「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【この人を見よ!】vol.21 巧さの本質 ~MF33 渡辺皓太~(17.6.28)

2017年6月25日は、渡辺皓太にとって記念すべき一日となった。J2第20節、FC町田ゼルビア戦でプロ初ゴール。めったに見られないヘディングシュートで、最初の一歩を刻んだ。
素朴にして飾り気のないキャラクター。その一方、プレーは雄弁だ。ボール奪取からチャンスメイクまで、攻守において多くの仕事量をこなす。ランド育ちの逸材が、ルーキーイヤーからその翼を大きく広げ羽ばたこうとしている。

■あの日、東京は雪が降った

2008年2月2日から2日間、東京ヴェルディ1969ジュニア(現東京ヴェルディジュニア)の新小4セレクションの開催が予定され、スクール生だった渡辺皓太もここにエントリーしていた。

スクール生の同期には、実力を認められとっくに合格を手にした者がいた。しかし、渡辺には声がかからず、保留の状態。例年より遅い、2月のセレクションはまさにラストチャンスだった。

なのに、セレクションを目前に控えた渡辺は、運の悪いことにインフルエンザにかかった。絶望的な気分で寝込んでいたとき、窓の外を見るとパラパラ白いものが舞い降りている。雪だった。

東京は大雪に見舞われ、セレクションは延期。1週間後、体調を戻した渡辺は無事この難所をクリアし、東京Vジュニアの一員に名を連ねることになる。

「もしセレクションが予定どおりに行われていたら、どっかほかのチームに行くしかなかったんじゃないですかね。僕はそれほど評価されていたわけではないので、ヴェルディには入れなかったと思います」

渡辺はなんでもないことのように笑うが、このツキはただごとではない。いや、そもそも大事なときにインフルエンザにかかっていること自体が不運で、実質プラマイゼロか。とにかく、よくぞあの日に雪を降らせてくれたものである。勝負の場で生きる者にとって、ツキに恵まれることは大事だ。

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