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関東リーグ2部最終節 デルソーレ中野、7連続ゴールで1部自動昇格を奪取!!

9岡野の右突破からのシュートのこぼれをファー詰めしてチーム5点目を決めた4碓井が走り出す。「『怒とうの4引き分け』やってるころはファーサイドに誰もいなかった。それを中断期間に、とにかくファーサイドに走ろうということでやって、練習試合で関東1部のチームに勝って自信をつけました」(松浦)。

 

 

1位・コロナフットボールクラブ権田対2位・デルソーレ中野。関東リーグ1部自動昇格を懸けた大一番は、前半14分までに3-0と権田がリードした。しかし、この危機的状況のなかで、デルソーレの勝利を疑わない人たちがいた。ほかでもない、デルソーレの監督と選手全員である。3失点していながら「怖くないからプレスをかけてつぶしにいこう!」(広島監督)とベンチで確認しあっていた。そこから始まった信じがたいほどの逆転劇。これは結果論でもなんでもない、9月末からのおよそ2か月強の中断期間で自分たちが培った“リアルな自信”そのものだった。

 

勝ったほうが1部自動昇格という戦い

関東2部はリーグ1位が1部へと自動昇格する。そして2位が1部8位との入れ替え戦に臨む。前節(12節)終了時、1位を確定させているチームはなく、2位までに入る権利を有するのが次の3チームだった。

1位 コロナフットボールクラブ権田/25/26

2位 デルソーレ中野/22 /15

3位 funf spieler YAMANASHI/20/9

(チーム名/勝点/得失点差)

この最終節(13節)でデルソーレが権田に勝っても、勝ち点で並ぶものの得失点差で届かない。旧ルールだったらとうに権田の優勝が決まっていた。しかし勝ち点が同一の場合、現行ルールでは次の順序で順位を決定することになっている。

(1)当該チーム間の対戦成績

(2)当該チーム間の得失点差

1回戦総当たりの関東2部で権田とデルソーレはこの日が今季初対決だ。だから、デルソーレが勝てばその時点で勝ち点で並び、直接対決に勝ったことで1位=1部自動昇格が決まる。得失点差は二の次となるのだ。

ただ、2位以上をすでに決めている権田に対して、直前の試合でfunfが勝って、さらにデルソーレが負けると、権田の1位はもちろんのこと、funfの2位が確定し、デルソーレは一気に3位へと転落する。デルソーレにとって勝利以外に生き残る道はないのだ。しかし、デルソーレにとって幸いなことにfunfがmalvaに負けたことで、デルソーレの2位以上が試合前に確定。1部昇格を悲願とするチームにとって胸のつかえが1つとれた状態で試合に臨むことができたのだった。

 

ゲーム序盤、権田が厳しい前プレでデルソーレを押し込み、そこから3連続ゴールを決めた。

 

ファー詰めの徹底

“リアルな自信”。それは一体、どこから芽生えたのか。シンプルにいってしまえば、

・得点力の向上

・ファー詰めの徹底

・前プレの強化

・そしてスカウティング

この4つである。

最終節での権田との直接対決に不可欠なものとして広島監督は「得点力の向上」を掲げた。今季、8月の6節から9月の11節までにチームは1勝を挟んで「怒とうの4引き分け」を演じ、しかもそのうち0-0が2試合、1-1が1試合と目を覆うばかりの得点力不足に陥った。その理由を広島は「セグンドパウに行く意識というかカウンターを恐れず高い位置にサポートで飛び出す意識が足りなかった」と分析。それを覆すために「ファー詰めの徹底」を全員に指示。その研さんのために9月末の中断期間に突入するや、関東1部の柏トーア`82、ファイルフォックス府中、そして埼玉県リーグ1位の烏天狗/インペリオ浦和FCと練習試合(変則マッチ)をこなしている。いずれも、渡邊良太、石渡良太、鷲足優という名うてのゴレイロをそろえるチームを相手に7-1、7-2、8-3というスコアで完勝。ファー詰めを軸とするオフェンスに大きな自信を得ている。

 

後半4分、権田のオウンゴールでデルソーレはついに3-4と逆転する。

 

プレーへの自信が強いメンタルをもたらす

オフェンスのメドがついたあとはディフェンスの整備だ。これはもう前プレ以外になかった。デルソーレは前プレが得意だ。もちろん勢いで球際に寄せていけばいいというものではない。広島は「みんなでワーッとボールサイドに行って真っ正面からぶつかったら、相手のよさを消して奪えるかもしれないけど、いなされてダイレクトで裏を取られてスコンとやられちゃう怖さもある」。消しにいってやられてしまうかもれないし、プレスがはまるのかもしれない。そこは、やってみなければ分からない。でも「やってだめだったら次,どうしようかというところまで今回は考えてきてる」とまでいい切った。

徹底した映像分析により敵を丸裸にする「スカウティング」。それは全日本選手権での権田の情報収集にまで及んだ。そしてそこで湧いたのが、権田はこれまでのリーグ戦で強いプレスを受けたことがないのではないか、だからクアトロ-ゼロを駆使したパス回しがうまくいったのではないかという疑念だ。同時にそこへ全日本選手権神奈川県大会でP.S.T.C.ロンドリーナのプレスの前に権田がなす術なく敗れた情報が加わる。“権田はプレスに弱い!”疑念が確信に変わった。周到な分析と対策。そしてプレーへの自信が強いメンタルをもたらすという副次的効果が生まれたデルソーレ。それが驚異的な逆転劇を支えた5つ目の要因だった。一方の権田はスカウティングをベースとする戦力分析と整備が不十分だったのではないか。3-2で迎えたハーフタイムでも効果的な切り替え策を打ち出せないまま後半に突入し同点ゴールを献上している。立て直すすべもないまま7連続失点を浴びた姿を思い浮かべつつそう感じた。

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