デイリーホーリーホック

【シーズンオフ特別企画】ボランティアグループ「Tifare」代表補佐・栗原賢二さんコラム  「裏方魂③ 敵味方をこえて」(2013/1/7)※全文無料公開

あけましておめでとうございます!2013シーズンの水戸ホーリーホックと、皆さんが充実した1年を送れる事を願っています。引き続き拙い文章ですが、お楽しみいただければ幸いです。

“ボランチ”の能力を磨く

今回はボランティアグループ内での立ち位置について書かせていただきます。
自分は『ボランチ』であると、勝手に思い込んでます。
次に起こる展開を予測しつつパスをつなぎ、ピンチの芽を摘み取る。
後方には頼りになるメンバーが控えてるし、リーダーいのっち(猪瀬義満氏)やDJ寺ちゃん(寺田忍氏)が決定的な仕事を担ってくれる。
私が好き勝手に動き回れるのも、皆の支えがあってこそ。本当に一人では何もできません。

ボランチに最も必要とされる能力は『運動量』と、『視野の広さ』でしょうか。
特に視野の広さについては、普段の暮らしや活動ではなかなか磨かれにくいもの。

「行きづまったら、外の空気を吸え!」これが演劇をやっていた頃の教訓です。
時には水戸を飛び出して、地域や種目を越えて交流するのも自分を成長させてくれる。
『ホームタウンサミット』『オールスターボランティア』は、毎年とても楽しみな行事です。

さらに一歩踏み込んで、他チームの運営に個人参加させてもらう時もあります。
その際はなるべく水戸戦を避ける。試合が気になるとノウハウを吸収できないので(笑)

例えば『東京V-愛媛』といったカードで一緒に活動させていただく。
「お客さんがスタジアム入口から座席に着くまで、何個のイベントに遭遇するか?」
「サポーターの一体感を盛り上げる仕掛け、また盛り下げる要素はないか?」など、新鮮な気づきが沢山あります。
すぐに取り入れられるアイディアばかりじゃないけど、水戸で少しでも応用できた日は嬉しい。

ネット情報や噂だけでは知りえない、現地の空気感や人々と触れあえるのも生きた財産になる。
ジュビロ磐田の運営本部を見せてもらった時は「うおお!」とテンション上がりました。

その地域独特の事情や課題を肌で感じる事って、実は水戸の美点を再発見するきっかけになるんですよね。
飲み会まで参加させていただくと組織の人間関係を垣間見てしまうのですが、本当に仲良くやっている所もあれば、世代間でちょっとギクシャクしてる所もある。
私達Tifareは、妙な主導権争いがないだけでも幸せなんだなあと(汗)。

仙台、磐田、新潟、山形、東京V、千葉、草津、栃木、大分、岐阜。
これまで10クラブでお世話になりました。なでしこリーグやアジアでの経験もありますが、また後の機会に。
現地で行動をともにした方々とは、今もメール交換したりお会いしたり仲良くしています。

震災から復旧したゲームには東京Vから6人のサポート

一昨年の東日本大震災でKsスタが損壊した折には、各地の皆さんに勇気づけられました。
地震が起こった当日に連絡してくれた方、遠路はるばる水戸に来てくれた方。

今でも忘れられないのは、中断していたJリーグが再開した2011年4月23日の試合。
ホームで感動的な逆転勝利を収めたこのゲーム、実は東京Vボランティアとサポーターが水戸の状況を心配して朝6時集合、Ksスタ運営に6名も駆けつけたのです!

当時は私達もそれぞれ事情で参加できなかったり、現場の人数が半減していた。
運営も、精神的にも助けられました。4月の段階では「ここから復興するぞ!」という意気より「これからどうなってしまうんだろう?」という不安の方が大きかった。

彼らの行動がなかったら、雨中の奇跡は起こらなかったと思います。この日があって水戸は初めて『ホームの雰囲気』を手に入れたのだと。

率先して参加いただいた東京Vボランティアの女性が昨年の夏、病気でお亡くなりになりました・・・。満足にお礼も言えないまま、会えなくなってしまった。
感謝の気持ちを表すには遅いかもしれないけど、なるべく言葉より行動でお伝えしたい。9月に東京ヴェルディ事務局へ連絡し、駒沢で行われたゲームのお手伝いをさせていただきました。

普段ライバルとしてしのぎを削る栃木、草津ボランティアの方々がKsスタにFC東京を迎えた試合で、「北関東の力を示そう!」と運営に申し出てくれた事もありました。裏方同士の絆は深い。

昨年3月11日の富山戦では、アルビレックス新潟から手助けいただいた。「新潟県中越地震で、多くの方々に支えられた。今日は水戸の力になれれば」と、その心意気にただただ頭が下がるばかり。最後にものをいうのは『人間力』なのだと、改めて実感しました。

サッカーには勝ち負けがあります。しかし『勝ち負け以上のもの』もあると信じます。
試合をめぐって反目しあったとしても、敵味方をこえて助けあえる時はいつか来る。
互いに足を引っ張ってダメになる関係より、互いに励まして強くなる関係を築きたいもの。

シンプルなだけに人間の「美しさ」と「醜さ」両面が現れやすいスポーツだけど、
できるだけ美しい場面を多く見たい、また作りたいと心から願っています。

(栗原賢二)

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