縦に紡ぎし湘南の

【深化の轍】山田直輝の2015年

いまなお印象に残るトレーニングの一幕がある。とある夏の日、照りつける陽射し以上に熱い1対1を山田直輝は繰り広げていた。対するは永木亮太、チームでも屈指の球際の強さを誇るキャプテンだ。めぐり合わせの偶然がふたりを幾度も引き合わせ、そのたび真っ向勝負がピッチの上に描かれた。

観る者を釘付けにする攻防に、「僕もやっていて面白かったです」山田自身もまた楽しげに振り返ったものだ。
「いままでは、気持ちは闘いたいのに、アレ? みたいなのがありました。でも、だんだんゴリゴリ行けるようになってきて、そういう自分らしさが出てきたかなと感じます。きょう初めて亮太くんとゴリゴリやって、『うわ、もっとこのひととやりたい』と思えたので、疲れましたけどすごく楽しかった。でも今日の感じだと僕はまだ負けていたので、亮太くんともっともっとガチガチやりてぇなと思いました」

自分らしさを取り戻し、さらにプレーの幅を広げたい。僕にプレーする場を与えてくれたチームに恩返しをしたい。開幕を前に、山田は思いのたけを口にした。だが気持ちとは裏腹に、2012年以降遠のいていた試合勘を回復するための時間は短くなかった。浦和との開幕戦に途中出場し、移籍後初出場を果たしたものの、以降コンスタントに出場機会を得られたわけではない。「怪我が続くなど長いこと出場機会がなかったことで、大きな意味でのゲームの感覚――ボールをどこに置き、パスをどのように出して、どうディフェンスするかといったゲーム勘と言われるものが、シーズン当初は少し欠けていた」曺貴裁監督も指摘する。

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