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【戦術分析:国内】J1第4節 ヴァンフォーレ甲府 1-0 大宮アルディージャ

明治安田生命J1リーグ第4節
ヴァンフォーレ甲府 1-0 大宮アルディージャ
http://www.jleague.jp/match/j1/2017/031803/live/

●J2に近いJ1の試合
開幕ダッシュに失敗した同士の対戦。ホームの甲府は1分け2敗の16位、一方の大宮は3連敗で18位です。まだ順位を気にする時期ではありませんが、ともに残留争いに巻き込まれそうな雰囲気が、そこはかとなく漂います。

甲府はジェフユナイテッド千葉と同じ「3-5-2」、インサイドハーフが2人いる形も一緒です。大宮は「4-2-3-1」でした。最近3バックのチームが増えているようで、ここはどうなんだろう、ということで甲府を見てみました。あと、甲府は元ジェフ選手が5人もスタメンに名を連ねていました。GK岡大生、3バックの中央に山本英臣、アンカーに兵働昭弘、田中佑昌は左のインサイドハーフ。そして移籍したばかりの阿部翔平がいきなり先発、もちろん左のウイングバックですね。大宮も終盤にFWネイツペチュニクが出たので、元ジェフがJ1の試合に6人。あらためて、けっこうなメンバーがいたのだなと思いました。

甲府がPK(FWウイルソン)の1点で勝利を収めたのですが、内容はJ1というよりJ2に近いというか、J2といっても立派に通用する感じだったように思います。

●ハイプレスしない「3-5-2」
甲府の「3-5-2」は形の上では千葉と同じです。3バックの前にアンカーの兵働、インテリオール(インサイドハーフ)が2人、両サイドにウイングバック、2トップの構成になります。ただ、千葉とはかなり機能性が違っていました。

まず、前からのハイプレスはほとんどありません。センターサークルの手前(敵陣側)まで2トップが引く待ち受け守備です。ですから、3バックも千葉のようなハイラインではありません。ウイングバックもあまり前には出ていかず、キーポジションは中盤でした。左の阿部も得意のロングパスを使いやすいのではないでしょうか。

前半のチャンスは甲府MF堀米勇輝が巻いて狙ったシュートでしたが、これは敵陣のペナルティエリアすぐ外でボールを奪ってからのチャンス。一方、大宮のチャンスも甲府陣内でボールを奪ってのハーフカウンターでした。J1とJ2の違いは、前からプレスした時に外せるかどうか。J2だとプレスがハマってしまうと外せないチームが多いので、ハイプレスはかなり有効です。この試合でも前半は大宮が何度かハイプレスを試みていました。甲府がハイプレスをあまり仕掛けない理由は分かりませんが、J1の上位クラブだと外されるリスクが高いからだと思います。ただ、この試合に関しては双方ハイプレスされた時はミスが出ていましたから、前半を見る限りは大宮が有利かなと感じました。

●裏狙い
ところが、後半にペースを握ったのは甲府でした。大宮のハイプレスがなくなると、センターバックとサイドバックの間に田中やウイルソンが飛び出して縦パスを追う展開になります。ディフェンスラインの裏へ長めのパスを落とす攻撃は大宮も狙っていたのですが、後半は甲府の方が回数で上回っていました。その流れからPKを得た甲府は70分にウイルソンが決めます。結局、これが決勝点でした。

甲府は何度かテンポのいいショートパスから、兵働がサイドの裏スペースにパスを出してサイドから崩す形を作っています。両チームとも、いわゆるタテポンな攻撃が多かったのですが、吉田達磨監督がやりたいのはたぶん兵働経由の崩し方の方なんでしょうね。

●うっかり上がれません
甲府のMFはアンカーの兵働が散らし役。(イタリア代表MF)ピルロのイメージでしょうか。ハイプレスはやらないみたいなので、(千葉MF)アランダのように、ガッツリとボールを奪うプレーはそんなに期待していないのでしょう。インテリオールの右は小椋祥平が中盤で受けてさばくゲームメイク、田中が裏への飛び出しとタイプが違っています。

2トップはウイルソンがトップを張り、堀米が自由に動きます。相手のポジションの隙間にうまく入りますが、あんまりパスは来なかったですね。後半途中でFWドゥドゥに代わりました。GKがベンチにいなかったのは驚きましたが、単純に岡以外の2人が負傷中だそうです。

まあ、あれですね。J1に上がったら上がったで、やはりけっこう大変なわけで。うっかり上がれんなと(笑)、そんなJ1下位対決の感想でありました。

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