デイリーホーリーホック

【シーズンオフ特別企画】ボランティアグループ「Tifare」代表補佐・栗原賢二さんコラム「裏方魂⑦ メディアをつくろう」(2013/2/4)※全文無料掲載

面白いメディアを自分でつくればいい!

茨城は47都道府県で唯一民放テレビ局を持たない、「メディア後進県」と言われています。それは当然スポーツにも影響して、試合の告知や応援番組を流せない弱さがある。水戸ホーリーホックが盛り上がらない原因のひとつと、長年指摘され続けてきました。

確かに地上波テレビは影響力の大きなメディアですが、絶対的なものではないと私は思います。ケーブルTVにラジオ、新聞やタウン誌もありますし、インターネットは沢山の「伝える手段」があふれている。何より鹿島が同じ条件で、あれだけタイトルを獲った事をどう説明するか?

鹿島アントラーズは、日本中がJリーグブームに沸きたつ中で華々しく優勝を飾り、早々と「ブランド化」に成功した歴史があります。その頃プロクラブとして存在しなかった水戸ホーリーホックに比べ、そもそものスタート地点が違うとも言える。

しかしそこを言い訳にしていては、彼らに追いつく事はできません。新聞もラジオも、なかなか水戸を取り上げてくれない。だったら面白いメディアを、自分でつくればいいじゃないか!そう思い立ったのが3年前。

ヒントになったのは、アルビレックス新潟のボランティア控室で見かけた壁新聞。主力選手のメッセージが載っていて、「こりゃいい!」と感銘を受けました。さらに各地のスタジアムを見るにつれて、甲府の『バス小瀬新聞』や岐阜の『岐大通』などサポーターがメディアを自主制作している前例も発見。突飛な空想というわけでもなさそうだ。

さて、水戸ボランティアという立場の自分はどうしたら良いか? やるなら紙ベースだな。ネットも良いけど最初から大きなインパクトは期待できない。いずれにせよ選手やチーム戦術を非難するのはやめよう。だったら何が書けるか?

後発で立ち上げるのなら、なるべく二番煎じは避けたい。今まで他チームのやらなかった方向性を目指そう。だけど具体的な形は見えてこない。
アイディアが早くも行き詰まった夜、私は缶ビールに手を伸ばしました(笑)。

「水戸ホーリーホックのスポーツ新聞・・・略してホリスポ?」ほどよく酔いが回ってきた頃、突如としてそんな思いつきが「降りて」きました。こうなれば話は早い。その足で近所のコンビニに向かい、研究のためスポーツ新聞を購入。挑戦の一歩を踏み出したのです。

選手の入れ替わりをポジティブに分析する。新人王を競馬欄のような表で予想。チームのマニアッククイズ。語り草の試合をふり返り。サッカー関連本紹介。連載小説。過去に在籍した選手近況。ホーリー君(ぬいぐるみ)の名所めぐり。これが第1号の内容でした。結局は「全面カラー印刷」で差別化を図ることに。文章量より、レイアウトの美しさで勝負しようと。

デルリス選手追悼試合でつかんだ確かな手ごたえ

勢いで作ってみたものの、反響はあまり期待してませんでした。駄目なら3号くらいで終わりかなと。しかしその第3号で、大きな転機を迎えました。それまでボランティア、フロントスタッフに強制配布という内輪限定だったのが、お客さんの目にふれるKsスタのコンコースに貼りだし許可を頂いたのです!

折りしも私が水戸に関わるきっかけとなった伝説のFW・デルリス選手の追悼試合という巡りあわせでした。彼を偲ぶ記事も含めた見慣れない新聞1~3号が一斉に掲示され、異様な光景だったと思います。6000人以上集まった会場で、福岡に見事な勝利。Ksスタで初めてホームの雰囲気が生まれた試合。「もしかしてホリスポも、少しは貢献してる?」勘違いかもしれないけど、確かな手ごたえを感じました。

手作り新聞は現段階で31号。長くやれば意欲が落ちる時期もあります。チームの調子が悪いと、何を書いたらいいかわからなくなったりする。
しかし「モチベーションは落としても、クオリティは落とすな!」を旗印に、月1回ペースの発行を守り抜きました。

ホリスポを記者室に置かせてもらった縁で、こうしてコラムを書く機会まで頂いています。歴史がつながりOB戦が行われる。ホーリー君が地域イベントで人気者になる。デイリー・ホーリーホックという強力なメディアが立ち上がる。誌面で夢見ていた事が、次々と実現した。

続けられたのは「面白い!」「最新号まだ?」と言ってくれる方々の存在があってこそ。何をするにも応援は心強いもの。身体にムチ打つサッカー選手なら尚更ですね。

私の3年間は北関東の片隅で、自己満足の新聞ごっこをやっていたにすぎません。だけど本当に多くの人が温かく見守ってくれたし、これがきっかけで仲良くなる事もできた。馬鹿げた思いつきでも情熱を傾け続ければ、世界は広がっていくのだと実感しました。

街角で力道山のプロレス中継が行われていた頃と比べ、メディアは身近で気軽な存在になっています。いや、時代を問わず独自の発想でミニコミ誌など発行し、皆を楽しませた人々はいるはず。広い意味では「友達にチームの魅力を伝え、スタジアムに連れてくる」行動そのものが「メディア」と言えるのかも。

お笑い芸人ではないけど、周期的に「すべる回」が出てくる。そこを飲み込めば、楽しく活動できると思います(笑)。皆さんもぜひ気軽にメディアを作ってみてください。水戸を楽しく盛り上げましょう!

(栗原賢二)

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