「川崎フットボールアディクト」

【鼎談】川崎フロンターレは、優勝できるのか?「フロンターレを倒す方法を提示された感がありますね」(いしかわごう×竹中玲央奈×江藤高志)(1/4)

クラブ創立20周年の節目に当たる2016年シーズン。川崎フロンターレは年間王者を目指して着実に結果を出し続けている。サポーターの期待も高まる中、フロンターレを取材してきた記者に集まってもらい、今季のこれまでと、これからについての鼎談を行ったのでごらんください。

出席者
いしかわごう(フリーライター)
竹中玲央奈(エル・ゴラッソ・川崎担当)
江藤高志(川崎フットボールアディクト)

※文中、選手名の敬称を略している部分や、選手の呼称そのものに若干のバラツキがありますが、鼎談の雰囲気を重視し表記の統一はしておりません。あらかじめご了承下さい。

【第一部】 フロンターレの倒し方
■対応されたときに苦戦

江藤高志(以下/江藤) フロンターレは、いよいよ次節第12節の大宮戦で勝利すると自力でチャンピオンシップ進出が決まるというところまでこぎつけましたが、そんなフロンターレの今後について議論したいと思います。まずは、身近なところで難しい試合になった鳥栖戦からの3試合について話したいと思いますが、その中でも鳥栖戦について、どう見ましたか?

竹中玲央奈(以下/竹中) フロンターレを倒す方法を提示された感がありますね

江藤 それは、ありますね。長いボールを使いつつ、ラインを押し下げようというような戦いでペースを狂わされた。

竹中 パワーで勝負されましたね。勝てる部分で勝負してきて、そこの土俵に持ち込まれてしまった。

江藤 地上戦では無理だから、空中戦とパワーとで。

いしかわごう(以下/いしかわ) 鳥栖戦は相手が蹴ってきたけどラインを高く維持していました。

江藤 フロンターレの最終ラインがかなり駆け引きをしてました。

いしかわ あそこについて、中村憲剛が言われてたのは、ちょっとまじめにやり過ぎたから、蹴ってくることがわかってるのなら、(最終ラインをある程度下げて)後ろでコンパクトにしてやり直したほうが良かったのかもしれないですね、ということは試合を振り返って言われてました。まじめにやり過ぎてて、相手を見てサッカーをやるということがこの試合に関してはできてなかったのかなということは言われてましたね。

江藤 竹中が言ってたように、フロンターレ対策の処方箋を提示されてしまい、柏もわりとそういうサッカーをされてしまった。その中で、更に言うとネットが酷くて難しくなった。

竹中 CKではっきりしましたよね、誰が問題だったのか。

江藤 完全にぼやけてしまってましたね。ひどいパスミスもしてたから、あの試合のネットはおかしかったですね。

竹中 おかしかったですね。

いしかわ あれじゃないですかね。ぼくらがたぶん、柏キラーだと持ち上げすぎたところもあったのかもしれないですね(笑)。

江藤 確かに、言ってました。浦和キラーの森谷賢太郎が本当に活躍したから、という流れで柏キラーだって(笑)。

いしかわ それで返り討ちに会いましたね…。

竹中 そうですね。

江藤 あの柏戦は引きずる敗戦になると思いますか?

いしかわ 柏戦は、本当に柏の狙い通りで。例えばセットプレーで取るのもそうですし、攻めてくるフロンターレに対し、クリスティアーノや伊東純也のカウンターで仕留める、という狙いは徹底されてましたし、中川くんも真ん中を上手く自由にさせないプレスが効いてた。
あとは車屋紳太郎が復帰戦で、伊東純也に先手を取られたのが彼もコンディションが良くなかったということを言ってて、そこのバトルのところの問題があったのかもしれません。
車屋のサイドでのバトルというのは、攻撃面のところで主導権を取るのがチームの武器になっていたはずなのにそれが上手く行かなかった。
その流れで言うと、鳥栖戦でも武岡優斗の左サイドバックは難しさがあったのかもしれないですね。困ったら左で1対1でなんとか局面打開というのが車屋紳太郎のところであったんですが、そこが上手く機能しないと厳しいですね。

