「ゼルビアTimes」郡司聡

【★1ページ目無料公開/マッチプレビュー】J2第12節・湘南ベルマーレ戦『3POINT CHECK』

■明治安田生命J2リーグ第12節・5月7日(日)16:00キックオフ
町田市立陸上競技場
FC町田ゼルビア vs 湘南ベルマーレ

 

【CONTENTS】
●Chapter 01
『あの日の記憶』
●Chapter 02
『現在自動昇格圏内。湘南のチームスタイルとは?』
●Chapter 03
『吉濱遼平、恩人との再会』

 

●Chapter 01
『あの日の記憶』

2012年11月11日。FC町田ゼルビアと湘南ベルマーレが公式戦で戦う日は、それ以来となる。湘南サポーターにとっては歓喜の、町田サポーターにとっては悲しみの記憶として深く刻まれているはずだ。当時の試合はJ2最終節。J1昇格を懸け野津田に乗り込んできた湘南と、J2残留に望みを託し「人生を懸けた一戦」(太田康介)に臨んだ町田。結果は3-0で湘南の勝利だった。

あの日のあの試合で湘南ベンチに座っていた吉濱遼平が記憶を述懐する。

「他会場の京都が勝っていたら、湘南の昇格はなかったけど、アディショナルタイムに入って、京都が甲府と0-0であることをベンチにいる僕たちは知っていました。『ずっと甲府耐えろ』と祈っていた野津田のスタジアムのことも覚えています。もちろん大雨が降ったことも」

町田は開始早々の2分に失点を喫し、44分にも追加点を献上。後半に加点されても、町田は必死に反撃を試みた。しかし、ボールを保持すれどもいたずらに時間は過ぎ、タイムアップ。2012シーズンのJ2最下位が確定し、町田は翌年からの下部リーグ・JFL降格を余儀なくされた。

町田の“涙雨”にも見えた大雨が降りしきる中、シーズン終了の挨拶に立った勝又慶典チーム主将はマイクの前に立っても、言葉にならない。後方から副将の田代真一が代役として言葉を述べ、その場を収めた。ホーム最終戦セレモニーの一部始終を仮設の記者室から見守った筆者は、人目をはばからず号泣したが、後にも先にも取材現場であのとき以上の感情に支配されたことはない。

「実感がない」(田代)

「悔しい気持ちと、お客さんが最後までいてくれて申し訳ない気持ちと…。いろいろと重なってしまって、うまく言葉にならなかった」(勝又)

試合後のミックスゾーンは、深い悲しみに包まれていた。

あれから5年。時は経ち、相馬体制4年目を迎えたチームは、再び湘南と公式戦で激突する日がやってきた。町田で当時を知る選手は、現在左アキレス腱断裂からの復帰を目指す鈴木孝司のみ。その現状が、下部リーグ降格の重みとシビアな現実を物語る。もちろん、現在のチームはあの日の記憶と無縁。それでも、FC町田ゼルビアというクラブの歴史は存続する限り、積み重なるものだし、そして決して終わることはない。

あの日の記憶が拭い去る日は永遠に訪れないかもしれない。それでも、乗り越えることはできる。そのために成すべきことは、この野津田で湘南に勝ち切ること。ただ、それだけだ。

(残り 1275文字/全文: 2468文字)

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