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優勝候補は見えたか?J1上位5クラブの実力を査定する【Jリーグ通信簿】

J1再開後に好調を維持するクラブの強さは本物なのか? ライターの河治良幸が川崎フロンターレ、セレッソ大阪、ガンバ大阪、柏レイソル、名古屋グランパス…それぞれの強みと弱み、そして躍進を支える陰のキーマンを丸裸にして分析を行った。

【今回の記事の見出しチェック】
川崎フロンターレ:総合力で頭ひとつ抜けている「融合スタイル」
キーマン>陰のMVPは山根視来、ゲームコントローラーは大島でも田中でもなく脇坂泰斗

セレッソ大阪:ロースコアの勝負を制する試合巧者
キーマン>「チームの心臓」藤田直之と「なにわの陰陽師」奥埜博亮

ガンバ大阪:毎回チームを救う日替わりヒーロー。終盤戦に向けた意外なアドバンテージとは?
キーマン>日本代表復帰も射程圏内のパフォーマンスを見せる井手口陽介

柏レイソル:オルンガ頼みではない。攻守に同じ絵を描けている選手たち。
キーマン>東京五輪世代の一人としてさらに活躍が期待される大南拓磨

名古屋グランパス:上位陣でも特筆すべき攻守のバランス
キーマン>阿部浩之に勝るとも劣らない存在感を示す稲垣祥の職人技

 

■大きなアドバンテージを得た5クラブ

2月に開幕し、新型コロナウイルスの影響で長い中断を経験したJリーグ。7月4日にJ1が再開し、ここまで第8節まで消化した。梅雨から夏場に差し掛かる時期の過密日程、近隣クラブからの対戦、さらに5枚の交代枠といったレギュレーションは少なからずパフォーマンス、結果に作用しているが、その中でも結果を残せているクラブはまだ序盤戦が過ぎた段階ながら今後のシーズンに大きなアドバンテージを得たことは間違いない。

今回は序盤戦で順調に勝ち点を積み重ねている川崎フロンターレ、セレッソ大阪、ガンバ大阪、柏レイソル、名古屋グランパスの上位5クラブにフォーカスしたい。

 

川崎フロンターレ:総合力で頭ひとつ抜けている「融合スタイル」
キーマン>陰のMVPは山根視来、ゲームコントローラーは大島でも田中でもなく脇坂泰斗

ここまで無敗で首位を走る川崎。2月の開幕戦ではサガン鳥栖を相手に59%のボール支配率、24本のシュートを記録しながらスコアレスドローに終わり、新しく導入している4ー3ー3も試行錯誤の段階にあったのは明らかだったが、左右ウィングが攻撃の幅を取るべきところは取りながら、右サイドの家長昭博にはある程度、インサイドに入りながらの仕掛けや周囲との近い距離感でのプレーを許容するなど、基本設計と応用という部分を中断期間から再開までに整理して、プレーに落とし込めていることが好パフォーマンスにつながっている。

鬼木達監督はビルドアップのベースとして、欧州から世界的に流行しているポジショナルプレーの概念を参考にしながらも、崩しの段階では、もともと川崎が持っている”止める・蹴る”の技術を駆使したスモールエリアでのコンビネーションをそのまま継承したいと明かしており、後ろからのビルドアップで左右の幅を使いながらも結局は川崎のもともと持っている”距離感で崩す”という”融合スタイル”を半年でかなり高いレベルまで持ってきたことが、そのままリーグ1位の22得点にもつながっている。

伝統的に川崎は後半に多くの得点が入るクラブで、ここまでも前半に9得点、後半に13得点となっている。もっとも再開から3試合は前半に6得点、後半に1得点というデータだった。特にFC東京戦との”多摩川クラシコ”で、前半に主導権を握ったまま4点をリードしてそのまま逃げ切るという流れだった。

逆に最近の4試合では前半1得点、後半8得点と完全に逆転している。要するに勢いのまま前半に得点を奪えてしまえば逃げ切りに入るし、接戦になればなったで後半にのを選手交代も含め、攻撃のパワーをかける、どちらの展開でも勝ち切る総合力がある。特筆したいのは失点が前半3、後半3と変わっていないことだ。つまりオープンな展開で得点も失点も増えているのではなく、得点だけが増える。

よく川崎では”餌まき”という言葉が使われる通り、前半にいきなり得点が入らなくても、効果的なジャブを打ち続けることで相手のフィジカルとメンタルを疲れさせるとともに、勢いを持った攻撃に対する耐性を削り取るという狙いがある。ただ、例えば湘南戦では後半に3得点して3?1で勝利した湘南戦では前半ほぼ圧倒しながら後半の立ち上がりは逆にボールを握られて最初に失点し、そこから再び巻き返すという試合展開があった。

90分の流れを見れば川崎もペースダウンの時間帯はあり、そこは1つ相手の付け入る隙になっている。しかし、抜群の突破力を持つ三笘薫を筆頭に5枚の交代枠で投入される選手のタレント力、そうした選手をフレッシュな状態で加えるインテンシティーはリーグ全体でも1つ飛び抜けたものがあり、多少苦しんでも結局はそこで押し切ってしまう。つまり試合の戦術的な設計、ゲームコントロール、選手交代と言った要素で相手を総合的に上回っている。再開前に怪我で離脱し、第5節から復帰した小林悠が、ここまでの4得点を全て途中出場であげているのは象徴的だ。

対戦相手にとって厄介なのは攻撃的でありながら守備の隙も少ないこと。ワイドに展開しながらも、中盤のトライアングルはそこまで距離を開けず、グラウンダーのパスが足下に通りやすい距離感を維持しているため、中途半端なボールロストが非常に少ない。多くの攻撃はフィニッシュ、もしくは1つ前のところまで行くので、後ろの選手が攻撃に参加しながら同時にリスク管理できる体勢が整っているわけだ。

しかも2年目のジェジエウがディフェンスラインにフィットし、谷口彰悟とともに堅実なディフェンスラインを形成。左右のサイドバックも登里享平、山根視来をベースにバランスが取れており、川崎の左右のハンドルとして機能している。特に右の山根は昨シーズン最後まで定着しなかったポジションで安定したパフォーマンスを見せており、ここまで”陰のMVP”と言える働きを見せている。

もう一人あげたいのが中盤の脇坂泰斗の働きだ。

 

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