【無料コラム】育成年代でサッカーを引退するってなに?大人になってもサッカーを楽しめる社会へ。心でつながりあえる仲間が集う場所を築こう
▼ 育成年代の引退はかなしい
小学校が終わり、中学校が終わり、高校が終わると、たくさんの選手がサッカーと距離をとる。
「ここまでサッカーを頑張ってきました!これ以上できないほどサッカーと向き合ってきました!悔いはありません!今日でサッカーを引退します!」
日本でおなじみの悲しい、哀しい、かなしい光景。
小学校から高校生までの育成年代で、せっかく大好きでサッカーと関わってきた子どもたちの行く末がそこなのだとしたらかなしすぎないだろうか。
大人になっても普通にサッカーはできるし、大人になってからのサッカーもすごく楽しいし、大人になってもサッカーはいくらでもうまくなるんだよって思うのだ。
18歳まででは、見えない景色がある。25歳になってわかる世界がある。30歳を超えて感じるものがある。40歳になっても動ける自分がいる。
そのように生涯サッカーの素晴らしさを将来のある子どもへ正しく伝えていくのは僕たち育成指導者にとって、とても大切なことではないだろうか。
ドイツサッカー協会(DFB)の指導者育成の第一人者であるベルント・シュトゥーバーさんがこんなことを言っていた。
「最近、若い指導者が増えてきたことは基本的にポジティブな傾向だ。だが指導者である前に、サッカー選手の経験があるかどうかは重要なポイントなんだ。それはプロ選手になれるかどうかではない。どんなレベルででも大人のサッカー選手として、年間を通したリーグ戦を戦った経験が十分にあるかどうかは、指導者として選手と向き合う上で欠かせないことだ」
僕もそのとおりだと思う。普段からどのように試合に向けての準備をし、どのように年間スケジュールをこなすのかという選手時代の経験があるかないかは大きい。
普段と同じように調整したはずなのに、試合になった時に普段と同じように体が動かない経験があるのかどうかで選手に対するアプローチだって全然変わってくる。
年齢によって、トレーニングの準備の仕方にも変化が生まれる。そして成長するにつれ、体との、頭との、心との向き合い方の変化に適応していかなければいけない。
いつでも考える起点はサッカーグラウンドにある。そことつながりのないままサッカーを見たり、説いたり、考えたり、悩んだりしても道は見つからない。
サッカーグラウンドにあるもの。
サッカーグラウンドからつながっているもの。
それを改めて大事にしてほしい。果たして日本の指導現場で、成人サッカー選手として年間リーグ戦のあるスケジュールで何年間ものプレー経験がある人はどれほどいるだろうか。
おそらくそう多くはない。サッカー選手と指導者とを分けて考えているからではないだろうか。