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春秋制か夏春制か/Jリーグ日程の考察

2016年1月25日の鹿児島キャンプ。日本の冬には必ず、豪雪のリスクが存在する。

もちろん、現実的には当然の結論なのであろう。Jリーグが加盟クラブの8割にも及ぶ反対を受け、シーズンの秋春制導入を断念した件だ。

田嶋幸三日本サッカー協会会長は、有名な「秋春制」論者である。欧州のシーズンである秋春制に合わせれば、選手の欧州移籍も容易になり、日本代表の強化にもつながる。サッカーの国際カレンダーは欧州を基準にして作成されており。国際Aマッチデーなどへの対応についても、秋春制の方が遙かに容易であることは言うまでもない。日程もスムーズに組むことができる。

だが、端的に言えば、「それだけ」である。

正直にいえば、日本は冬にサッカーはできない。もちろん、広島では可能だ。だが吉田サッカー公園では無理だ。豪雪期の1月・2月、チームはほとんどキャンプのために吉田で練習する機会がない。ただ、それでも2月下旬開幕であれば吉田サッカー公園を使わざるを得ないが、そうなるとほぼ毎日、雪かきの必要がある。今も地域ボランティアとチームスタッフが総出で何とかサッカーができる状態にまで持っていっているが、それでも雪が降り続く日は無理だ。そもそもの問題として、雪道を車で練習に通うことを選手に強いるリスクは大きい。

吉田サッカー公園ですらそうなのだから、札幌・仙台・山形・新潟・松本・甲府(J3まで含めれば、秋田・富山・長野もそうだ)といった豪雪のリスクがある地域では、練習も試合も無理である。

それでも、室内練習場を整え、屋根付き+雪融施設+観客席の防寒施設が完備したスタジアムが完成したとしよう。しかし、それでもプロの試合を行うのは無理だ。雪はあっという間に都市の交通網を阻害し混乱させ、サポーターの安全を奪ってしまうからだ。「スキーという娯楽を雪国の人は楽しんでいるではないか」という人もいるかもしれないが、そのスキー場も豪雪が降ってしまえば人は来ない。金子達仁氏は「ドームでサッカーは一考の価値がある」と書いているが、スタジアムに向かうサポーターの安全と、そもそも大雪でも「出掛けたい」と思わせるモチベーションを高められる施設を前述の豪雪(あるいは豪雪のリスクがある)地域に整備することは、ほぼ不可能だろう。また、岡田武史元日本代表監督の「雪国の子どもたちにスポーツができる施設を」という提案はもっともだが、その施設をJクラブが優先的に使ってしまっては、地域の反発を招きかねない。

つまり、豪雪期の日本で、プロサッカーのイベントを行うのは無理なのだ。少なくとも現時点では。

だが、そういう状況を踏まえて考えても、秋春制(正確には夏春制、以後、この文言を使用する)の議論をストップするのはもったいないと思う。

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