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ソチは五輪遺産を活かせるか? どこよりも早い! 2018ロシアガイド 第10回 Text by 服部倫卓 

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写真提供:服部倫卓(以下すべて同じ)

■ロシアVSスウェーデン戦を観戦してきました
既報のとおり、新しいロシア代表監督には、CSKAモスクワの監督と兼任の形で、レオニード・スルツキー氏が就任した。ロシア代表にとって当面の目標はユーロ2016の予選突破であり、最大のライバルであるスウェーデンとの直接対決(9月5日@モスクワ)が、スルツキー監督の初采配となった。この試合に勝たないと、グループ2位以内に入ってストレートで本戦出場を決めることがほぼ不可能になるという、いきなりの正念場だ。ちょうど9月上旬にロシアに出張する予定があった筆者は、事前にチケットを手配して、この試合を現地観戦することができたので、まずはこれについて報告してみたい。

なお、早めに手を打ったこともあり、チケットは良席が比較的簡単に手に入った。ユーロ出場がかかった決戦の割には、チケット争奪戦などはないのかなと、やや拍子抜けだ。ただ、さすがに試合の数日前には完売したらしく、当日は45000人収容のオトクルィチエ・アレーナが満員になった。

これまで筆者はロシアのクラブの試合にはしばしば足を運んでいたものの、代表戦は今回が初めてだったので、新鮮だった。普段見るロシア・サッカーの観客席が、ヤンキー風の男性ばかりなのに対し、今回初めて体験した代表戦では、家族連れや女性も多く、日本のスタジアムにも通じる雰囲気だ。ロシア代表のレプリカユニフォームを着ている人が少ない一方(えんじ色の渋すぎる色味が一因ではないかと思うのだが)、アイスホッケー・ロシア代表のユニフォームを着ている人がいたりするのは国柄かなと感じた。

試合冒頭の選手入場の場面で、下の写真に見るように、ゴール裏のサポーター席から、巨大な横断幕と、4人の伝説的なサッカー選手の肖像が掲げられた。横断幕には、「自分たちの歴史に誇りを持て!」とある。4人の選手とは、向かって左から順に、イーゴリ・ネット(MF、キャプテンとしてソ連代表を欧州および五輪王者に導く)、レフ・ヤシン(GK、サッカー史上最高のGKとも称される)、グリゴリー・フェドートフ(FW、得点王2度の点取り屋)、エドゥアルド・ストレリツォフ(FW、通称「ソ連のペレ」)である。ソ連サッカー黄金時代のレジェンドたちをあらためて心に刻んで、かつての栄光とプライドを取り戻そうと、現代表選手たちに、そして国民全体に訴えているわけである。

(残り 5592文字/全文: 6596文字)

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