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[無料記事/Road to 関東女子リーグ]BALLENA BLANCA 城北レディース、苦闘の中で1部初勝利! (2016/9/14)

後半残り2分、勝敗を確定させる3点目を決めた5番さち。写真は前半のシュートシーン。

 


4戦目に臨むBALLENA BLANCA 城北レディース。チームは1部へ一気に駆け上がったがその後は足踏みが続いていた。

 

対戦相手は府中アスレティックFCキンツェム。

 

SuperSports XEBIO 東京都女子フットサル1部リーグ2016
8月13日 ASV PESCADOLA MACHIDA Bailarinas 4-2 BALLENA BLANCA 城北レディース
8月14日 BALLENA BLANCA 城北レディース 3-0 府中アスレティックキンツェム
8月21日 Festilo 3-2 BALLENA BLANCA 城北レディース

 

あのころは怖いもの知らずだった

「勝つって大変なんだなあ」。これが1部昇格後第3戦目ASV PESCADOLA MACHIDA Bailarinas(以下、バイラリーナス)戦の直後に僕の脳裏に浮かんだ言葉だった。川崎康裕監督の元で再出発を果たして3季目のBALLENA BLANCA 城北レディース(ばじぇーな ぶらんか じょうほく れでぃーす/以下、城北)。エントランスリーグ、2部と負け知らずでステップアップを果たし最短で1部へと駆け上がった新進気鋭のチームだ。思えばあのころは怖いもの知らずだった。スピードに乗ったドリブル、強烈なシュートと、サッカーで培ったテクニックが炸裂しおもしろいように勝ち点を積み上げた。ところが1部に昇格すると状況は暗転する。4月23日の開幕戦TOCAR jugadoras 新宿戦で1-3と「1部の洗礼」(川崎監督)を浴びると、5月1日、府中アスレティックFCプリメラ戦で1-4と開幕2連敗。苦戦の要因はエースのゆめに厳しいマークがつくようになったことだ。それでもゆめは相手守備網をぶち破り、1週間前に練習中に負傷して迎えた開幕戦ですら先制ゴールを決め、その後、第4戦まで計5得点を重ねたのだ。しかし、ゆめに続く戦力がなかなか現れないまま、中断明けの8月13日の第3戦、古豪バイラリーナス相手にゆめが先制ゴール。1-1の同点にされるも攻守の要、なっちゃんが勝ち越しゴールを決めるが、その後3連続失点を許し逆転負け。これで開幕3連敗と追い込まれ、チームの中から早くも“2部降格”の声が聞こえだした。実はこの試合、選手の側から“前プレに行きたい”と逆提案があった。選手の自主性を大事にしてきた川崎監督はそれを認めて試合に入った。そして1人残して3人が前プレに行く超攻撃的なディフェンスを展開した。しかし、ことごとくかわされると切り替えが遅く、相手の数的有利な状況から4失点という試合だったが、そして迎えた府中アスレティックキンツェム戦。この試合も前プレ継続をチーム全体で確認。連日の試合で疲労はあるものの選手はこれまでにない集中力を発揮し、ついに歓喜の瞬間を迎えたのだった。3-0の勝利を写真中心で振り返ろう。

まとめ◆デジタルピヴォ! 山下

 

試合は城北ペースで幕を開けた。本来はフィクソだがこの日は攻撃的なアラとして高い位置で仕掛けまくったキャプテンの4番リカコ。

 

浮き球でゴレイロをかわしにいく10番なっちゃん。チームのバランサーとして替えのきかない選手だ。ちなみに写真のシュートは惜しくもゴールのバーに嫌われてしまった。

 

ゴール前で常に体を貼るエースのゆめ。フットサルに転向して2年目だがチームメートの誰もが手本にするチームの絶対的な存在だ。

 

2番のフィクソ、のんがハーフ越えからシュートを撃つ。「相手の裏をかくプレー」が得意なだけにディフェンス主体はもったいない気がする。2部ではピヴォもこなした。

 

新入団の23番ひなはまだ19歳。「ドリブルが得意」と豪語するだけあって笑顔で仕掛ける怪物だ。

 

攻撃好きが多いチームの課題はディフェンス。このシーンも数はそろっているものの何か危なかっかしい。

 

前半2分、ゆめ(写真左から2人目)が幸先のいい先制ゴールを決めた。

 

ゆめは14分にもゴールを決め2-0とリードを広げる。利き足の左を振り切ったときゴールネットが揺れる。

 

