「ゼルビアTimes」郡司聡

【無料公開】天皇杯3回戦・町田vs福岡/町田・相馬直樹監督、福岡・井原正巳監督、濱田水輝選手、冨安健洋選手コメント(5,011文字)

■天皇杯全日本選手権3回戦10月14日(水)19:00キックオフ
レベルファイブスタジアム/1,611人
FC町田ゼルビア 2-0 アビスパ福岡
【得点者】町田/50分 ペ・デウォン、65分 久木野聡

 

■相馬 直樹監督(町田)
——まずは試合の総括からお願いいたします。
「まずは平日のナイターという条件下にもかかわらず、町田から非常に遠い福岡までたくさんのサポーターの方々に来てもらいました。サポーターの声援、熱意が選手たちに乗り移って足がつるところまで走ることにつながったんじゃないかと思います。それに対して感謝の気持ちを述べたいですし、それと同時に勝利を分かち合えたことをうれしく思います。ゲームのほうは、われわれとすれば相手の焦りをどう誘い出すかというような狙いでゲームに臨んだ。自分自身も選手のときに経験があるが、カテゴリーが一つ違う中で格下とやることは難しいことだし、われわれもそうだったように、福岡さんもメンバーをいじってくるという想定をしていたから、相手のほうが焦りは出るだろう、そして今回のメンバーであれば個人でアピールしたいという思いが相手にとっては大きな焦りになるのではないかと思っていた。われわれとしてはチャレンジャーとして戦おうという話をして選手たちを送り出した。その中で選手たちは戦い、相手の焦りを引き出して素晴らしい勝利を飾ってくれたと思っている。リーグ戦はこれから佳境に入っていくが、次の試合は隣町の相模原とのダービーになる。その試合に向けて良い勢いが付く勝利になったんじゃないかと感じている。この勝利をただ喜んで終わらせるのではなく、勝利につなげていけるように選手たちと頑張っていきたいと思う」

——福岡を崩すイメージはどんなことを描いていたのでしょうか?
「非常に守備が堅いだろうということは想像していた。ただ攻撃面に関してはここ最近のゲームではウェリントンがいるかいないかでだいぶ違うことも想定していた。(ウェリントンがいないことでどうなるかは)未知数だったし、どんな選手で出て来るのか分からなかった。ただそうした中でどこで勝負するかと言えば、一つひとつのクオリティーは上回られるかもしれないが、チームとして戦うことに関して、そして勝利を一緒に我慢強く求めていけるのは、挑戦者のわれわれのほうが分はあると思っていたし、そういう展開になるような声がけを選手たちにもしてきた。選手たちは本当に犠牲心が強いプレーを随所に出してくれたし、得点はセットプレー2発だったが、それ以外にも素晴らしいプレーがたくさんあった。天皇杯では次も格上とやることになるが、その挑戦権を得たことも含めて今後につなげていきたいなと思う」

——相手の焦りを誘うという意味では、前半を0-0で終えたことは狙いどおりでしたか?
「ここまでのシーズンの中で福岡さんもそういう状況になることは多かったと思うが、その状況でより焦るのは相手のほうだと思っていた。前半もボールを握っている時間帯が長かったので、その中で点を取るチャンスがあればと思っていたし、相手のディフェンスが堅かったことや、もう一つ勇気がなかったというか、相手の急所に入ることやその前に必要なバイタルエリアやサイドの奥深くへの仕掛けが足りなかったので、(ハーフタイムに)そういう指示を出した」

——2種登録で初出場となった加倉井(拓弥)選手の評価について聞かせてください。
「予想以上と言ったら本人が怒るかもしれないが、予想以上のプレーをしてくれた。われわれは関東クラブということで、J1やJ2チームとのトレーニングマッチを多くやらせてもらっている中でも遜色なくやれていることは分かっていた。ただ本番で慌てずに焦れずにどこまでできるかだったが、そういった意味でも前半は起点になる動きをしてくれたし、守備においてもアジリティーのスピードで相手に寄せる部分などの素晴らしさは見せてくれたと思っている」

