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【無料記事/フットサル日本代表候補合宿】2日目フォトレポート(2015/6/5)

1_ミゲル、タイトル写真ミゲル ロドリゴ フットサル日本代表監督。

 

2日目、午前中予定されていたフィールドプレイヤー練習は、コンディション調整のため、無し。代わりにビデオセッションとなった。
午後の練習は16時半からのゴレイロトレーニング、17時半からはフィールドプレイヤーのトレーニングとなった。

和やかな雰囲気は1日目と変わらないが、全体を通してみれば、ディフェンス面でのトレーニングに重点が置かれていた。
やはり、2日目のトレーニングは少し活動の強度も上がり、細かい部分の確認と修正に時間を割いていた。
この合宿を通してのコンセプトが見えた2日目の様子をお伝えしよう。

 

まとめ◆デジタルピヴォ! 萩野千絵

 

2_ゴール前でカオルが手でボール投げる。

 

全体を通して、まずいえること。それは、この合宿は、この後に控える対ベトナム戦に向けて代表のやり方やコンセプトを選手に周知し浸透させるための場であると感じた。
やるべきことはある。しかし、現実的な要素も考慮しなければならない。そういう状態の中で、できる限りのことをやろうとしている。
取材を通して、選手や監督との会話の中で、それぞれが聞かせてくれたことをまとめるとそういった現状が見えてきた。

最初に考慮すべきなのは、選手のコンディションだ。Fリーグを戦う最中での代表の招集。全国各地に散らばるチームからおのおのが集まってくる代表選手たちは、それぞれが違った条件のもとで、この代表の招集に応えてこの場に顔をそろえたメンバーなのだ。

代表合宿初日(6/1)の前日、前々日には、Fリーグの試合があり、選手たちはその戦いの翌日、もしくは翌々日にはここにいることになる。
初日を顔合わせとコンディションの調整にあてたのも、そういう面を考慮してのことだろう。

過密日程の中で、トレーニングマッチを控えた直前合宿。というのが、現状だ。

トレーニングマッチは、9日。今回の合宿地でもある、千葉ポートアリーナで行われる。
対戦相手はベトナム。ベトナムについての情報は日本にはなかなか入ってこない。一体どんなチームなのか? それは改めて掲載するミゲル ロドリゴ監督とのインタビューで直接伺うかがったので、そちらを参考にしてほしい。

 

3_酒井がゴールまで笑っている

 

ミゲル監督の練習メニューは、ベースになる基本のメニューにあとから条件を1つ、2つと増やしていくやり方が多い。そして“これ”というなにかひとつに特化したメニューというよりは、いろいろな要素が含まれている。それをこなす選手たちがどこまでそれを理解しているかは別として、気づかないうちに自然と身についている。というメニューが多い。
短い合宿の、限られた時間の中で、気をつけるべきところを意識させながら、その他の部分も知らずしらずのうちに選手たちの肥やしになっている。一般の入場が制限されていないにもかかわらず、代表合宿の見学に足を運ぶ人は少ないが、指導にあたる人には是非、参考にしてほしいと思うことばかりだ。少々話しがそれたが、選手たちはそういう指導者の元、のびのびとやっている。代表初招集の酒井選手(上の写真右下)もこの表情だ。チームの雰囲気はとてもいい。

 

4_1対1を仕掛ける選手、後方のゴールマウスの前に吉川

 

最初のメニューはスペースを限定しての4対1。周りの4人の選手の移動はなし。最初はボール1つから始め、徐々にボールを2つ、3つと増やしていく。
ディフェンスの選手は足で回しているボールを狙いにいく。手でボールを持っている選手はパスを受けられないので、ボールホルダーに対してパスコースになりたければ、どこの位置の選手がボールを受けられないか考えなければならない。どの選手にも、認知と判断、ボールが増えれば共通意識も必要になる。

はたから見ていれば、4人と3つのボールはひとつの視野の中に収まるが、やっている選手たちの目に、そのすべてが写ることがないのは容易に想像できる。

それを、選手たちはそれぞれの方法で補うすべを知っているのだ。

とはいえ、いくら日本代表といえども目は2つしかないし、その目で確認できるのは360度。というわけではない。
目で見えるものはわたしたちと変わらないのだ。だからこそ、選手たちのすごさがどれほどのものか、余裕を残してこのメニューをこなせるのはさすが。
と、しかいいようがない。

