「川崎フットボールアディクト」

【#オフログ】B1リーグ、川崎vs横浜。3366人という入場者数に対するいくつかの視点

何かしらの競技が行われているとどろきアリーナを訪れたのはたぶんこれが初めて。競技施設自体はこじんまりとしていて、一見して、それほど多くの観客を収容できるわけではないのだろうと思った。

両チームのベンチがある側の二階席中央にぽっかりと空席があったのは、関係者用に抑えていた座席だという。高い値段に設定されていた席が売れ残っていたという事ではなかったと聞いて、少しだけ安心した。目立つその空席を除けば、わりと入っているように見えるスタンドは、なかなかの臨場感を醸し出していた。

試合は4Q制で進み、2Q終わりに少し長めの休憩が入る。ここで前半と後半に分かれる形となる。

川崎は序盤攻勢をかけ、後半失速。最後は2点差まで追い詰められながらかろうじて横浜に勝利した。

その試合後、ヒーローインタビューに答えた川崎のファジーカス選手の言葉の中に印象的な一言があった。「とどろきアリーナにこんなにお客さんが入ってるのは初めてで嬉しいです」というもの。ほぼ満員の観客数が3366人と発表された事と相まって、いろいろな事を考えさせられた。

まず、3366人という観客数については、絶対数として少ない。

プロスポーツとして経営していくには桁が違いすぎるように思う。さらに言うと、それは彼らの企業努力の限界を超えているという事。つまり、川崎のホームアリーナはほぼフルキャパに観客を収容しており、伸びしろの少なさは明らかだった。ここから観客動員を伸ばすには、施設的な問題で限界が見えていた。

3千人台の動員数は2003年ごろのフロンターレの等々力でも記録された数字だが、そもそも等々力はキャパ自体は改築前でも2万人を超えており、スタジアムの限界に挑戦する事で観客動員を伸ばす事が出来ていた。そう考えると、とどろきアリーナは競技場自体のキャパに限界があり、簡単には運営できないのだろうと感じた。

そんな現実をつらつらと書きつつも、試合自体は面白かった。

アリーナのコンパクトさが臨場感を生み出しており、記者席に設定されていた座席の位置と相まって白熱のプレーを目前で堪能させてもらった。

バスケという競技については、高校生までに体育の授業で実体験した事があり、それなりに分かっているつもりだった。行けばなんとかなるだろうと思っていたが、意外と行ってもどうにもならなかった、というのが率直な感想だ。時間と得点経過に応じて戦い方があるらしく、それを理解できていなかったという事。また、局面局面での戦いにも細かな駆け引きがあるようで、そうした事もよくわかっていなかった。

競技の展開を書きたくても、上記の理由により大まかな流れが分からない。さらにはノートのつけ方も分からない。

結果的に、「なんかすごかったね」で試合は終わってしまった。

素人目で見て3Qに入っての川崎の失速は明らかで、その理由について横浜の青木勇人ヘッドコーチに質問してみたが横浜が何らかの戦術で、川崎の失速を促したというようなことではなさそうだった。

プレーはゴールの連続で進んでいくため、いちいちサッカーのような「何分に決定機が、その何分後に1点決まる」、というような単純な図式では進まない。サッカーで言うところのいいプレーがそのまま得点になるような感覚で、スピード感が凄まじかった。さすがにプロスポーツ先進国のアメリカで確固たる地位を築いているだけの事はある。エンターテイメントととしてよくできた競技だと感じた。

日本人は学校教育により、バスケの素養はある。五輪で柔道を見てなんとなく流れがわかるようなもので、それはバスケにとって他競技に勝る貴重なアドバンテージなのだろうと思う。

バスケではサッカーで言うところのサポーターの事をブースターと呼ぶらしい。BJリーグが母体の横浜に熱心なブースターが複数見られたのとは対照的に、東芝が母体の川崎にブースターの姿は見られなかった。スタンドを見ると、会社帰りのサラリーマンと思しき人たちが数多く見られた。

ほぼ満員で3366人の動員数のアリーナを見て感激する川崎の選手の言葉を聞きつつ、彼らの前途は多難なのだろうなと、ふと思った。

競技自体には娯楽性があり、バスケというざっくりとした言葉の下にある緻密な戦術や個々の局面の個人技などを少しだけでも深掘りしてあげれば火がつくような気もする。そのためにも、Bリーグには弛まぬ努力が必要なのだろうと思った。競技施設の問題も今後出てくるのだろうが、少ない観客でも満員のアリーナを演出できることはメリットになる。まずは地道にブースターを増やし、地域に根づくクラブを目指してほしいと思う。

(取材・文・写真/江藤高志)

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