江藤 そう考えると、左サイドはポイントになってましてたね。

竹中 それは間違いないですね。
柏はクリスティアーノが左から、右サイドの伊東純也を走らせるみたいなサイドチェンジのパスをしてた。それでごうさんが言われたように、先手を取られてしかもコンディションが良くないとなると

いしかわ 立ち上がりに2点をとられるとそれはカウンターを受けますよ。しかもカウンター早いし。柏もアウェイでやった時みたいに真っ向勝負してこなかったんですよね。フロンターレにボールを持たれるから、という守り方をしてきた。

江藤 持たせてくれるんだけど、ゴール前はガッチリ締められていて、局面、局面の危ないところだけ防ぐと。攻めさせた後にすこっと行く。そこは徹底されてましたね。

いしかわ あとはCBの中谷くんとかのフィードもすごくて、サイドに散らすサイドチェンジが巧みだった。

竹中 柏の後ろ2枚の中谷進之介、中山雄太はかなりつなげますよね。足元上手いし、守るというところでは改善の余地はあるかもしれないですが、後ろであれだけ余裕を持ってつなげるというのは、完全に柏のゲームでしたね。
試合の翌日に強化の人と話をしたんですが、柏はフリーキックとCKの練習をずっとしてたみたいですね。セットプレーは狙い目だと。特にFKのあの位置は、狙い通りだったと言ってたみたいです。

江藤 2枚がフリーで抜け出してたからね。で、頭に当てられてね。

竹中 日立台でもあれくらいの位置からやられていて。というかフロンターレはあの位置は弱いですよね。あそこで結構ゾーンで守ってて。

いしかわ 最近のセットプレーの練習では、その位置からのFKの対応の練習を始めてました。浅いところからで、珍しいなと。

竹中 ついに変えたんですね。

いしかわ 先日の福岡戦で田坂祐介をあの位置で使ったのは、まさに福岡対策で、福岡は5−4−1で引いてくるし、1トップの両脇が空く。あそこでボールを持てるから谷口なり、田坂なりで組み立てたかったのかなと。
だから浦和戦では田坂の起用はなかったと思うんですね。五分五分の、難しい展開も覚悟しないといけないし、クロスも入れられるだろうから。
でも攻め込める展開なら、あの位置で田坂を使う意味もあるのかなということで。

江藤 個人的に思ったのは、秋田戦で途中交代出場した時に田坂が前ですごくがんばれてて、良かったんですね。あの秋田戦については攻撃面でも良かったんですが、前での守備も凄くて、それを評価されたのかなというのは感じました。
ところで鳥栖からの3連戦の中で2敗についてはダメージの蓄積というのはどう思います?

竹中 鳥栖の負けのダメージは大きかったですが、浦和の勝利でかき消されたところはありますよね。

江藤 内容は良くなかったですが、勝ち切れた。

いしかわ そうですね。勝ちにこだわりましたし、結果的に勝てたのは大きい。もしここで負けてたら厳しかったかもしれません。

竹中 確かにそうですね。

江藤 この試合、武藤雄樹がハットトリックできるか、というチャンスを作っていたから、そういう意味でも助けられたところはあった。でも、だからこそ勝ち切れたのはでかいですね。

竹中 チャンスは向こうの方が多かったですね。でも、そこが質の差だということは憲剛さんも言われてました。最後のところは質の差だと。

江藤 チームプレーでチャンスを作れても、最後は個の力になるという意味ではそのとおりですね。なんにしても、落ち込みかねないところをチーム全体で耐え切れたということが言えるんですかね。

いしかわ フロンターレってこれまで8月はあまり勝ててなかったところがありますが、悪いなりに乗り越えたかなと思います。2敗はしましたが。

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