石井紘人のFootball Referee Journal

【無料記事/石井紘人レポート】審判委員会記者ブリーフィング後編「レターだけでなく、Face to Faceでクラブとも対話したい」  

>>>前編はこちらから

 

上川徹JFA審判委員会副委員長/トップレフェリーグループシニアマネジャー「では、ここからはトピックスという形で。

<ハンドリング>

J21節 ロアッソ熊本×松本山雅FC

最初はリスクをとって(手を後ろに置いて)いるんですよね。クロスボールを止めに行っているので、相手のプレーは予測できる。クロスがくることを考えれば、手が体の幅から出ていると、(ボールに当たることが予測できるため)ハンドリングになってしまう。

J18節 横浜Fマリノス×サンフレッチェ広島

EURO2016のイタリア戦のドイツ選手のハンドまで分かりやすくありませんが、ハンドリングです。GKもいて、シュートが入るか分からないものに対するハンドリングは、得点の機会阻止にはなりません。なので、このハンドはシュートをハンドで止めたということで警告のみです。

J18節 湘南ベルマーレ×大宮アルディージャ

ゼロックスの(主審を務めた)飯田さんですが、よく見ていますよね。距離は短いですが、ボールの方向、相手の方向を見ても、ハンドリングです。これはシュートではなく、折り返しですので、警告は示していません。

J19節 横浜Fマリノス×湘南ベルマーレ

これはどうでしょうか?良いポジショニングで見ており、見えすぎたかもしれません。これは我々の見解としては、ハンドとするのは厳しいなと。レフェリーをフォローする訳ではなく、シュートが来る前に手が広がって、シュートが来た時に手がニュートラルな位置にきている。この動きがシュートブロックに見えてしまったそうです。が、手はニュートラルな位置にありますし、止めに行こうという風にも感じませんので、ハンドリングとする必要はなかった。もちろん、十分に受け入れられる判定ではあります。

J15節 浦和レッズ×ヴァンフォーレ甲府

(オーバーヘッドシュートへのブロック)腕には当たっていますが、ハンドリングではありません。正しい判定だと思います。腕を体の幅より広げていません。

アルビレックス新潟×川崎フロンターレ

33番のクリアが味方競技者3番の手に当たってしまう)これも興味深い場面です。これはノーハンドです。ディフェンスのクリアですし、予測はできないですよね。この3番の選手がゴール側に位置していたら、違うかもしれません。あわよくばという(未失の故意)というのがありえると思いますけど、この場面では目的はありませんよね。

<オフサイド>

J28節 セレッソ大阪×ギラヴァンツ北九州

最初、このオフサイドとなるポジションにいるのですが、その後で壁の位置まで戻ってくる。最初のポジションにいれば、GKの視線を遮っているとなるのですが、その後の動きで視線を遮っていないと判断しました。

 

ただ、この映像を見ると、GKの視線を遮っているんです。この選手がここに立っている目的が何なのかというのは一つポイントかなと思います。GKの視線を遮るためです。そして、その立っているポジションがオフサイドポジションであれば、オフサイドとすべきです。このシーンですが、いくつかのチームから聞かれました。それで5月にFIFAの副審のコースがありまして、世界でもFK時にこういった戦術をとるチームが増えている。これはオフサイドと罰すると。ただし、ボールが、この遮っている選手の近くを通るというのが前提です。横に出されたら違います。シュートの時ですね。

*参照URLhttp://www.jfa.jp/news/00008777/

 

J211節 FC町田ゼルビア×FC岐阜

8番の選手とGKの反応を見て下さい。ボールは8番の近くを通ります。8番は意図的にオフサイドポジションをとり、ボールの方向に寄っていく。GKの反応が遅れています。ですが、これをレフェリーや副審が判断するのが難しい。8番が競ってくれれば分かるのですが、囮のようにボールの近くを通るだけ。でも、GKは一瞬反応が遅れている。オフサイドの定義で、インパクトという話をさせてもらいましたけど、これは十分に相手GKにインパクトを与えている。