 

5_ゴールを近くに2つ並べてのメニュー

 

続いてのメニューは、選手を9対9に分けて、ちょと変わった練習。ルールはフリータッチで通常のゲームと同じ。シュートに対してはゴール前では誰がゴレイロをやってもよい、瞬間ゴレイロ方式。ゴールはコートの中央寄りの位置に置かれ、ゴールの向きは中央からみて外向き。そのゴールの両サイドにはベンチが設置された。
点の獲り方は、2とおり。通常のゴールと同じ+αでゴールの上のネット部分に工夫とアイデアでボールを乗せられたら2点。ただし、ゴール上のネット部分にボールがしっかりと沈み込む前だったら、ゴールの中からヘディングではじき出すのはあり。というルールの下で行われた。
中盤、ゴール前、ディフェンス、オフェンス、ゴレイロを含め誰がどの役をやってもよい。どこに人数をかけたらいいか、バランスをとる選手、自分の持ち味が発揮できそうな場所で様子をみる選手、それを見ていて生かそうとする選手にオールマイティーに動く選手。Fリーグの会場で、たびたびミゲル監督や、小森コーチ、村岡コーチが視察する姿を目にしたが、どんな選手を招集してきたのか? バラエティに富んだ選手層の一端がかいま見えた。

 

6_台の上に乗った加藤竜馬

 

ゴールの横に置かれたベンチに上がり、そこでパスを受けて、ゴールの上のネットにボールを落とそうとする加藤選手。どう見ても難易度が高そうだが、1ゴール2点はやはり魅力的なのか、はたまた難しい方がおもしろいのか?

 

7_ゴール両サイドの台の上に吉川とカオル

 

通常のゴール方向なら狙われても譲らない。と、ばかりに立ちはだかるゴレイロ藤原選手。

 

8_遠目からカオルがズドン! とシュート

 

こぞってみんなが2点狙いでいくなか、ズドンとシンプルに森岡選手がゴールを入れた。難しい2点より、確実な1点というメッセージでもついているかのような森岡薫選手のシュート。

 

9_笑い転げるカオル

 

他の選手のやられた感満載の表情に、喜ぶ森岡選手。みんなとは違うところに気づいていて、少しの穴やすきを見逃さず、しかも得点につなげる。日本の頼もしいエース。

 

10_1人がドリブル、滝田がチェイシング

 

3つ目のメニューは、後ろ3枚でのパス回しから、クアトロでハーフまで攻め、ハーフを超えたらダイレクトでシュートまでいくトレーニング。
ここから、トレーニングは本格化する。攻撃面のコンセプトはクアトロのボール回しから、ディフェンスの位置、ずれ、コートのどの位置でそれが起こったか? そこからどう仕掛けるのか? ミゲル監督の声も次第に大きく、力強いものになってくる。
アラコルタ、ジャンプ。といったワードが何度も聞こえてくる。
ディフェンスのすきを自分たちで作り出そう、そこでつくったすきを積極的に生かして攻め上がろう、相手陣地に入ったら、ゴールという最大の目的を達成しようといったところか。
ディフェンスで重点が置かれたのは、パスを回す中で、ボールにプレッシャーがかかって、パスコースがなくなったところから、ディフェンスの4人が連動して、攻撃的ディフェンスからボール奪取のスイッチを入れるという部分。これを、ディフェンスのコンセプトにしているようだ。
ファーストディフェンダーには、全部とりにいくのではなく、セカンドディフェンダーが狙いやすいように、次の人のためになるディフェンスを求める声がかかる。
全体的には、クアトロで流れてくる攻撃選手の受け渡し方法の確認。そういうときはこう、こういう場合はこう考えようと、ひとつひとつクリアにしていく。
今回が初招集となったバサジィ大分の芝野選手、名古屋オーシャンズの酒井選手は、普段のチームのやり方をベースにして行動しているので、このトレーニングで学ぶことをどれだけ理解して、ものにしていくかが、これからの自身の道を決めていくことになるだろう。
ベテラン勢には、再確認の意味で大事な内容である。
“ニブヤ、アキラ、ここはこう、もっとこう”。“トモアキ、今のところは?” 監督の要求も個々に期待することに及んでいく。
ボールを持っていない選手には、味方を助け、ディフェンスのプレッシャーを和らげてあげるような動きを求めている。
選手たちも集中し、先ほどまでの和やかな空気から切り替え、しっかりとしたトレーニングを積んでいる。

