語は主審で、主審の対応についてと、選手は何をしようと思ったか。グループの4~6は、主語は選手で、選手の気持ちになって、主審の判定や対応に対して、何を感じ、何をしようとしたか。ゴールは設定しましたが、アプローチや答えは一つではないので、ディスカッションして貰えれば。

(中略)

では、この判定にはどのような要素がありますか?

 

「ホームの横浜FCが、アウェイの栃木FCPKを与えてしまった。」

 

そうですね。判定にはAチームとBチームがあって、判定をするにあたり、「この判定でAチームはこうなるな」というのがあります。そこにホームとアウェイもある。他には?

 

「ジャッジした後に、次に移るのが遅かったと思います。次にいっていれば、あのように選手が集まることはなかった。動きがモタついていた。」

 

まさにその通りですね。それって、研修会で散々やってきましたよね。反則をとって、次にリスタートというアプローチは知っていますよね?では、なぜ、この時に、レフェリーはそれが出来なかったのか?パニックになったというのもあると思いますし、予測が出来ていなかったので、後手になり、上手くいかなくなったというのもあるでしょう。副審から見てどうでしょう。副審、どこにいました?

 

「ゴールエリアです。」

 

なんでゴールラインにいたのでしょう?PKをとった時の副審の位置って通常どこですか?ご存知ですよね。では、なぜ副審はあそこにいたのでしょう。

 

「横浜FCの異議が大きくなったので、しっかりと収束するのだろうかという不安があったと思います。」

 

それは主審との対立や、主審へのアプローチを助けようという意味で?

 

「主審が懐で全てをやっているような感じはしなくて、どちらかというと追われている感じがある。そこに、自分が見ているだけではなく、アプローチをしようと。」

 

副審担当の方っていますか?正直に、教えてください。別に正解がある訳ではないので、あそこに行きますか?

「行かないです。」

 

では、なぜあそこに行ったと思いますか?不安が一つあるとのことです。

 

「主審と副審がコミュニケーションをとれていることを示したかった。」

 

「主審が1人、選手が3人の状況だったので、副審が行けば、23になる。」

 

なるほど。これで、いくつかのポイントがあがったと思うのですが、まず『AチームとBチームのことを考えていなかった』ことがあげられますね。二つ目が、『こういう状況になったら、こういうことが起こるよねということが知識としてはあっても、この状況になった時には対応できなかった』。この二つが大きかったのではないかなと。では、研修会で散々やってきたのに、なぜ、こうなってしまったのでしょうか?

 

「自分がコミュニケーションをとれば、選手が受け入れると思ったのではないでしょうか。」

 

「そういう状況での経験が少なかった。」

 

「知識としてあって、知っていることで、出来ると思ってしまった。“知っている”を“出来る”にするためのアプローチ。もう一つが、そのアプローチを、混乱まではいかなくても、高陽した時にできるか。そういった準備ではないでしょうか。」

 

「我々が相手にしているのは人なので、その部分ではないでしょうか。」

 

人ってありますよね。さらに言えば、Aチーム、Bチームの人って同じでしょうか?

 

「選手としての役割もありますし、価値観も違う。同じ判定をしても、その人によって変わってくる。」

 

最初のPKをとるシーンから映像を見てみましょう。この中で、キーマンがいます。

 

「主審に近寄っていっている横浜FC10番ですね。」

 

なぜキーマンですか? 

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