久保憲司のロック・エンサイクロペディア

【世界のロック記憶遺産100】 スクリッティ・ポリッティ 『ソング・トゥ・リメンバー』 パンクが社会主義者と作った最高のアルバム (久保憲司)

 

Songs to Remember

 

ちょっと話題が古くなってすいませんが、シアトル市が2月7日をクラッシュの日と決めた世界で三番目の都市となったというニュースを聞いて、シャレてるなと思いました。2月7日にラジオからクラッシュがたくさん流れるのはいいなと思いました。

日本もクラッシュの日、宣言するべきですね。

みなさん、2月7日がなぜクラッシュの日か知ってます? それはクラッシュのバンド名に由来しているんですよ。クラッシュという名前は実はカルチャーというレゲエ・バンドの「Two Seves Clash」という曲から来てまして、その曲が「ツゥ〜・センブズ・クラッシュ〜え〜」と歌っていることから2月7日がクラッシュの日だろということになったんだと思います。

 

 

ラスタファリアンズ―レゲエを生んだ思想 もう一回、シャレてまんな。

でも、この曲、実は7が重なる日に不吉なことが起こると歌っているんですよね。だから本当は7月7日なんですよね。マーカス・ガーベイというのネーション・オブ・イスラムやラスタファリアニズムに影響を与えた黒人民族主義の指導者が1977年7月7日に不吉なことが起こると予言したとされているんですが、マーカス・ガーベイそんな予言しないでしょうね。ラスタの妄想ですね。今から考えるとラスタって、けっこう陰謀論だったなと思います。でも、当時はかっこいいなと思ってました(いや、そんなことないか、ハッパでトンでるだけやろと思ってたかな)。友達がジャマイカに行ってラスタのコミューン(なのかな?)に入って生活したりしているのを、いいなと思ってました。

でも、その当時は日本ではレゲエ好きと言ってもボブ・マーレーくらいしかみんな知らなくって、「俺カルチャーがヤバいとおもんねんけど」といっても誰も同調してくれる人いなかったです。今聴くとどんな感じですか?

The Hoople クラッシュというバンド名の由来がカルチャーの曲からきているというのはかっこいいからそう言っていただけで、本当はモット・ザ・フープルの「クラッシュ・ストリート・キッズ」から来てるんだと思うんですよね。クラッシュ・ストリート・キッズという不良たちが街にやってくる、気をつけろという歌の方がまさにパンクらしくっていいですよね。でも、何にも影響されていないとされるパンクがモット・ザ・フープル(グラム)に影響されていたなんて、イメージが悪いので、クラッシュのバンド名の由来はカルチャーの曲からとったということにしたんだと思います。

世界のロック記憶遺産100はウルトラヴォックスシンプル・マインズとポスト・パンクのバンドを紹介してきました。これらのバンドがクラウト・ロックやアート・ロックと、モット・ザ・フープルもふくまれると思うのですが、センセーショナル・アレックス・ハーヴェイ・バンドなんかの芝居チックなバンドに影響されていたという話を書かせてもらいました。実はポスト・パンクに影響を与えたもう一つの流れがあるんです。ロバート・ワイアットです。

 

 

ロバート・ワイアットは元々ソフト・マシーンの人なので、クラウト・ロック、アート・ロック系の流れに入れてもいいんでしょうけど、その存在はあまりにもデカすぎて、やっぱりポスト・パンクの源流にはクラウト・ロックとアート・ロック、アレックス・ハーヴェイなどの芝居ちっくなバンド、ロバート・ワイアットという3つの大きな流れがあると思うのです。

ロバート・ワイアットの音楽がなぜ偉大かというと、事故によって半身不随になったことによって、内省的な音楽を作りだしたからというのはあまりにも身も蓋もないと思うんですね。

そんな中、ロバート・ワイアットとは何か、なぜパンクの熱気の中、すべてのオールド・アーティストは反革命的と糾弾される中彼だけが崇拝されたのか、その答えは彼に一番影響されたスクリッティ・ポリッティにあると思うのです。

 

 

すごい曲ですよね。今聴くとそうでもないですかね。

これ「クラフトワークとレゲェのグレゴリー・アイザックスが一緒にやったらどうなるだろう?」と思って作ったんだとスクリッティ・ポリッティのグリーンが言っていたんですけど、まさにそんな感じで作られていますよね。すごいアイデアですよね。グリーン「カルチャーの『アフリカ・スタンド・アローン』さえ聞いていればそれでいい」とも言っていて、むっちゃ気が合うわと思ってました。「クラフトワークとグレゴリー・アイザックだけじゃダメだと思ってロバート・ワイアットにキーボードをお願いした」とも言っていて、なんかすごなと思います。

社会主義者のロバート・ワイアットとマルキストの天才のアントニオ・グラムシの著作をバンド名に持つバンドの融合ですよ。スクリッティ・ポリッティのアルバムにはジャック・デリダなんて曲名もあって。そして、リリースしたレコード会社は使った経費を引いて、儲かった利益はバンドと半々するという生粋の社会主義のレコード会社ラフ・トレードです。こんなことやっているからソ連のように崩壊するんですけどね。

ロバート・ワイアットの音楽がなぜすごいかというとその答えを書いてなかったですが、社会主義者ということと関係しています。

 

 

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tags: Culture Gregory Isaacs Kraftwerk Mott the Hoople Robert Wyatt Scritti Politti Soft Machine The Sensational Alex Harvey Band

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