「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【この人を見よ!】vol.6 いつか今日が「あの日」になる~DF2 安西幸輝~(2016/05/11)

タッチライン際を疾風のごとく駆け抜けるスピード。アップダウンを繰り返せる運動量と攻守における献身性も備える。サイドバックに求められる条件を満たし、クロスの精度と状況判断を磨いていけば、スケールの大きなサイドアタッカーへと成長していくだろう。いま僕たちは、安西幸輝が新境地を拓こうと格闘している日々を見ている。

■その選手の地金が露わに

J2第12節、東京ヴェルディ vs 松本山雅FCの一戦は終盤に差しかかっていた。スコアは0‐4。敗色濃厚だ。この状況は、選手の本質を知るにはいい機会となる。苦しいときこそ、人間の地金がむき出しとなるからだ。

このままゲームをクローズさせてはならないと足掻いている選手がいた。安西幸輝だ。右サイドハーフで先発した安西は、後半途中から左サイドバックに移っていた。

エネルギータンクは空っぽに近いだろうに、ぐいぐい縦にボールを運ぶ。72分、チャンスが訪れた。相手の左サイドに侵入し、南秀仁のパスを受けた安西は右足で中央にクロスを入れる。キックのタイミング、軌道、まさに狙いどおりのピンポイントクロスだった。これをドウグラス・ヴィエイラが頭でゴール右隅に流し込もうとするが、シュートは枠を逸れた。

結局、東京Vは松本にひっかき傷ひとつ残せず、完敗した。

「選手間でもっと声をかけ合う必要は感じますね。うちもやってはいるけれど、相手はワンプレーごとに厳しく声をかけ合っている。そこが、強いチームと弱いチームの差なんだなと。先に失点して下を向いたつもりはないですが、全体的にそういう空気になってしまった部分はある。それはやっている11人の責任。監督の責任ではないです。僕はイバくん(井林章)とともに一番試合に出ているので、もっとチャンスに顔を出さないとダメ。自分が流れを変えてやると、もっと我を出していかなければ」

安西が試合を振り返るコメントには「もっと」が散りばめられている。もっと攻撃に絡み、もっと周りを助け、もっと強いチームに。現状は足りないところだらけなのだろう。

(残り 1787文字/全文: 2627文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

1 2 3
« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