 

11_ミゲルが中央で指導

 

その後は、相手がディフェンスで中を切ってきたときを想定してのトレーニング。
ミゲル監督は、体の向き、切るべきコースの切り方から、チームとしてのコンセプトを伝えるために、必要な場面では一回動きを止め、身振り手振りを加えて約束、決まりごとがチーム全体のものになるように説いていく。

攻撃面では、ピヴォを加え、ピヴォ当ての選択肢を増やすところまでを行った。

 

12_酒井がドリブル、皆本が追う

 

手探りながらも自身の持ち味を発揮していた、今回が初招集の酒井 ラファエル 良男選手。

 

13_滝田の後ろ姿

 

お互いに動きを確認をし合う仁部屋和弘選手とキャプテン滝田学選手。

 

14_ゴールまでボール回しする佐藤亮ら

 

クアトロから、パラを狙い、果敢に走り込む佐藤 亮選手(写真中央)。

 

15_やや遠景写真、中央にミゲルの後ろ姿

 

最後はゲーム形式。監督からの指示は、
「カウンターはなし。一方向だけに限定して、ワンゴールのみの攻撃と守備。チームを3つにわけ、3球交代。ディフェンスはハーフから。
ディフェンスは奪ったら、2人違うディフェンスの仲間に回すこと。ゴレイロ3人はローテーションでチームにかかわらずまわして入る。
テーマはディフェンス。ハーフからでも上げて上げて、押していけるならどんどん押し出していっていい。
コンセプトはいままでどおり、ボールを奪うときは、回して回して、動いている攻撃側の、ボールにサポートがなくなったな、パスずれたな、弱くなったな、コントロールをミスったな、っていうときにいく。そのタイミングをみんなでそろえること」と、いうことが小森コーチの言葉で伝えられた。

チーム分けは、
森岡、皆本、加藤、滝田、芝野(オレンジ)
渡邉 、吉川、佐藤、室田、マティアス(黄色)
仁部屋、永井、西谷、酒井(ビブスなし)
※順不同。

 

16_紅白戦 酒井が左足シュート

 

酒井選手は左きき。日本の戦いの選択肢のひとつになれるか? この場面では、酒井選手の特徴を生かしたコーナーからの攻撃の形が見られた。

まだまだ、というか、本格的に合わせたのは初めてということもあり、合わずにコートからボールが出てしまう、という場面が何度か見られた。コーナーからのリスタートに対するディフェンスの立ち位置は、ゴレイロから細かく指示が出ている。特に関口選手からは、もう半歩右にずれて、体の向きをこうして。と、しっかりとしたポジショニングの要求が聞かれたし、冨金原選手は、ハーフを超えて相手セットが自陣に入ってくる辺りから、大きな声でコーチングしていた。藤原選手も含め、ゴレイロの3選手もいい関係の中で切磋琢磨している。ゴール脇の小森コーチから、ゴレイロに対しても声がけが行われている。

 

17_コーナーキックのリスタートパターン

 

何度も確認して、修正が加えられたコーナーからの動き。永井選手が行くとみせて、というワンシーン。

今回ケガのため、残念ながら離脱した星翔太選手の穴は大きいし、みんなが残念に思っていることは選手たちからも聞かれたが、選択の方法を変えれば対応できる選手たちだ。永井選手は、星選手の代わり。という解釈をしている選手は、プレーを見ている限りでは見当たらない。

監督、コーチの声がけを聞いている限り“代表”だから特別なことをやる。というのではなく、普通のプレイヤーでも知っているようなこともたくさんある。
しかしその精度、細部へのこだわり、当たり前のことをより確実に、それを全員ができること。誰が欠けてもそのときの応用力でカバーしあいながら、自覚と責任あるプレーを常に高いレベルで意識している選手たちが、ここにいる。それが、みんなを代表して戦う私たち日本の代表なのだ。

トレーニング最終日となる明日は、何が行われるのだろう。最後はゲーム形式のトレーニングを行ったが、カウンターのトレーニングは行われなかった。
対ベトナム戦に向けて、ディフェンスに重点をあてていることは明白だ。迎えるベトナム代表とは一体どんなチームなのか? 何故ハーフからのディフェンストレーニングなのか? トレーニング後のインタビューでミゲル監督に直接うかがう機会を得られたので、是非そちらに期待していただきたい。

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