「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【この人を見よ!】vol.14 好機逸すべからず ~MF28 楠美圭史~(2016/10/29)

今季、楠美圭史はヴェルスパ大分から復帰し、中盤の一角に食い込む活躍が期待された。だが、待っていたのは試練の日々。開幕当初こそポジション争いに絡めていたが、やがてその姿はベンチからも消えていく。このまま尻すぼみにシーズンを終えてしまうのか。練習で粘り強くアピールを続けた楠美に、待望のチャンスが回ってきた。

■61分、無念の途中交代

最後の最後にめぐってきたチャンスだった。

10月22日、J2第37節、北海道コンサドーレ札幌戦。札幌ドームの記者控室でメンバーリストを手に取った僕は、あっと声を上げた。先発に楠美圭史の名前。この試合、中後雅喜がコンディション不良でメンバー外となるのはわかっていたが、てっきり船山祐二が代役を務めるものとばかり考えていた。

楠美は第12節の松本山雅FC戦を最後に出場がなく、メンバー入りも第23節のV・ファーレン長崎戦以来。このままでは終われないと練習でもがく姿を、冨樫剛一監督はきちんと見ていたのだろう。それにしても、久しぶりの公式戦で、相手が首位の札幌とは。いかにも負荷が強すぎるように思えた。

前半、楠美はあからさまなパスミスが二度あったが、それ以外は無難な出来だった。中盤の底でコンビを組む渡辺皓太を走らせ、自分はバイタルエリアを厳重に管理。セカンドボールの奪取に力を注いだ。

57分、楠美は左足が激しくけいれんし、ひとまずピッチの外へ。「ヤバいです」と苦悶の表情を浮かべる楠美に、「なんじゃ、おまえ、ツっとるんか」と気風よく応じたのは志賀淳コンディショニングトレーナーである。こういう多少荒っぽい応対のほうが、選手の気持ちは救われるだろうと思う。

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