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無料記事:さんざんないわれ方の中でじっと耐えて磨いてきた湘南の守備力を見た![Fリーグ第19節](2017/10/12)

試合前に笑顔であいさつを交わす谷本府中監督(右/35歳)と奥村湘南監督(42歳)。

 

第19節府中戦に臨んだ湘南のメンバー12人。キーマンは誰かというと全員の守備力だった。

 

府中は平均年齢が湘南の26.8歳に対して30.8歳と高い。いいにつけ悪いにつけベテランたちによるいつもどおりの府中の戦い方だった。

 

DUARIG Fリーグ2017/2018 第19節
府中アスレティックFC 2-4 湘南ベルマーレ
2017年9月30日(土) 駒沢オリンピック公園総合運動場体育館 観客数:702人
[得点経過]
0-1 05分25秒 湘南 15 鍛代元気 
0-2 09分28秒 湘南 87 フィウーザ
1-2 14分03秒 府中 13 渡邉知晃 
1-3 22分22秒 湘南 2 内村俊太 
1-4 39分35秒 湘南 2 内村俊太
2-4 39分52秒 府中 13 渡邉知晃 

 

4年間手塩にかけて培った成果

“ゴレイロからのロングフィード一本やりだ”、“戦術が特殊なチーム”など、湘南ベルマーレはこれまでいろんないわれ方をしてきた。ルールにのっとった戦い方だというのに、結果を出してないばかりに、上から目線のさんざんないわれ方をしてきた。でも、その中で去年までの3年間監督を務め今季も分析コーチとして戦術面を担っている横澤直樹アナリストプレーヤーが手塩にかけてきたのが守備力だった。4年がかりで進化させた守備力といってもいい。それがチームを支えることで14勝6敗で堂々3位(第20節終了時)につけているが、守備力に優れていれば勝利を呼び込むことができることを明確な形で示し、苦手なチームを相手に結果につなげたのが第19節の府中アスレティックFC戦だった。この日、思い立って駒沢の2階席から観戦した僕は守備力の重要性をまざまざと見せつけられた。

まとめ◆デジタルピヴォ! 山下

 

▪️記者会見
試合を振り返って
奥村敬人湘南ベルマーレ監督
チーム力としても上がっている

「僕、明日誕生日なんですけど(笑)。いや、それで選手にはプレゼントは勝ちだけでっていって。選手たちはそのとおり勝ってくれて。なおかつ42歳なんですね。で、4対2で勝ってくれて。ま、最後の失点はいらなかったですけど、ま、思い出に残る勝利にはなったかなとは思ってます(笑)。
府中には相性が悪くて全然勝ててなくて、選手たちも苦手意識、クラブとしても苦手意識があったと思うんですけど、まあ、とにかく、今年は今までとは違う湘南を見せるということを常に意識して、普段の練習から口に出したりとか、行動でもそうですし、結果でもそうですし、示そうということを合言葉にやってますので。そういった部分でまた選手たちは一歩階段を乗り越えてくれたというか、ひとつのステージに自分たちを上げてくれたのかなという部分で非常に感謝してます。ホント今日はケガ人が試合の中で出てしまって、かなり厳しい状況だったんですけど。まあ、上村充哉とか浦上とか、そういった選手が本当にチームのために体投げ出して頑張ってくれて。そういう部分がうちに勝利が転がってきた部分であるのかなと思いました。ほかの選手も大分フットサルに慣れてきて、相手にしたらすごく嫌な選手だったのかなと思いますし。そういった部分で、チーム力としても上がっているという感覚を得る試合だったと思います」

 

質疑応答
後半もマークをしっかりして耐えに耐えた

Pivo! 選手の頑張りがあって、というコメントがあったが、勝因は具体的にどこにあると考えているか。

奥村 そうですね。初め2点獲っていい流れだったんですけど、相手の波状攻撃があって1点獲られた後に選手たちがそこからずっと耐えてくれて。前半そこで2対1で終えれたところが、選手たちが“行けるんだ”っていう気持ちになったと思いますし。後半もマークをしっかりして耐えて耐えて、3点目をしっかり奪って相手のパワープレーに持ち込んだというところが、まあ、勝因につながったのかなと。ディフェンスの頑張りがすごく目立ったというか、府中の攻撃を相手にパワープレーまで1点に抑えられたというところが選手たちの成長なのかなと思ってます。

Pivo! そのディフェンスだが、今日たまたま2階席から見ていて、選手が非常によく足が出て、ボールカットして、そこからカウンターの起点になるケースが何回か見られて、これはボール奪取というのを練習の重点ポイントに置きながらブラッシュアップしてきたのかなと思いながら見ていたのだが、そこはどうか。

奥村 横澤アナリストプレーヤーの不断の指導で、相手の目を見ながら、相手の特徴をしっかりつかんで、相手が次何をするかを予測しながら、パス系だったらパスを切る、ドリブル系だったらドリブルコースに入る、そういった相手の選手の特徴を見ながら、ディフェンスの立ち位置を変えたりとか、距離を変えたりしてるので。そういった部分で、感覚的にはブラジルの選手のディフェンスの仕方をうちの選手は大分身につけてるのかなというふうに思います。ただ、ホント、外から見ててその感覚っていうのは分かんないと思うんで。中で、実際に対峙したときに、“あ、ちょっと感覚違うな”とか、“距離感違うな”とか“嫌なコースに立ってるな”とか、そういった部分で、中に入ってる相手の選手たちがそういった嫌な部分を感じるシーンがあるのなというふうに思ってます。

