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「本命」不在のサバイバルゲーム WMフォトギャラリー(愛媛全社篇)<2/2>

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【10月24日=大会3日目@北条】

 大会3日目は、唯一2試合行われる北条に向かうことに。ところが人身事故で列車が大幅に遅れ、会場に到着したのは第1試合の前半が終わったタイミングであった。ちょうど地元の名産「鯛めし」が無料で振る舞われていたので、ありがたくいただく。前半を終えたエスペランサSCのサポーターも列に並んでいたのだが、なぜか外国人比率が高い。ジョイフル本田つくばFCとエスペランサの試合は、前半を0−0で折り返していた。

 現在、関東2部に所属しているエスペランサについて、私は事前情報をまったく持っていなかったのだが、ホルヘ・アルベルト・オルテガ監督をはじめ、コーチングスタッフの多くがアルゼンチン人。選手もアルゼンチンやブラジルの出身者が何人かいる。チームカラーはボカ・ジュニアーズと同じ青と黄。オルテガ監督が敬虔なクリスチャンということもあり、キックオフの前はこのように全員が神に祈りを捧げる。

 試合が動いたのは後半34分。つくばの川村誠也が、相手のクリアボールをインターセプトして先制ゴールを決める。しかしその4分後、エスペランサも相手陣内でのスローインから、アグスティン・オルテガがつないで北野智貴が強烈な左足によるボレーを放ち、同点に追いついた。北野は日本人だが、雰囲気とプレースタイルがいかにもラテン系。このアングルで切り取ると、まるでアルゼンチンで試合を見ているかのような気分になる。

 その後、試合は延長戦に突入。しかし延長前半終了間際、つくばが絶好の位置でFKのチャンスを得る。これを村が直接決めて、つくばが勝ち越しに成功。上手い選手だなあ、と思ってメンバー表の前所属を確認したら「ロックデールシティ・サンズFC/オーストラリア」と書かれてあった。確か、マケドニア移民のクラブで、何人かの日本人選手を受け入れていたはずだ(参照)。最近の地域リーグは、選手の経歴もまた国際色豊かになっている。

 1点リードされたエスペランサは、若い選手が多いためか(スタメンの平均年齢が20.2歳)、あるいはラテン・テイストの影響なのか、次第に荒っぽいプレーが目立つようになる。その後、つくばは延長後半40+2分にカウンターから深澤裕輝が追加点。ここでエスペランサは冷静さを失ってしまう。ついには相手ゴール前でのGKへのチャージをめぐってもみ合いとなり、あわや乱闘寸前という状況に。これほど血の気の多い試合というもの、全社では珍しい。この場面で退場者を出したエスペランサは1−3でつくばに屈した。

 試合後、サポーターへの挨拶を済ませると、エスペランサの選手たちはピッチ上で輪になり、アルゼンチン人コーチの日本語による言葉に耳を傾ける。「神様は、公平にたくさんのチャンスを与えます。でも、そのチャンスを決めるのは自分自身です。勝利したときはもちろん、試合に負けたときにも神様に感謝しましょう」。まるで神父の説教を聞いているかのようだ。最後に全員で神への祈りを捧げて、エスペランサの全社は終わった。

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