「GELマガ」鹿島アントラーズ番記者・田中滋WEBマガジン

【家族の風景】「俺は貸しをつくったままにはしない。この恩は絶対に返す」/新井場徹(2015.02.10)

 少し猫背のほっそりとしたシルエット。取材を受けている梅鉢貴秀に「ずいぶんエラなったな!」と悪態をつく。久しぶりに会う新井場徹に変わった様子はなにひとつなかった。本当にこの選手が引退してしまったとは、にわかに信じがたかった。

 思い出されるのは、79年組がチームを引っ張っていたころのこと。小笠原満男が肉離れを起こしたとき「あいつのスピードでどうやって肉離れすんねん」と同い年のキャプテンをからかったのが新井場だった。確かに、重さを感じさせる小笠原の走り方と年齢を感じさせず軽やかに疾走する新井場と姿は対照的。当時の姿から、中田浩二と共に一番先に引退するとは想像することは難しかった。しかし、1月19日、誰よりも豊かなサッカーセンスを見せたラテラウは現役引退を発表した。

  「しゃあない」

 発した一言が、置かれた状況をこれ以上なく的確に表現していた。

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