 

■井原 正巳監督(福岡)
——まずは試合の総括からお願いいたします。
「天皇杯の試合にアビスパのサポーターがたくさん駆け付けてくれたのに結果を残せず、残念な気持ちと申し訳ない気持ちでいっぱい。今日は町田さんもわれわれも同じようにターンオーバーで戦った。その中で町田さんは守備も堅く、シーズンを通して好調なチームということもあり、その町田さんを崩していかないといけないなという戦いだった。結果的にセットプレー2発で沈んだが、チームの力がなかったし、自分も含めてチームをうまく勝たせることができなかったということに尽きる。前半は押し込まれる場面もあったが、ある程度想定内で後半に勝負をかける形だった。しかし、攻撃は試合を通じて良い形を作れなかった。セットプレー2発で沈んだが、内容的に見ても負けに等しいゲームだったと思うし、それだけ町田さんのほうが良かったと思う。中3日でJリーグの試合が再開される。天皇杯が終わったことでリーグ戦1本に絞れるし、次はホームで栃木戦がある。残り6試合でJ1昇格という目標が手にかかるところまで来ているし、そこを逃さないように、このあと気持ちを切り替えてしっかりと臨みたい」

——冨安(健洋)選手がクラブ史上最年少デビューとなりました。彼を起用した経緯と彼のパフォーマンスについて、評価を聞かせてください。
「冨安についてはトップ登録をしてからだいぶ時期も経つし、ずっとトップチームと一緒に練習もしてきて、8月の天皇杯でも出場の可能性はあったが、本人がコンディション不良ということ実現できなかった。トップでも遜色ないプレーを練習中から出し続けていたし、年代別代表でもプレーをしている。トップチームと同じ能力のある選手なので思い切って今日はデビューさせた。彼の持ち味を思い切り出してくれたと思うし、落ち着いてプレーしていた。フィジカルの伸びしろもある中、本人も実際にプロ選手とのフィジカルの差を感じたと思うが、十分に及第点を上げられるプレーだったのでないか」

——リーグ戦に向けて、気になる部分はありましたか?
「セットプレー2発でやられたことは集中力の問題でもあるけど、ゲームの中でスキを与えてしまったし、ホームで金沢さんにやられたように全員でハードワークをする、球際や守備の切り替えなど、チームのために戦うという部分は町田さんに比べると劣っていた。そうしたちょっとしたことの積み重ねとゲームの中でのマークのズレがセットプレーの失点につながるので、そのあたりはリーグ戦に向けて頭を整理してどうすべきか理解した中でわれわれのゲームをやっていかないといけないという良い意味での敗戦になったし、目覚めるきっかけにもなると思うので、次の試合の結果につなげていきたい」

——シュートまでいけないシーンが多かったが、攻撃の狙いを話せる範囲で聞かせてください。
「奪ってからのボールを前に運べなかったことと、両サイドで起点を作れるだろうという予測はしていたが、そこからのクロスの精度やもう一つの工夫が足りずにえぐるところまではいかなかったのかなと。もちろんクロスの精度はトレーニングでもやっていたし、あとはワイドやシャドーの選手のコンビネーションなど、良いところまで行くけど、そこから先の質と選手の動き出しがうまくいかなかったのかなと」

 