 

試合を振り返って
谷本俊介府中アスレティックFC監督
プレーオフで直接争うであろうライバル

「お疲れ様でした。プレーオフ進出争いが非常にしれつな中で、プレーオフで直接争うであろうライバルとのゲームで、結果についてはこのようになってしまい悔しい気持ちでいっぱいですが、ま、ただ、いつか負けは来ますし、このところ勝ち点をしっかり積んでいけたんですけども、じゃあ、自分たちが圧倒的な試合をしてきたかというと、そうでもない自覚もあったんで。常に危機感と、そういった謙虚さを持ちながら戦っていたんで。こういうタイミングで(敗戦が)来たかということで、ま、仕方ないかなと。というのも、相手もすばらしいプレーをしたわけですし、うちはどちらかというと選手の動きだとか精細さを欠いたんじゃないかなという。で、プラス相手はここ1年2年ずっと我々のほうが勝ち続けてきたんで、そういった思いだとか反省というのをしっかり修正してきて、それが実ったというところで、相手はすばらしかったんじゃないかなと。逆にいうと自分たちはこの敗戦を受け入れることによって、しっかりとまたレベルアップができると思うんで。こういううまくいかなかったことをすべて悲観するのではなくて、選手たちはすでにロッカールームで切り替えて、次の試合に向かおうとしてたんで。リーグ戦というのは、流れを乱さずに、流れを抑えるかっていうところが重要だと思うんで。次の3戦目、また湘南さんとやるときに向けての反省はしっかりしつつ、次の試合はまた違った相手との試合になるので、そこに向けてまた1週間いい準備ができればと思います。以上です」

 

質疑応答
若手の活躍で厚みを増していきたい

Pivo! 今日の府中の戦い方を見ているといつものメンバーがいつものように戦っている印象がある。例えば、第2節で花嶋悠(26歳/今節はベンチ入りできず)が活躍したときに監督は“こういうフットサルをやりたいんだ!”というニュアンスのことをいったが、若手の起用で変化をつけて相手を欺くようなフットサルを目指す意識というのは、これからプレーオフ進出争いがますます厳しくなる中で、強めていく必要を感じているか。

谷本 そうですね。特に今日は家庭の事情があって内田(隼太/20歳)がメンバー入りできなかったり、丸山(将輝/22歳)っていうピヴォの選手がいるんですけど、彼は今ケガで離脱をしていて練習にも復帰できていません。岡部(直樹/18歳)に関しては彼もいい選手なんですけど、まだ学校との都合とかでトップの練習になかなか参加できず。ま、今日はたまたまといったらおかしいですけど、メンバー入りしたんですけど、まだ試合に使えるレベルにはなっていないんですけど、チャンスがあれば使いたいと思っています。ま、あと1名、山田正剛(ゴレイロ/20歳)。彼もクロモトがケガのところを、前回の湘南さんとの試合でピッチに立ったんですけど、そこから3、4試合出て、大いに貢献していたんですが、この間の大分との試合でねんざをしてしまいまして、彼も離脱してしまったというところで、ま、思いとは裏腹に、そういう若い選手が、ホントは常に元気であってほしいんですけど、それができてないところで、ま、うまく、厚みを増して戦っていけるというところが今、この中盤でできていないのが現状です。ま、ケガがまた治れば、彼らがチームに勢いを与えてくれると思うんで。ま、そこに対して、我慢しながら勝ち続けたいなと思っています。

 

<ここからは、苦手の府中を破った湘南の、ディフェンス重視の戦い方を振り返る>

 

前半序盤、フィジカルモンスター♯7小門のターンからのシュート。ピヴォとしての仕事ぶりがだいぶ板についてきた。

 

左からカットインして得意のシュートを放つ♯5皆本。これは湘南ディフェンスがブロック。

 

♯87フィウーザが自ら上がるパワープレーからシュートを放つ。すると。

 

これがクロモトが守る府中ゴールのニアに刺さる。豪快なセービングで何度もチームを救ってきたクロモトも狭いニアほど弱いようだ。0-1で負けた名古屋オーシャンズとの開幕節、齋藤に食らったシュートも狭いニアだった。

 

♯25完山からパスを受けた皆本が♯2内村に1対1を仕掛ける。

 

しかし、内村は♯8刈込と2人でボール奪取に成功。

 

ロドリゴも加わってカウンターを仕掛ける。この試合、この後もそうだが、皆本を止め切ったことが湘南の勝因でもあった。

 

2点ビハインドの府中は試合巧者の♯25完山が湘南ゴールに迫るもつぶされる。こぼれたボールに皆本がくらいつく。

 

そしてゴール前の♯13渡邉にシュートパスを送るもゴールならず。

 

