久保憲司のロック・エンサイクロペディア

【世界のロック記憶遺産100】 なぜパンクはツバを吐くのか?ツバまで吐かれてライブをしないといけないのか (久保憲司)

ライヴ「Xサーツ」

みなさん、明けましておめでとうございます。今年もおもしろいロック話をたくさん書いていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 

世界のロック記憶遺産100というコーナーでカウンター・カルチャーの熱気を記録しているのはMC5の『Kick Out The Jams』だと書きましたが、パンク・カルチャーとは何だったかを記録しているのはストラングラーズの『ライブ: Xサーツ』というライブ・アルバムだと思うのでそれについて書きたいと思います。

 

 

やっぱライブですよ。セックス・ピストルズクラッシュのアルバムを今聴いてもパンクとは一体何だったのか、伝わりにくいと思うんです。

シャム69のデビュー・アルバム『テル・アス・ザ・トゥルース』がライブとスタジオの半々で、これでもいいかなと思ったんですが、シャムの方はパンクというよりスキンヘッズだし、小さなライブハウスでOiがごちゃごちゃやっている感じがショボくも感じるので、音も会場も殺気だっているストラングラーズにしました。

 

 

殺気だっていたというのがパンクだったと思うのです。

残念ながらYouTubeには『ライブ X・サーツ』のフル音源がなかったので、スタジオ録音の方を貼っておきましたが、「(Get A) Grip (On Yourself)」「5 Minutes」「Hanging Around」はライブで聴いてもらいたいです。ベースとかブルブリ、ゴリゴリしていてヤバイです。ジョイ・ディヴィジョンのピーター・フックはこの音を出したかったそうです。そして、それがああいうピーター・フックの音になったというのはなかなか興味深いです。ジョイ・ディヴィジョンも元々はストラングラーズのプロデューサーだったマーティン・ラッシェントとアルバムを作っていたので、元々はストラングラーズのような音を作りたかったのでしょう。これくらい偉大なバンドなのに、日本では忘れ去られたバンドになっているのは辛いです。

『ライブ X・サーツ』は音以上にMCがヤバイのです。ヴォーカルのヒュー・コーンウェルが「Hanging Around」の後で、お客に「俺がビールの缶開ける間くらいツバ吐くの止めてくれるかな。君たちはツバを吐くのが好きかもしれないけど、俺はツバを吐かれるの好きじゃないだ。それでも止めれないというなら、それは君の知能指数に関わってくるな」と言っているけど、むちゃくちゃでしょう。

僕も82年くらいにダムドなどのパンクのコンサートをイギリスで見てるんですけど、本当にツバが異常に飛ぶんです。このアルバムが録音された77年とか78年は本当に凄かったみたいです。イギリス人はパイント・グラスという口が大きなコップでビールを飲むのが好きなんですけど、そんなので飲んでいるとすぐにビールにツバが浮かんでいたみたいです。この頃はビールの空き缶のあの小さな穴にまでツバが入るような状況だったんでしょうね。気持ち悪すぎます。

で、何曲かやっても客がツバを吐くのを止めないので、「Death and Night and Blood (Yukio)」の後に捨てゼリフのように「ワールド・オブ・ザ・ニュース(向こうの東スポ)を見て、パンクとはツバを吐くもんだろうと思っているみたいだな」と捨てゼリフのように言って、「5 Minutes」に突入する、かっこよすぎでしょう。

なんで、ツバまで吐かれてライブをしないといけないのか、なんでやめさせないのか、というか、コンサート中止にしたらいいと思う。でも、止めない、本当に客とアーティストがナイフを突き刺しながら、ライブをやる感じ、これはこれまでのロックがマリファナやって、みんなピースだと言っていたことへの反発だったのです。

 

続きを読む

(残り 1306文字/全文: 2859文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