宇都宮徹壱ウェブマガジン

「FC今治に感じるのは『違和感』なんです」。ある地域リーグファンによる「岡田武史のクラブ」への評価

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(c)Tete_Utsunomiya 以下すべて同じ

今号の徹マガでは、11月21日から23日まで高知で行われた全国地域リーグ決勝大会(地域決勝)の模様をフォトギャラリーにお伝えする。これに関連して、特別寄稿をお届けすることにしたい(タグマ!版では無料公開)。本題に入る前に、少しだけ私の前口上にお付き合いいただきたい。

今回、寄稿していただいたのは、ナカヲさん、アサギリ。さん、前田カオリさん、そして吉田鋳造さんの4人。皆さんいずれも自他ともに認めるディープな地域リーグファンであり、こと地域リーグに関しては私よりもはるかに多くの試合を観戦している方々ばかりである。

そんな彼らに出したお題は「FC今治について」。ことの発端は、私がスポーツナビに書いた、地域決勝に出場した今治に関するこのコラム。以下、引用する。

(前略)今治に注がれる視線は、大きく3種類に大別された。すなわち、応援、好奇、そして反発である。3番目については若干の説明が必要だろう。これまで密かに地域決勝を楽しんできた人々にとり、今治とはおよそシンパシーが感じられない「よそ者」でしかない。むしろ、自分たちが密かに楽しんでいたコミュニティーに、いきなりドカドカと踏み込まれたような感情を抱いている人は、私の周りにも少なくないのが実情だ(後略)

地域リーグファンの今治への視線について、私が「反発」と書いたところ、鋳造さんから「心外だ」という意見をいただいた。「反発」ではなく「違和感」なのだという。その後、大会期間中の飲み会の席で「じゃあ、今治への違和感とは具体的に何なのか、書いてみませんか? 徹マガで掲載させていただきますから」という話になり、鋳造さんをはじめその場にいた4人の方々がこれに応じることとなった。鋳造さんには原稿の取りまとめをお願いし、このたびの掲載と相成った次第である。

思えば今年は、FC今治を通して地域リーグというカテゴリーがかつてなく脚光を浴びた年であった。四国リーグには多くの大手メディアが殺到し、スカパー!で地域決勝が全国中継され、私自身も何度も現地に訪れては毎月のように今治のコラムをスポナビで発表してきた。さまざまな情報投下によって、多くの日本のサッカーファンが、これまで気にもかけてこなかった地域リーグを「発見」するに至ったのである。

もっとも、ヨーロッパ人が「発見」したと思っていた新大陸には、実ははるか昔から先住民が暮らしていたように、一般のサッカーファンが「発見」した地域リーグにも、もともと一定数のファンは存在していたのである。にもかかわらず、これまでの今治に関するコンテンツの中に、そうした人々の声が反映されることはまずなかった。もちろん彼ら自身も、自身のブログやSNSでメッセージを発信している。しかし地域リーグというマイナーな属性ゆえであろうか、一般のサッカーファンにはなかなか届きにくいのが実情のようだ(以前、鋳造さんからもそういった話を聞いたことがある)。

果たして彼らは、地域リーグの風景を激変させたFC今治というクラブに、どのような眼差しを向けていたのであろうか。そしてそこに、どんな違和感を覚えていたのだろうか。それを言語化してもらい、徹マガを通じてより発展的な議論の場が生まれればよい、というのが当企画の目的とするところであった。ところが実際に集まってきた原稿を読むと、おしなべて今治に否定的な原稿が多い(苦笑)。もう少しポジティブな見方もあるかなと、ほのかに期待していたのだが、皆さんの今治の視線は予想以上に厳しいものであった。

ただ、確かに、全体的に批判的なテイストにはなっているが、それぞれの書き手が抱える「違和感」にはバリエーションがある。納得できる部分もあったので、それらについては私自身の見解を加えた。FC今治というクラブを通して、地域リーグというカテゴリーをさらに理解する一助となれば幸いである。

(残り 6592文字/全文: 8202文字)

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