宇都宮徹壱ウェブマガジン

2020年に直面するブラインドサッカー 松崎英吾(日本ブラインドサッカー協会・事務局長)インタビュー<後篇>

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(c)Tete_Utsunomiya、以下全て同じ

前号に続いて、日本ブラインドサッカー協会(JBFA)事務局長、松崎英吾さんのインタビューをお届けする。前篇では、今年9月2日から7日まで東京・代々木で行われたIBSAアジア選手権について、競技面、運営面、そしてメディア露出など、さまざまな観点からの総括を試みた。後篇では「障がい者スポーツの報道のあり方」についてさらに掘り下げつつ、2020年の東京パラリンピックに向けたJBFAの取り組み、そこで浮かび上がった課題について、松崎さんに語っていただいた。(取材日:2015年9月28日@東京)

■「まったく興味ないよ」みたいなつぶやきもあっていい?

――障がい者スポーツとメディアとの関係の話題を続けたいと思います。日本代表のキャプテンだったおっちー(落合啓士)なんかも「もっと厳しいことを書いてください。それが日本のブラサカを強くするんです」と言っているんですが、まだまだハードルが高いように思えてならないんです。もちろん、障がい者スポーツに対する健全な批判というものができるようになったとき、JBFAが目指す「健常者と障がい者が混ざり合う」状態に大きく近づくと思うのですが

松崎 そうですね、それが本来あるべき姿ですからね。

――ただ書き手の立場からすると、ずっと継続的にブラサカを取材しているわけではないという、負い目みたいなものも確かにあると思うんですよ。あるいは「見当違いなものを書いてしまうのではないか」というリスク回避みたいな書き方になってしまうとか

松崎 なるほど、そうですね。大会後、記者の皆さんが書かれた記事、特に新聞社さんとかの書き方をじっくり読んでみたんですけど、落としどころとしては「2020年に向けて、国はこうしていかないといけないのではないか」みたいな、わりと大きな話で締められていて、具体的な敗因という話にまで踏み込んでいない感じなんですよね。

──なるほど(笑)

松崎 敗因という話でいえば、それこそさっき話題になった対戦の順番を交渉できなかったこととか、中国やイランが大会前30日以上も合宿をしているのになぜ日本ではそれができないのかとか、そうした組織の運営の限界という部分ですね。それらについても、ご批判いただくことはまったく問題ないどころか、むしろ歓迎なんです。けれども、取材されている人ほど内情を知ってしまっていて「協会単独では厳しいよね」という言い方になってしまう。そういう意味では、皆さん本当に優しいんですよね。

――これはスポーツのジャンルに限った話ではないと思うんですけど、取材対象に対して近すぎず遠すぎずという距離感って、非常に難しいんですよね。いわゆる「中の人」と仲良くなりすぎたり、感情移入しすぎたりしてしまうと、どうしてもまっとうな批判がしにくくなってしまうという

松崎 そういう意味では、報道だけじゃなくてTwitterとかSNSの投稿を見ていても、解釈の仕方とかあり方とかには少しずつですが、幅は出てきているのは感じますね。わりと批判的だったり、逆に「まったく興味ないよ」みたいなつぶやきがあったりして、そういうネガティブなものも含めたつぶやきというのは、普通のサッカーだったらいろいろあるじゃないですか。われわれとしては、そういう解釈の幅というものは、もっとあっていいと思っていますので。

――ちなみにブラサカのTwitterアカウントのフォロワーはどれくらいですか?

松崎 8600ぐらいですかね、そんなに多くないんですよ。

――1万もいっていないというのは、ちょっと意外ですね。だいぶ増えたような気もするんですけど

松崎 実はあんまり劇的に増えないんですよ。ちょっと施策が悪いのかもしれないですけど。選手のなかで最も積極的に発信しているおっちーのアカウントも1900ぐらいですね。

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