GKのボールの保持>

ファーストステージで二つありました。

J116節 FC東京×アルビレックス新潟

レフェリーもアクションはしているんです。GKも十分にボールを離せる時間があって、何回かプレーしようともしている。

柏レイソル×アルビレックス新潟

こちらもとられても仕方ないかなと。この反則についてはシーズン前にも説明しました。良くなってきてはいます。もちろん、すぐに笛を吹くのではなく、レフェリーにも出来ることがあります。マネジメントですね。GKがボールを持っている時に、もっと大きな声掛けをする。危ないなと思ったのであれば、CKの時にGKの近くに行くチャンスがあるので、「危ないよ。間接FKになるよ」と声かけをしたり、キャプテンに言うのも良いかもしれません。そういったリードがあった上で、笛を吹かれたのであれば、皆さんからも(記事などで)指摘して欲しい。この反則をとったこと自体は間違いではないが、もう少しマネジメントできたかなと。

GKの反則>

EURO2016 クロアチア×スペイン

これはやり直しで、GKに警告ですね。

J116節 アビスパ福岡×川崎フロンターレ

これは得点になったので問題ないですが、GKが止めていたら警告で、蹴り直しです。二歩も出ている。

J219節 セレッソ大阪×徳島ヴォルティス

両チームの選手がキックの前に入っています。これは入っても入らなくてもやり直しです。これはGKが前に出ていないので、キックを止めていても警告はでません。

<追加副審>

J313節 S.C.C.横浜×福島ユナイテッドFC

現在、J3でトライアルを6試合やらせてもらっています。ラインにボールがかかっていますよね。ノーゴールを見極めました。もう一つはCKなどセットプレーの声かけですね。レフェリーが試合を止めて介入する前に、しっかりと声掛けしないと意味ないです。」

 

小川佳実JFA審判委員会委員長「ビデオを見て頂くと感じると思うのですが、ノーマルスピードとスローモーションではまったく違う映像になりますよね。ビデオアシスタントレフェリーを置いたとしても、コンタクトがどこにあったかを見極める時だけ、スローモーションを使う形になります。それ以外はノーマルスピードで見ないといけない。それは、レフェリーと見ている映像が変わってしまうためで、同じ立場で見なさいと言われている。でも、スローモーションで見れば、全然違いましたよね?それをレフェリーは一回で見極めないといけない。レフェリーの難しさだけをアピールする訳ではありませんが、やはり難しいんです。

ただ、私たちは、ビデオでの振り返りを行い、レフェリーのポジショニングとか、動きとか、目や顔の角度を上川さんたちでしっかりと見て、どうだったか(分析します)。もし、ポジショニングが悪ければ、それを改善します。ファーストステージも残念ながら、いくつか(誤審が)あった。ミスが試合に影響してしまった。そういった所はクラブともコミュニケーションをとって、レターだけではなく、可能であればFace to Faceで話が出来る環境を作りたいなと。昨日も、Jのゲーム担当者会議に出て、強化担当の方が多かったんですが、レフェリーのレベルアップを望まれていました。そして、批判だけでなく、クラブも含めて何が出来るかというのをおっしゃって頂きました。上川さんも、プレーヤー出身です。ベルマーレでゴジラと言われていた()激しい選手だったようで()そういった(クラブ事情を)知っている人が(審判にも)いるというのも大事です。

日本では「欧州のメディアやサポーターはレフェリーに寛容だ」と美談がありますが、どこでも(審判は厳しい目にさらされている)同じなんです。僕らは(美談に)逃げずに、オープンなマインドで仕事をします。皆さんに色々な情報をお伝えしていく。時に伝えることで、ある所だけを切られて、伝えられ方が変わってしまう。(記事は)自分の口で言う訳ではない(伝言ゲームな)ので。訊いたのですが、しっかりと作られた記事も、紙面の関係で、削らないといけない。でも、削られたことで、当初の内容と変わってしまう。皆さんが、レフェリーがどういったことをやっているのか理解して頂いて、徐々にアジャストしていくのかなと。そういった意味でも、こういった会は大切で、ミスがあった時は、僕らは厳しく批判される立場ですし、それを理解している。でも、(現場のレフェリーの)環境も作らないといけない。レフェリー界には20万人以上の人が関わっています。そのトップのレフェリーたちが輝いて見えるような環境を作る責任が私にはあります。その責任は他にもあって、皆さんに正しい情報を出すこと。「こういったこともやっている」と。約束はできませんが、PRトレーニングが素晴らしいとレイさんに言って頂いて、そういったトレーニングも取材して頂けるように出来ればなと。

(メディアに)媚びるつもりは全然なくて、言われることは言われて構わないと思うのですが、情報を出しますので、それを見て書いて頂ければと思います。長い時間、ありがとうございました。」

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