「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【この人を見よ!】vol.10 これが田村だ ~DF23 田村直也~(2016/07/27)

サイドバック、センターバック、ボランチなど、守備的なポジションを幅広くこなす。与えられた仕事を理解し、きっちりやり遂げる、職人肌のプレーヤーだ。
監督にとっては頼りになる存在だろう。パフォーマンスの波が小さく、先発、途中出場、どちらでも計算できる。緊迫した状況に放り込まれても、すっとゲームに入っていけるのがいい。ベテランならではの対応力、落ち着きを感じさせる。
今季、不振にあえぐチームにおいて、田村のような軸のブレない選手は貴重だ。プロ10年目の節目となるシーズン、そこにどんな足跡を残すのか。

■薄氷の勝利

戦況を固唾をのんで見守っていた。J2第24節、IAIスタジアム日本平で行われた清水エスパルス戦。東京ヴェルディのリードはわずかに1点。後半アディショナルタイムに入り、清水が波状攻撃を仕掛けてきた。

ゴールまでおよそ5メートル。ボックス内のこぼれ球に、白崎凌兵の右足が振り下ろされる。そこに身を躍らせた田村直也。ひと際大きくなった歓声にまぎれ、重い衝撃音が響いた。白崎のボレーシュートを田村の左足がブロックし、跳ね返ったボールはハーフウェーラインに届きそうなところまで飛んだ。

白崎がシュートモーションに入った瞬間、田村はすかさず2、3歩間合いを詰め、コースを狭めている。そして、ジャストのタイミングで、ボールの軌道に左足を差し込んだ。

相手の態勢から、シュートコースはある程度限定できただろう。だが、なぜボールの中心を正確にとらえられたのか。タイミングを合わせられたのか。それらは理屈では説明がつかない。足先をかすっただけで、ゴールネットを揺らされてもおかしくなかった。クリアし切れず、再び相手にボールがわたっても不思議はなかった。そうならなかったのは田村の左足だったからだとしか言いようがない。

「1試合に、1、2回。これが田村だ、というプレーをみんなに見せたい。今日のゲームでは、あのシーンがそうでしたね。苦しい試合を勝ち切ることができてよかったです」

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