「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【この人を見よ!】vol.25 かぐわしき危険な香り ~MF38 梶川諒太~(17.8.30)

2017シーズンの開幕時から、梶川諒太はチーム内における重要度を着実に高めてきた。ほんのわずかなスペースでも前を向けるのは、機敏な身のこなしと技術の高さの表れ。パスとドリブルを巧みに使い分けて攻撃を仕掛け、ボールを失えばいち早く帰陣。守備の貢献度も高い。何より優れているのは、プレーが途切れない連続性だ。小さな身体で膨大な仕事量をこなし、ゲームから消える時間が少ない。夏場、勢いを盛り返してきたチームの立役者のひとりである。

■スペインの言い伝え

73分、梶川諒太は交代ボードに示された38番に目を留め、小走りにベンチのほうへ向かった。ヘアバンドを下ろし、戦闘モードを解除。ピンと張り詰めていた状態から自らを解き放つ。8月27日のJ2第30節、東京ヴェルディは愛媛FCに3‐0で勝利し、4連勝を達成した。

愛媛戦の序盤、梶川はミスからボールを失う場面が何度かあったが、それでリズムを崩さなかったのはさすがだ。次第に持ち直して攻撃陣を牽引し、守備では危険なスペースをケアするとともに、ボールホルダーに鋭く寄せてプレーを制限。まさに縦横無尽の働きを見せた。

パスと見せかけて、ドリブル。密集地帯をするすると抜けてくる。そうかと思えば、ドリブルで突っ込むと見せ、長いパスを左右に散らす。相手に狙いを絞らせず、攻撃にアクセントを加える自在の使い分けだ。これが現在の[4‐3‐3]のインサイドハーフで猛威を振るっており、もはやチームに欠かせない戦力と言っても異論は出ないだろう。

ロティーナ監督は、梶川を指して言う。

「スペインには『高級な香水は、小さな容器に入っている』という言い伝えがあります。メッシ、シャビ、イニエスタのようにね。小さな身体を不利としない多くのベストプレーヤーがいます」

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