石井紘人のFootball Referee Journal

100%PKだった柏クリスティアーノへのサガン鳥栖キムだが「レフェリーは見えない事象に笛は吹かない」。審判はレイソル選手に感謝するはず【村上伸次審判団批評/無料コラム】

「先ほど映像も見ましたけど、(後半にクリスティアーノがペナルティーエリア内で倒された場面は)PKだったかなと思いました」と下平隆宏監督が語ったように、私もPKだったと思うし、さらにいえば村上主審も映像を見ればPKとするだろう。

では、なぜPKをとれなかったか?映像と共に振り返ってみたい。

59分、柏がバックラインのビルドアップからアタッキングサードまでボールを運ぶ。

この時、村上主審はしっかりとしたポジションをとっている。

そして、右サイドでボールを持ったキム・ボギョンがゆったりとしたドリブルからクリスティアーノにスルーパス。

村上主審も対角線審判法で中央の争点を見極めに行く。

ここでボールをタッチしたクリスティアーノに対し、たまらずキム・ミンヒョクがスライディングするも届かず。

しかし、村上主審は笛を吹かなかった。

というのも村上主審の角度からは、接触が死角である。レフェリーは「見えない事象には笛を吹かない」ことが原則。その「見えない事象」をなくすためにポジショニングが重視される。

このとき、ベストなポジションは中央から右寄りに移すことである。ただ、その前のレイソルの攻撃の仕方的に、勇気のいる選択ではあるが、いずれにしろ村上主審のポジショニングはベストまでいかない。

ここまで読まれて、FBRJの読者の方なら、「副審は見えていたのでは?」というコメントがあるであろう。

私もそう思う。ただ、その前のオフサイドの判定で神経を使い、一瞬、集中力を切らしてしまったのかもしれない。いわゆる「シャッターが閉じた」状態(参考記事:副審が見極められない理由とは?)だ。

現在、Jリーグ担当審判員たちは、主審と副審の協力の向上をはかっている(参考記事:レフェリーサイドからは見えないから副審との協力が必要)が、その課題があらわれたシーンだった。

追加副審がいれば、間違いなくPKになったと断言できるし、こういった誤審をなくすためにも、早急な準備が必要となる(参考記事:審判委員長「追加副審で防げたかもしれない」)。

そんな中でも、審判団を尊重し、試合を進めた柏レイソル選手たちの姿勢は素晴らしかった(参考記事:審判委員会も柏の選手たちに感謝)。審判側も、映像を見て、柏レイソル選手たちに感謝すると思う。

 

*ディエゴ・オリヴェイラとキム・ボギョンの退場については(審判批評

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