▪️2点を決めたゆめのコメント
2点目はボールにもしっかりミートして、スッキリした
「やっと1部に上がって勝てたので、ひとまずホッとしてます。(選手の間では“降格”という話も出ているが払拭できそう? との問いに)、ずっと負け続けていたので、これから挽回していきたいです。今日の先制ゴールはゴール前でなっちゃんからもらってダイレで逆サイドに決めました。2点目はひなからパスを受けてドリブルでいって決めました。あのシーンは振り切ったし、ボールにもしっかりミートしたんで、スッキリしました(笑)。仲間のみんながゴールの期待をしてくれるんですけど、それを、なんだろ、プレッシャーにとらえず気持ちでいい方向に持っていけるように心がけてます。昨日の試合が本当にボロボロだったんですけど、今日の試合は雰囲気もよかったし、チームが1つになってた感じがします」

 

ハーフタイムに指示を飛ばす川崎監督(写真左端)。テーマは攻守の切り替えだ。

 

後半、がぜんファイトむき出しにしたのが5番さち。ゴレイロをはじめあらゆるポジションをこなすオールラウンダーだが中でもアラの位置で見せる「スピードに乗ったドリブル」は得意中の得意技だ。

 

そのさちが後半8分、大仕事をやってのけた。遠目からニアを切っているゴレイロの動きを見切ってファーへたたき込んだ見事なゴールだった。いつもながらスリムな体から放つシュートは威力満点だ。

 

昨シーズンの2部最終戦以来のゴールに思わずガッツポーズ!

 

「常にゴールを狙う」という目標どおりさちはその後も撃ちまくるが2点目は遠かった。

 

▪️3点目を決めたさちのコメント
勝つ喜びもみんな忘れてたと思うんで、勝ててよかった
「去年の2部最終戦以来、ずっと点獲れてなくて。前半にターンから撃って、入ると思ったんですけど相手に当たっちゃって。そしたら(監督の)川崎さんに“もっと撃て!”っていわれて。で、後半の後半(残り2分)で時間なかったんですけど、点獲りたい一心で撃ったら決まって、今はとにかくうれしいです。あのシーン、自分的には斜めにドリブルして、撃たないかなと思わせて、角度のないところからも撃つのが得意じゃないですけど、入るときは結構無理やりのシュートが多いんですよ。撃つ瞬間にたまたま顔を上げたらキーパーがこっち(ニア)にいたんで、ファーに撃ちました。前半にゆめが先制点決めたとき、キーパーの動きが見えたからファーを狙ったっていう話をしてて、ああ、ちゃんと見てんだな、自分も見ようと思って、それができました。今日は3-0になっても失点はゼロに抑えたいとみんなでいってたんで、ゼロ点で抑える試合が今までなかったんで。勝つ喜びもみんな忘れてたと思うんで、勝ててよかったです」

 

試合が終わってベンチで選手を迎える川崎監督に安どの表情がうかがえた。「今日は選手が試合を通していい集中をしてくれました」。

 

▪️東京都女子1部リーグ順位表

 

[取材後記]
こうして城北は前期、1部昇格4試合目にして初勝利を挙げた。しかし、その直後のFestilo戦で敗れ、今のところ1勝4敗・勝ち点3・得失点差-5で5位にとどまっている。
城北は前期、Jonita、TapaZida戦の2試合を残していて、仮に4位のFestiloが2敗し、城北が2連勝すれば城北は後期、上位グループ(1~4位によるリーグ戦3試合)のメンバーとして当初の目標であるリーグ優勝を狙う権利を確保する(限りなく難しい目標ではあるが)。しかし、1勝のみにとどまるとFestiloが2敗しても後期は下位グループ(5~8位によるリーグ戦3試合)に身を置くことになり、8位(最下位)に終わると2部へ自動降格、7位だと2部との入れ替え戦に臨むことになる。
だからといって危機感を膨らませても何の役にも立たない。今は、みんなでいい練習をして、個人戦術を高め、チームワークを組み、ゴールへ向かって連携する。そしてより多く点を獲って失点を可能な限り減らす。その努力を日々続けていけば必ずレベルアップする。19~21歳と若い選手が多い城北だけに可能性は高い。
城北は東京都女子フットサルリーグの合間に、東京都5部女子リーグに所属してサッカーもプレーしている。川崎監督の“両方のいいとこ取りをしよう”という方針から今年始めた活動だ。高校までサッカーばりばりやってた選手が大半だから、メンバーの集まりが悪く11人に満たない試合でもエースのゆめを中心に勝ってしまうこともあるという。フットサルではつかないフィジカルを磨くのにも有効かもしれない。フットサルとサッカーは似て非なるものだという。しかし、こういうアプローチがあってもいい。サッカーよりもフットサルにより求められる攻守の切り替えに主眼を置きつつ、サッカーチームっぽさをキープしつつ、自分たちのペースで関東女子リーグ入りを果たしてほしい。

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