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【無料記事】「頼りになる男」ヤマタク 今日の現場から(2016年9月18日@ムサ陸)

 3連休の中日となる日曜日は、近所の武蔵野市陸上競技場にてJFLセカンドステージ第9節、東京武蔵野シティFC対奈良クラブのゲームを取材。8月の中断期間を挟んで、久々のJFLである。試合前、奈良の「ヤマタク」こと山田卓也がわざわざ挨拶をしに来てくれた。この人と再会するのは、昨年の地域決勝以来のこと。当時の所属は四国リーグのFC今治であった。

「あれ? てっきり四国リーグに行っていると思っていました」と山田。この日は高知ユナイテッドSC対FC今治の一戦があり、今治がこの試合に勝利すれば四国リーグ優勝が決まる。確かに高知・春野での一戦も気になるところだが(結果については後述)、この日はどうしてもムサ陸に来なければならない理由があった(これについても後述)。13時にキックオフ。ベンチスタートとなった山田は、前掛かりの姿勢で戦況を見守る。

 試合は、武蔵野のホームゲームにしては珍しく、激しい点の奪い合いの展開。前半だけで武蔵野が2ゴール、奈良が3ゴールを叩き出し、その後は奈良が2ゴールを追加して5-2と試合を決定づけた。山田に出番が与えられたのは、中村敦監督が3枚目のカードを切った81分。特段の見せ場はなかったものの、しっかりとディフェンスラインを締めて、チームメイトと喜びを分かち合っていた。

 さて、この日は監督会見が行われたので(ムサ陸では極めて稀なことだ)、中村監督にヤマタクの起用の意図について尋ねてみた。おそらく守備固めだけではない「何か」を42歳のベテランに期待していたのではないか、というのが私の見立て。指揮官の答えは、このようなものであった。

「守備固めというよりも、7番の選手(CBの谷口智紀)が少し足を痛めたための交代です。本当はどこかのタイミングで、ボランチとして使おうと思っていました。山田は40歳を超えていますが、対人の最後のところで負けないし、足元(の技術)もしっかりしているので、本当に頼りになる存在。ゲームの締め方も知っていますから、クローザーとして常に計算できますしね。ですから『あとは任せた!』という感じでした」

 わずか9分のプレー時間であったが、指揮官からこれだけ信頼されているのであれば、悪い気はしないだろう。思えばFC今治時代にも、岡田武史オーナーから「あいつの戦う姿勢や球際の強さは、若い選手の手本になる」と大いに評価されていた。今治がJFLに昇格していたら、山田が奈良に移籍することはなかったはずだ。さすがに全盛期は過ぎたものの、ヤマタクは「頼りになる男」として、今もどこに行っても重宝されている。

 最後に「後述する」とした内容について付記しておく。

 まず、高知対今治の結果について。試合は今治が1点リードしたところで、台風16号の影響による激しい雷雨のため中断。結局、試合は中止となり、後日0-0から再試合が行われることとなった(参照)

 それと、武蔵野のホームゲームを取材することにした理由について。実は今年11月、『股旅フットボール』の続編的な新著を上梓するのだが(タイトル未定)、その最後の章で武蔵野を取り上げるべく、どうしてもこの奈良戦を取材する必要があった。しかし結果は2-5の大敗。これでは何とも締まらないので、来週もムサ陸のホームゲームを取材することに決めた。ぜひとも新著のエンディングに相応しい戦いぶりを期待したい。ちなみに対戦相手は、Honda FCである。

<この稿、了>

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