「川崎フットボールアディクト」

【コメント】「取り組む姿勢に悔いはないので。本当に、誇りに思える一ヶ月だったなと思います」(奈良竜樹)

愛犬の「おかゆ」の話に花を咲かせた直後、少しばかりトーンを落として「実は」と切り出して口にした言葉は「オリンピックは無いと言われました」というものだった。

全治4ヶ月の重症を負いながらもリオ五輪を諦めなかった奈良竜樹のその姿勢に強く心を打たれ、その治療の過程をお知らせしてきた。心の底から奇跡の選出があってほしいと思ってきた。しかし13日の夜に、協会関係者から直接奈良に連絡が入り、メンバーから外れた事実を伝えられたという。その事実を踏まえ、応援してくれたサポーターのみなさんにコメントをお願いして快諾してもらった。

以下は奈良竜樹が語った、サポーターのみなさんへの感謝の思いだ。全文を公開する。

--応援してくれたサポーターに対して一言お願いできますか。
「ケガをしてから、全治のリリースが出て…。ぼくもみなさんもほとんど(リオには)行けないだろうという気持ちからスタートして。それをぼくが…、ここで諦めきれないという気持ちで再出発というか、そうやって考え方を変えて。みなさんにも言って『諦めません』と。それで、本当はみんな『ムリしないで欲しい』とか『難しい』とは思ってたと思うんですが、そういうことを言わずに、ぼくがトライするならそれを信じて応援すると言ってくれた方もたくさんいたし。そういうなんか空気を作ってもらえたのはありがたいですし、感謝してます。

ぼくにとって、本当に大事な一ヶ月だったので。ケガしてから(リオ五輪メンバー外との)連絡を受けるまでというのは。まあ、ぼくがそういうふうに(リオを目指すと)言ってみなさんにも付いてきてもらったのにも関わらず、間に合わなかったというのは…。申し訳ないですし。もっと何かやれることがあったんじゃないかというのはぼくの中でしっかり考えて…。でも間に合わなかった、というこの結果については引きずるわけにはいかないので。ここからは、もう少し落ち着いて自分を見つめなおす時間が増えたので。そこでもう一度さらに強くなって帰ってきたいと思います。

オリンピックを目指すということで、それに間に合うくらいのイメージでやってましたが、みなさんの前でプレーするのはもう少し先になるかもしれません。でも、前を向いて…。もう一度ここから取り組み方を変える必要はないですし。ただ、オリンピックが無くなったというだけなので…。

一言では難しいですね。長くなってしまいましたが、取り組む姿勢に悔いはないので。本当に、誇りに思える一ヶ月だったなと思います」

結果的にリオは無くなったが、奈良の取り組みは無駄ではなかったと思う。またそんな奈良を応援したサポーターのみなさんの思いも無駄ではなかったと思う。

奈良の口からは、応援してくれた方々に対する感謝の気持ちが「申し訳ない」という言葉として出てきた。それはそうした方々に対する恩返しが「リオに行くことだった」からだ。ただ、その可能性が無くなった今「次にまた切り替えないといけない」と奈良は口にする。そして「ぼくにはフロンターレという、しっかり支えてもらえるクラブがあるので大丈夫です」と力強く話した。

奈良は自らに降りかかってきた運命と向き合い、すでに頭を切り替えている。じっくりと時間を掛けてリハビリに取り組んで、パワーアップした姿を見せてもらえる日を楽しみに待ちたいと思う。

(取材・文・写真/江藤高志)

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