皆本はその15秒後、完山とロドリゴのマッチアップからのこぼれを拾って大外をドリブル。

 

ゴールラインまでドリブルで運びシュート体勢に入る皆本。それをロドリゴがピッチに寝そべった状態のまま前進? してシュートコースを消す。これこそ体を張ったディフェンスだ。

 

やむなく皆本はロドリゴの体に当ててマイボールにするのが精一杯だった。

 

前半6分、皆本との連携から渡邉がポイントゲッターとしての仕事をし1点差に迫る。

 

前線で長いパスを受けた♯21柴田が内村をフェイントで揺さぶる。

 

そしてファーに走り込んだ皆本にパスを出すが湘南は中を絞ったディフェンスで対応。

 

ボールはゴールラインを割り、湘南は大きなピンチを切り抜けた。

 

カウンターから♯44本田が小門にピヴォ当てに行く。そのパスをクロモトがスライからカットに行く。

 

クロモトが勢い余って離れてしまったゴールを皆本と完山が懸命のカバー。こぼれにロドリゴが近づく。

 

スライでシュートに行くロドリゴだったが、それより一瞬早く完山がクリア。府中は難を逃れる。

 

この府中ゴール前の混戦で湘南の攻守の要の1人本田が痛む。

 

府中の左サイド、アラの♯11岡山にパスが入るがディフェンスの縦切りで振り向けない。


ここで小門がいい仕事をやってみせる。

 

前を向けない岡山はやむなく♯17マルキーニョへのパスを選択。マルキーニョがゴールに向かってターンすれば府中はビッグチャンスだ。ところが小門が体を当てるディフェンスでマルキーニョから奪取。このときの体の当て方がもう少し後ろからだったらファールになってもおかしくなかったが、ぎりぎり、ショルダーツーショルダーとなりピンチを未然に防ぐことに成功した。ここにもがむしゃらにいくわけではない湘南のディフェンス意識の高さとプレーの質の高さがうかがえた。

 

小門のボール奪取を予測して縦に抜ける内村に小門は迷うことなくパスを送る。去年までサッカー一筋だった小角がいよいよナロースペースの仕事を体現しだした。

 

前半残り40秒を切っても府中のアタックはやまない。皆本のドリブルに内村が対応する。それにしてもこの男、皆本の底なしのフィジカルには頭が下がる。

 

この攻防は果敢にスライに行った内村が制した。

 

そして前へとボールを運びながら♯15鍛代とロドリゴの走り出しを確認。代表に選出されただけのことはあって内村の攻守におけるプレークオリティーは高い。

 

後半になっても府中は攻撃の手を緩めない。完山が右サイドを駆け抜けようとするが♯6植松とロドリゴのマークにあって、ファーサイドへのパスを選択する。

 

しかしこれが届かない。

 

柴田の前でロドリゴがマイボールにしドリブル開始。

 

そして早いタイミングで左サイドをフリーランする内村にパス。

 

その内村のシュートを阻止しようとクロモトがペナルティーサークルぎりぎりまで出てくる。それをあざ笑うかのように右足をボールの下に滑り込ませクロモトの頭上をを狙う内村。

 

ボールは府中ゴールへゆっくりと吸い込まれていった。湘南が1-3とするゴールが決まる瞬間だ。

 

サポーター席へ向かって内村が歓喜のガッツポーズ!

 

イケイケの湘南は鍛代、浦上、そして刈込がビッグチャンスを演出する。

 

鍛代からのパスをシュートに行く♯21浦上。それをゴール前でクリアする柴田。

 

ボールは蹴った柴田の足元に落ちる。それをファーにいた刈込が蹴り込む。

 

しかしこれも柴田がクリア。こぼれ球を鍛代がシュートに行く。

 

最後は大きくふかしてしまったが、3人の連携が生んだチャンスだった。

 

府中は終盤の猛攻に入る。ピヴォの渡邉をゴール前に置く3:1のフォーメーションから♯9宮田がピヴォ当てのチャンスをうかがう。

 

だが、宮田の一瞬のためらいを見逃さず植松がプレスをかけにいく。

 

たまらず宮田がマルキーニョに下げる。すると今度は浦上が猛然とプレスにいく。

 

マルキーニョ→宮田→皆本と回して府中は両サイドのアラがポジションチェンジ。

 

そして宮田が植松とロドリゴの間を縫うパスを出す。

 

しかし宮田の意図に反して右サイドの皆本は縦に抜けておらずボールは無人のスペースへ。湘南のディフェンスが府中の狙いを潰したシーンだった。

 

3分41秒を残してパワープレーに出た府中はゴレイロの皆本が湘南のゴールに襲いかかる。

 

皆本がロドリゴのマークをかわす。

 

そして左足シュート。力強い皆本のアタックだ。

 

しかし距離を詰めてきたフィウーザに止められボールを奪われる。

 

フィウーザはそのボールを内村に送る。

 

前へとボールを運んだ内村が無人のゴールへ。内村のこの日2点目のゴールが決まり湘南は1-4とリードを広げた。湘南はその17秒後、渡邉にこの日2点目を決められるが2-4で府中を振り切った。堅実なディフェンスが生んだ勝利だった。

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