久保憲司のロック・エンサイクロペディア

レッド・ホット・チリ・ペッパーズ 『The Getaway』 ・・・レッチリのニューウェイブ、ポスト・パンクな感じは心が清々しくなりますね(久保憲司)

ザ・ゲッタウェイ

 

今週のヘッドハンター、またしても大物です。すいません、レッド・ホット・チリ・ペッパーズです。

その前に、ロンドンのシンガー・ソング・ライターを紹介します。キートン・ヘンソンという人です。1988年3月24日生まれの28歳、不安神経症のためにめったにライブをしないそうなのですが、9月16日に5枚目のアルバム『Kindly Now』が出ます。ジェフ・バックリィ、エリオット・スミスが好きな人は要チェックです。

実は僕、ジェフ・バックリィ、エリオット・スミスは苦手なんです。ジェフ・バックリィはシンガー・ソング・ライターと言われているんですけど、僕にはロックすぎるんです。ロックだからロックでいいんですけど。

レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジとジェフ・バックリィが初めて出会った時、二人して涙したという話は感動的です。今は偉大なバンドという評価が完全に定着したツェッペリンですが、90年代のツェッペリンはまだヘヴィメタとバカにされがちでした。ツェッペリンの音楽の本質とはハードな音楽じゃなく、世界中の音楽を自分の言葉でどう語るかということだったと思うのですが、そんなツェッペリンの本質を理解し、それを引き継いでくれてるかのようなジェフ・バックリィの音楽にジミー・ペイジは自分の子供に出会ったような感動をしたんだと思います。ティム・バックリィの息子ということでシンガー・ソング・ライターの文脈で語られますが、僕はロックとしてみているんです。

エリオット・スミスはラジオで流れてくると、「誰やこれ、いいな」といつも思うんですけど、ライブを見ると「いろんなことがあったんやろな」と痛いしく感じて、なんかCDを聴く気がしないんです。そんな二人ですが、もうライブが見れないと思うと切なくなります。

キートン・ヘンソンはこんな二人よりも、もっと切ないんですが、暖かくなるんです。アンビエントという言葉が似合うシンガー・ソング・ライターです。アンビエント・シンガー・ソング・ライター、なんか違うな。悲しいけど、なんか元気になる不思議なシンガー・ソング・ライターです。ベン・ワットのデビューの時に似てるような気がします。でも、ベン・ワットより拙くないです。ちゃんと音楽を分かっているというか、レイヤーがしっかりしているというか、無理してジャズやろうとしてないというか、お父さんがロイヤル・シェイクスピア・カンパニーでお母さんがバレエ・ダンサーというすごい家柄の人だからですかね。イラストレーターでもありますし、絵画のようにレイヤーがしっかりしている感じもいいんです。

 

 

キートン・ヘンソンも、イギリスで今流行りの髭を生やしていますが、イギリスの若い子はなんで髭を生やすのが流行っているんですかね。刺青とかピアスじゃもう面接落とされないが、イギリスで流行っている立派な髭スタイルだと面接落とされそうです。俺はフリーランスで生きていっているんだよという意思表示してるんですかね。日本だとフリーランスの人間は新聞社で働いていたり、大企業で働いていたりする人より、下に見られますが、海外だとフリーランスの方が仕事ができる人という目で見られます。会社に雇われず、自分で食っていっている人の方がすごい人と見られるんです。お前ホンマに食えているのかという目では見られますが。

日本もあの髭スタイル流行るんでしょうか?

そんな髭ファッションを取り入れても良さそうなレッド・ホット・チリ・ペッパーズ、新作『The Getaway』、フジロックで来日と、話題は豊富ですが、日本ではあまり盛り上がっていない感じがしますね。その一番の理由はギターがジョン・フルシアンテじゃないというのがあげられると思うんですが、僕は新しいギターのジュシュ・クリングホッファーのギターが大好きです。ジョン・フルシアンテよりもよりニュー・ウェイブないいギターを弾くと思うんです。

海外でもジョンじゃなきゃという声も多くユーチューブでジョン・フルシアンテVSジョシュ・クリングホッファーのギター・ソロ比較なんてのがアップされて、コメントには「ジョン・フルシアンテが一番」というコメントが多いんですけど、僕はそう思いません。

 

 

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tags: Elliott Smith Jeff Buckley Keaton Henson Led Zeppelin Red Hot Chili Peppers

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