【フットボール・ブレス・ユー】第14回 永井秀樹が残したもの(2016/12/14)
第14回 永井秀樹が残したもの
一瞬、何が起きたのか、わからなかった。
永井秀樹が中盤でボールを持つ。相手選手3人に囲まれる。身体を左右に小さく振った永井は、ボールを巻き込むように前に出し、3人をあっさり置き去りにした。
2月6日、千葉県館山市で行われたモンテディオ山形とのトレーニングマッチ。僕はすごいものを見たと興奮した。アクシデントが起こったのは、このプレーの直後である。負荷が強すぎたためか、あるいは気温が低かったのも影響したかもしれない。右足の筋肉系のトラブルによりピッチを退き、以降、長期離脱を余儀なくされた。
冨樫剛一監督はこのときの起用を悔やむ。
「非常にコンディションが良かったんですね。昨季、永井はスーパーサブの役どころでしたが、今季はスタートから使う機会もありそうだと思えるほど状態が高いレベルにあった。それで、開幕前の山形との練習試合、相手がパワーを全開にする状況で、どの程度のパフォーマンスを発揮できるか確認するためにスタートから使いました。結果的にはそれで重度の故障を負い、復帰した第17節のFC岐阜戦で今度は左足のけが。せっかく苦労して地道に身体をつくり、戦える状態に持ってきてくれていたのに、1年のほとんどをリハビリに費やすことになった。自分の使い方次第で、避けられたのではないかと悔いが残ります」
通常、現場のトップにとっては扱いづらい存在だ。年齢、選手時代の実績ともに永井が上。監督と選手という間柄、練習やミーティングでは「永井」と呼び捨てにし、それ以外は慣れ親しんだ「永井くん」の呼び名に戻った。
「やりづらさはまったくなかったです。彼のほうがだいぶ気を遣ってくれましたね。居残り練習で若手を指導するのをいやがる監督もいるでしょうけど、僕は大歓迎でした。これまでヴェルディが大事に育んできたパス&コントロール、ボールの置き方、プレーの良し悪しの基準、言葉にしづらい感覚の部分を、若い選手に受け渡そうとする姿勢がひしひしと伝わってきた。成長の加速度を上げるために、何が大事なのか真剣に考えて接してくれたと思います」
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