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【特集:鉄の男ポステコグルー】「新しいサッカー哲学を植え付けて欲しい」マリノスを革新した理想主義者に託されたセルティック再建<#2>

 

オーストラリア代表、横浜F・マリノス……鉄の意志をもって指揮したチームを改革してきたアンジェ・ポステコグルー。ギリシャ哲学者のような風貌からも頑固一徹のイメージが先行しがちだが、理想を実現させるための方法論にこそこの「理想主義者」の真骨頂がある。
人々を魅了する稀有なサッカー哲学はいかにして出来上がったのか? そして新たな挑戦の地スコットランドで何を起こそうとしているのか? 日本代表監督に推す声も聞こえてくる名将の正体に迫るべく、英国記者の協力を得て3回に分けてレポートする。
「理想と結果は両立できる」マリノスを革新した名将が語る美しく勝つチームの設計図<#1>

文=田邊雅之
取材協力=サイモン・マロック

 

■正しく理解されていないポステコグルー招聘の文脈

自らが幼少の頃から培ってきたサッカーの理想を貫き、Jリーグの名門を鮮やかに蘇らせたポステコグルーは、今年6月に横浜F・マリノスの監督を退任。かつて中村俊輔もプレーしていたスコットランドの名門、セルティックを率いることになった。

Jリーグで指揮を執っていた監督が、ヨーロッパの古豪に手腕を評価されてヘッドハントされる。むろんF・マリノスサポーターは複雑な思いだっただろうが、日本サッカー界全体にとって一つの栄誉であることは間違いない。事実、ポステコグルーのセルティック監督就任は、日本のメディアでも大々的に報じられている。

だが個人的には、ポステコグルーが招かれた文脈は、あまり正確に把握されていない印象を受ける。そこには監督としてのキャリアアップという枠では括りきれない、重要な意義と使命が託されているからだ。

 

■「最も英国人らしくない英国人」の後継者として期待される戦術革命

まずは人選の基準である。彼は単にセルティックの監督に就任したのではない。むしろ実質的には、かのブレンダン・ロジャーズの後継者に抜擢されたと見られるべきだ。

ブレンダン・ロジャーズはブリテン島において、大陸型のポゼッションサッカーを追求してきた第一人者として知られる。現に彼は「最も英国人らしくない英国人」あるいは「北アイルランドの生まれのスペイン人指導者」などと評されることも多い。

 

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