石井紘人のFootball Referee Journal

全文掲載:浦和レッズ李への川崎フロンターレエドゥアルドはレッド、川崎フロンターレ戦のガンバ大阪アデミウソンはPKだった【審判批評無料コラム:レフェリーブリーフィング前編①】

今週月曜日に更新予定だった隔週コラムレポートですが、二日遅らせ、本日行われた日本サッカー協会(JFA)審判委員会による『2017 4 JFA レフェリーブリーフィング』の全文を掲載します。

 

上川徹JFA審判委員会副委員長「まずは簡単にデータを(前編②にて)。前回のデータは、シーズン初めからのデータになっていまして、非常に意見交換が多いように思われたようなので、今回は対象期間のデータになっています。166試合で意見交換の事象が36あり、その半分の18はレフェリーの判定が誤りだったと我々は見ています。では、早速。」

<川崎フロンターレ×浦和レッズ(参考記事:86分、インターセプトをしたボールをトラップした李に対し、エドゥアルドがスライディング)>

上川「如何でしょうか?ほとんどの方がレッドカードですね。理由は如何でしょう?」

 

―危ないじゃないですか。かすったからよかったですが、膝の皿にでも入ったら、大怪我になってしまう。

 

―足が上がっていて、意図を感じる。

 

―足の裏が見えている。

 

上川「凄く衝撃が強く感じますよね。ポイントとして、膝が伸びていますよね。相手に配慮して、膝を畳むような仕草があれば、見方も変わってくるのでしょうが。

これは実際の試合では、イエローカードが示されました。

レフェリーは、ボールにプレーしようとしていたと見えており、今ご覧頂いたような接触があったとは見えなかったようです。判定後にレッズの選手が不満を言ってこなかったように、ピッチ、選手の感覚でもボールにプレーしようとする意図はあると思われており、イエローで受け入れられていたのかなと。ですが、レッドカードです。

スピードもあり、膝が伸びた状態で足裏で接触をしている。安全を脅かしています。」

<ジュビロ磐田×FC東京 60分、ピーターウタカが櫻内に対して足の裏を見せてスライディングタックル>

上川「弱冠、赤が多いですかね?これは実際に、Jリーグ担当研修会でも使った映像です。メディアの皆様は赤が7割、イエローが3割でしょうか。

ジャンプして背中が浮いた状態、スピードがあり、足の裏も見せている。膝も伸びています。

それでもイエローという判断は、ボールにプレーしている点を考慮したのかもしれません。また接触の瞬間だけを見ると、部位から警告でおさめようというのがあるのかもしれませんが、レッドカードを出すべきでした。

レフェリーは、直接足の裏が当たっていなくて、ボールにプレーできているということで警告にしたとのことで、十分に納得できるものではありますが、チャレンジ自体は安全を危険にさらしている。粗暴な行為と考えます。

ファウルをした選手は、この前の接触で、ファウルの笛がなかったことに対するフラストレーションもあったかもしれません(参考記事:UEFA審判研修会「レフェリーはイエローランプを」)。ありがちなケースで、そういったこともあって、このチャレンジに繋がったのかもしれません。」

 

―これ白の選手が避け方が巧くて、たとえば完全に避けれて接触がなかったらどうなりますか?

 

上川「接触がなかったとしても、チャレンジの方法だけ見れば(懲戒罰レベルなのに、避けれたからといって何もなければ)やられた選手としては凄く不満が残る。粗暴なチャレンジと相手選手の距離があるのならば話は変わってくると思うのですが、プレーしようとしている所へのチャレンジで、相手選手がチャレンジが怖くてプレーを止めたとなると、安全を危険にさらす行為と考えられる。イングランドでは、プレーヤーズアソシエーションや監督のマネージャーアソシエーションで、こういったチャレンジを止めようという話をしているようです。」

<鹿児島ユナイテッドFC×福島ユナイテッドFC 904分、茂木が永畑へのスライディングの際に足の裏を見せてしまい、一発退場に>

上川「イエローが8割くらいですかね。赤の理由は?」

 

―さきほどのプレーがレッドならば、これもレッドではと。

 

上川「なるほど。どうですか?」

 

―ボールにいっているので、イエローなのでは?

 

上川「なるほど。これは実際の試合では、レッドカードが示されています。この後、選手が詰め寄ってくるようなファウルとなってしまいました。我々の判断もレッドカードと考えます。

見極めが難しいのは、さきほどのシーンはもっと遠い所からジャンプするようなタックルをしていますが、そこまでではない。なので、ボールへのプレーの意図はあると思います。

ただ、接触の部位は相手のくるぶしあたり。程度を見ても、大きな怪我に繋がる行為。

こういうタックルをする要因もあって、その前に接触でノーファウルがあった。笛を吹いてもらえなかったことに対してのフラストレーションがあったのかなと。」

 

―この危険なタックルをした選手が、先にボールに触ったらどうなるのでしょう?

 

上川「このケースは、ほとんど同時ですよね。あきらかに先にボールを触っていれば、話は変わります。ただ、危険なプレーであれば、間接FKという考え方もあります。」

<ガンバ大阪×川崎フロンターレ(参考記事:ドリブルでPA内に進入したアデミウソンがエドゥアルドのスライディングで倒れるが、東城主審はノーファウルとする。おそらく東城主審のポジションからタックルの角度、ボールの流れを見て、アデミウソンが自ら左足をコースに残したとジャッジしたのだろう。リプレイを見てもギリギリではあるが、まず言えるのはポジショニングの説得力が弱い。縦パスが入ることを予測しておらず、ステップを止めてしまっていた)>

上川「ノーファウルという方も8名ほどいらっしゃいますか。レフェリーもノーファウルとしましたが、なぜノーファウルと?」

 

―触れていないかなと。

 

上川「DFの選手の足が青の選手に触れていないということでしょうか?他には如何ですか。」

 

FBRJ(週刊審判批評)は「ライターと読者が議論できる雑誌」です。PCやスマートフォンがあれば、いつでもどこでもアクセスが可能。更新頻度も週3回から5回ですので、鮮度の高いタイムリーなコンテンツを読み、かつご登録頂くとライターと直接議論することが出来るコメントを書くことができます

石井紘人のFBRJで配信されるコンテンツは、以下のとおりです。

<毎月第一月曜と第三月曜日>

レフェリーブリーフィング全文掲載や独自取材によるコラムやレポート、Jリーグ担当審

判員取材記を更新

1位:浦和レッズ×鹿島アントラーズ20周年試合、どこも報じなかった審判団の真実

2位:2016ゼロックススーパー杯ガンバ大阪×サンフレッチェ広島戦の裏側

3位:家本政明ノンフィクション、何が変わったのか?

4位:レフェリーブリーフィング後、読者の疑問を審判側に直接取材

5位:「死ねといった」と言われたレフェリー、西村雄一の南アフリカまでのプロセス

<火曜日から金曜日>

読者からコメントのあった試合や判定のテレビチェック、タイムリーなコンテンツを更新

<土曜日から日曜日>

Jリーグの現地取材レポート

1位:【無料Jリーグ紀行第7回】浦和レッズ×鹿島アントラーズ両監督は西村雄一審判団をどう評価したか?

2位:【Jリーグ紀行第6回】試合中、レフェリーとコミュニケーションをとっていたノヴァコヴィッチに審判批評をしてもらった

3位:【Jリーグ紀行第1回】正しい判定をした審判員、記者会見場でメディアや監督はどのような話をしているか?

<その他不定期企画>

ドラゴン久保竜彦90分間独占インタビュー

読者の声を訊く「最優秀レフェリー投票」

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