「川崎フットボールアディクト」

【#オフログ】閾(いき)値まで、もう少し

新しいブランドの知名度や、Webサービス、新しい商品などが爆発的に普及する境界線を指す、閾(いき)値という言葉がある。それぞれにあるこの閾値を超えると、それまでの苦労がウソのように各種のサービスや知名度が社会に浸透していく。

たとえばツイッター。ぼくは記録によると、2008年7月にアカウントを登録したらしい。当時は今のようにインフラ的な立場を得るまでになるとはとても思えず、また使い方もよくわからず、かなりの間、放置していた。ツイッターに関しては、勝間和代さんの煽りに乗ってサッカークラスターを中心にアカウントをフォローし、経験的に使い方を覚えた。ちょうど社会的にも浸透するタイミングで、その波に乗りあっという間に生活に欠かせないサービスになった。

何らかのサービスがあるとして、先導的な役割を果たす人の旗振りでそれが浸透。周りの人は、そのサービスを使いながら使いこなしていく。そんな閾値をめぐる話は、おそらくは風間監督のサッカーにも当てはまる。ひとつは風間監督のサッカーの知名度が広がるという点で、もうひとつはそれを十分に使いこなすチームへの成長という視点だ。

サッカーを知る人には、風間監督のサッカーの特徴は知られてきた。ただ、Jリーグ自体がそうであるように、社会的に認知されているわけではない。またチームが風間監督の頭のなかにあるサッカーのイメージを自在に体現できているのかというと、まだまだそうではない。個々の選手の技術の向上がもう少し必要なのだろう。

チームの技術レベルが高くなり、ある値を超えると面白いように相手チームの最終ラインを崩せるようになる。ここ数シーズン。そういう瞬間に出会えたと思える時期が何度かあった。今季に関して言えば、9月、10月の時期だ。9月12日の甲府戦で快勝して以降、10月4日のG大阪戦まで4連勝。これは波に乗ったと思ったが、続く10月17日の広島戦と10月24日の横浜FM戦に連敗し失速。結果的にフロンターレのサッカーは「勝つための閾値」を超えてはいなかった。ただ、「閾値」のすぐ手前まではたどりつている実感がある。

この閾値を超えられるのかどうか。それは正直なところわからないが、超えさえすれば、内容を伴いつつ結果を出せるチームになる。

そんな希望を抱きつつ、クラブ創設20周年の節目の年となる来季。この閾値を超えるサッカーの完成を、期待したいと思う。

(取材・文/江藤高志)

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