■DF 2 濱田 水輝(福岡)
格下相手に内容がなく恥ずかしい試合をしてしまった
「まったく良いところのない恥ずかしい試合だった。お互いにリーグ戦のメンバーから大幅に代わっているので、相手の出方が分からないのはお互い様。相手が勝つべくして勝ったし、相手のほうが攻撃の回数も多かった。得点チャンスも向こうが多かったし、ウチのほうが守備のスキもあった。この結果は妥当かなと思う。相手がすごく2列目、3列目から飛び出してくる状況が多かったし、前半は結構その形が多く、やたらめったら走ってきて、そのロングボールへの対応で前半が終わったしまったが、それはそれでしっかり対応できていたし、悪くはなかった。攻撃の面で良い状態の味方を使うことができれば、もう少し余裕を持って前にボールを運べたと思う。でも、困って困って周りを見てパスを出すことで詰まって状況が悪くなってボールを取られるような形が多かった。攻撃が始まる前に技術的なミスも多かった。攻撃面ではかなり物足りない試合だった。前半は予定どおりというか、裏のスペースを空けてしまうと、2列目から飛び出してくる選手をつかまえられないと思った。入ってくる選手を3バックでしっかりと受け渡すイメージだった。それは問題なかったと思う。全体的に守備のラインが下がってしまうので、ボールを奪っても攻撃になかなか転じられなかった。後ろやサイドの選手のサポートが遅かったかもしれないけど、もう少しタメを作って全体が上がる時間が欲しかった。そこに行くまでにボールを失っていたので、攻撃が厳しかった。ロングボールが陣地取りのようなロングボールが多かった。ウチの強みは粘り強い守備だけど、この試合はそれが出ていなかった。前半の展開としてはいつもの流れというか、相手にボールを持たせてブロックを作ってセットプレー勝負というリーグの流れとさほど変わらなかったけど、後半の立ち上がりに逆にセットプレーでやられてしまったことはこっちにスキがあったし、ゲームプラン的にはあれはあってはいけない失点。(1失点目と)同じ方向からのCKで2点目を取られたことで試合は終わったしまったと思う。(逆にリーグ戦1本に絞れるのでは?)そう捉えるしかない。格下相手に内容がなく恥ずかしい試合をしたけど、これから何を言っても結果は変わらない。借りを返す場は違うけど、J1昇格に向けてリーグ戦に専念して、昇格して良いシーズンだったと言えるようにチームメートと集中して戦っていきたい。今日はチームとしてバラバラだったと思うし、試合中に修正し切れなかった選手たちの問題もある。お互いの距離も遠かったし、意思の疎通もできている感じではなかった。やっていてもかなり苦しいなと思っていた」

 

■MF 32 冨安 健洋(福岡)
自分の力を出せるメンタリティーを持つことが課題
「(今日の試合で感じた改善点は?)ロングボールやヘディングの対応、自分たちがボールを持っているときに自分がドリブルでボールを運んで相手を引き出すことをもっと改善していきたい。(終盤はパワープレーに出ました)負けている状況でもあったので、ゴールを目指して戦った。でもチャンスを作れなかったので練習で改善していきたい。(サポーターの期待も大きかったと思います)期待は感じているし、その期待に応えられるようにもっともっと成長していければいいなと思っている。(まだ高校2年生ということで、将来的なイメージなどはありますか?)年代別代表に入り続けて、U-20のワールドカップや五輪に出場できるようになりたい。まずはそこを目標としてアビスパで努力をしていきたい。(トップチームにも上がりたいという思いもあるのでは?)トップチームで1日も早く出たいし、1日1日を大事にしてアピールをしていきたい。自分としても試合に出ることでいろいろなことを経験できた。その経験を忘れずに毎日思い出しながらやっていきたい。(実際のプロのピッチは初めてでしたが、いかがですか?)雰囲気やスピード感も全然違って、いつもやっている基準だと通用しないことが分かった。この試合の基準を忘れずに取り組んでいきたい。(2種登録からようやくつかんだプロデビュー。家族への報告は?)家族も喜んでくれたし、ユースの友達も喜んでくれた。そういう人たちの期待に応えたいと思う。今後は自分の力を出せるメンタリティーを持つことが課題。いつもどおりの自分のプレーを出せずに体が動かなかったりしたので、どんな状況でも自分の力を100%出せるようになりたい。(できたプレーは?)今日はあまりない。(監督は及第点とおっしゃっていましたが?)いや、自分としてはまだまだです。もっともっとチームに貢献したい。相手の意図を予測して、先に先にプレーしたかった。でも予測も遅くてプレーが後手に回っていた。そこからミスも増えていたので、事前の予測できれば良かった」

 

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