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[由梨のイタリア日記⑤]改めて感じる「Calcio(カルチョ)は文化」

イタリア2年目の秋根一馬選手。「自分に求められていることは、ゴールを奪うことだけ」と語る頼もしい19歳です。秋根選手のすばらしいシュート動画付きです!

 

アトレティコ ペルージャC5Fの練習風景。

 

アトレティコ ペルージャC5F ユニオレスの練習風景。

 

私の第二の故郷でもあるウンブリア州ペルージャに来ています。イタリアでは唯一国境とも海とも接してない内陸にある人口17万人ほどの町です。

ここでは、ASD Atletico Perugia Gadtch 2000 Calcio a5 Femminile(=以下アトレティコ ペルージャC5F)というウンブリア州セリエCリーグに所属しているチームに練習参加させてもらいました。練習は週に2回と週末にカンピオナートがあります。ちなみにここでは試合前のアップも参加させてもらっています。練習時間は1時間半で、選手は12名が所属しており、すべてイタリア人。小さいころからボールを蹴っていた選手は3〜4人で、ほとんどのメンバーが大人になってからフットサルを始めたとのこと。

 

アトレティコ ペルージャC5Fの試合前アップ。

 

 

 

モンタネッリ監督は「練習が週2回しかないので、基本的に練習はアップからすべてボールを使ってできるだけボールに触る時間を増やしている。大人になってからボールを蹴り始めた選手が多いので基礎的なことも必要だけど、シーズン中はチームとしての練習に時間を多く使っていかなければならないのが現状なんだ。本当は週3回の練習があればもっといいんだけどね」と話してくれました。

 

アトレティコ ペルージャC5Fの試合風景。

 

 

アトレティコ ペルージャC5Fではお金をもらっている選手は1人もいません。でもお金を支払うこともありません。スポンサーは付いているものの、女子フットサルチームだけでも4チーム(イタリアサッカー協会公認のリーグに2チーム(トップとユニオレス)、ほかに2つのスポーツ協会が運営しているフットサルリーグに1チームずつ参加)持っており、男子チームもあります。女子トップチームの監督、コーチ、GKコーチもボランティアで活動しており、やはり自分の仕事がちゃんとないとできないと嘆いていました。

 

アトレティコ ペルージャC5Fユニオレス試合風景。

 

ただ情熱はあるので、若い選手も育てたいとペルージャ県では唯一ユニオレスのチームも持っており(イタリアでは14歳までは男子と一緒にサッカーもフットサルもできるが、それ以降は女子チームに入ることが法律で決まっています)、10月から4月までの毎週末に行われているカンピオナートに参戦しています。このカンピオナートはラツィオ州とウンブリア州にある11チームで構成されたリーグで、ウンブリア州からは3チームが登録しています。彼女たちはトップの練習が始まる前の時間帯で同じように週2回練習をしています。

フットサルの旅も終わりに近づいて来るといろんなものが見えてきます。フットサルの技術面や戦術面だけではなく、クラブ組織として、リーグとして、どうありたいのか…。

ウンブリア州ではちょっと前までは、イタリアサッカー協会に登録しているフットサルチーム登録数が男女含めて300チーム近くあったにもかかわらず、現在は半分ほどにまで減少してしまっているのが現状だそうです。イタリアでは経済的な面や地域的な面だけではなく、政治的な面もスポーツに深く影響してきます。だからこそ、セリエAエリテという女子トップリーグができても、10年前のほうが盛んだった地域もあります。“今は”厳しい現状。明日は違っているかもしれません(笑)。今回出会ったオーナーたちは「トップリーグができたとはいえ、まだ発展途上の女子フットサルは少しでも力を入れれば、結果は出やすい世界なので『女子フットサルクラブを応援する、クラブチームを持つ、そしてちゃんとクラブ運営をする』ということは投資としてはおもしろい」「イタリアでも14歳を越えると女の子がボールを蹴れる環境が減ってきてしまっている。だからこそフェッラーリを買うなら女子フットサルチームを持って地域貢献したい」といっていました。

ほかにもいろいろなメリットがあるからこそ、そういえるのだと思いまが、カルチョは地域貢献のツールでもあり、町民の交流の場でもあります。チームが強い弱いではなく、地元のチームに価値を見いだしているからこそ、そこに投資しているのだと感じました。まさに【カルチョは文化】。

 

【イタリアで頑張る日本人選手】
第4回目は秋根一馬選手。
今の環境をガラリと変えて強く海外でプレーしたいと渡伊を決意し、イタリア2年目、1997年生まれの19歳の選手に注目してみました。
所属チームはTD Santa Marinella C5(TDサンタマリネッラ カルチョ ア チンクエ=以下サンタマリネッラC5)というセリエC1(4部)のU-21。セリエC1で戦うトップチームは現在14チーム中3位(3月3日時点)という成績。またU-21も14チーム中2位(3月3日時点)につけており、今季8試合を残しプレーオフ進出はほぼ確実な状況です。

秋根一馬選手のコメント
「U-21はこのままプレーオフを勝ち続ければイタリアU-21最高峰リーグ(ラツィオ、コジャンコ、リエティ、ナポリなどトップチームがセリエAで戦うチームばかりですごくレベルの高いリーグ)に昇格の可能があります。
僕はイタリア1年目からチームを替えることなく、サンタマリネッラC5でプレーしています。町を歩けばクルマのクラクションを鳴らしてあいさつしてくれたりBAR(バール)に行けばカッフェをおごってくれたり、どこかに出かければ必ず知り合いやファンに声をかけてもらえる暖かい町です。だからこそ今季もこの町でプレーすることを決めました。
今季開幕前、監督からは『お前が中心となってこのチームをプレーオフに連れて行ってくれ』ということを伝えられました。U-21というカテゴリーとはいえ日本とはかけ離れたイタリアという国で、チームから必要とされる選手になれたことはとてもうれしいです。今、自分に求められていることは観客を沸かせるうまいプレーでもなく、アシストでもなく、ディフェンスでもなく、ゴールを奪うことだけです。18試合出場し、10得点とまだ納得のいく結果は出せていませんが、これからプレーオフを勝ち抜くために全力で闘っていきます。
来季の目標はトップチームでも中心選手となってプレーしてもっとたくさんの経験を積むことです。現在、トップチームではなかなか出場機会が得られていませんが、これから結果を出し続けてトップチームで多くのプレーをするためにアピールをしていきます」
秋根選手の得点シーン:https://youtu.be/Z2xdSvBVD7M
(情報提供:カルチョ・ファンタスティコ http://calciofantastico.com

<プロフィール>
横山由梨(よこやまゆり)
イタリアで大学に通いながらサッカーやフットサルをプレー。日本とイタリアのスポーツ・文化交流などにも携わり、イタリアサッカー協会公認フットサル指導者ライセンスを取得。その時にフットサルマガジンPIVO!でイタリアフットサル情報「cosi fan tutti」を連載。その後は地元の神奈川県に帰還し、指導者として地元のチームでサッカーやフットサルの普及に力を入れつつ、秦野フットボールクラブでフットサルプレーヤーとして活動中です。

秦野フットボールクラブ女子フットサルでは、今季一緒に神奈川県1部リーグで闘ってくれる仲間(選手&コーチ)を募集しています。詳しくは秦野フットボールクラブホームページ(http://www.hadano-fc.org)またはFacebook(https://www.facebook.com/ladies.hadanofc/?pnref=story)にて。

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