「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【フットボール・ブレス・ユー】第23回 お楽しみはこれから ~水戸ホーリーホック 林陵平~(17.8.2)

第23回 お楽しみはこれから ~水戸ホーリーホック 林陵平~

それなりに長くひとつのクラブを見ていれば、誰しも胸に秘める「if」の物語がある。もし、あのとき――。ほんの些細なことから、その先の暗転につながった重大事まで。ふとした瞬間、それは顔をのぞかせる。現実世界にタラレバはなく、未練がましいと思いつつも、しばし夢想にふける。

7月29日、J2第25節の水戸ホーリーホック戦、東京ヴェルディは2‐3で敗れた。翌日、僕は那珂川の河川敷にあるホーリーピッチを訪ねた。

前日の試合に出場したメンバーがリカバリーを行い、林陵平もそのなかにいる。林は、プロ9年目の今季、早くも10得点と快調なペースでゴールを量産。キャリアハイは、2013シーズン、モンテディオ山形でマークした34試合12得点だ。更新は間違いないと見られる。

「西ヶ谷(隆之)監督が信頼してくれて、チームの中心としてやれているのが大きいと感じます。これまで自分が経験したさまざまなこと、柏レイソルでのJ1昇格やJ1優勝などを周りに伝えながら、いまできることをしっかりやれている。今季、早めに二桁に乗せられたのはよかったですね。キャリアハイの更新は当然射程圏内で、いま目指しているのはもっと上です」

目標は、次の大台である20得点といったところか。

今年で林は31歳になる。東京Vのアカデミーで育ち、明治大を経てランドに帰ってきたのが2009年。ルーキーイヤーから32試合6得点と活躍し、大きな期待が寄せられた。しかし、クラブの経営難のあおりを受け、また大型ストライカーとして評価も高かったことから2010年柏に移籍。たった1シーズン、頬の赤みが印象的なピカピカのルーキーだった記憶はいまも色鮮やかで、三十路に入ったと言われてもいまいち現実感がない。

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