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【無料記事】献本御礼『アオアシ6』&『アオアシ7』小林有吾著 取材・原案協力 上野直彦

 ご存じ「育成」にフォーカスした異色の人気サッカー漫画。上野直彦さんから6巻を送っていただいたのは、まだ猛暑が続く8月のこと。ちょうど私も新著の準備で忙しく、いつかは紹介しなければと思いつつ、心ならずも当コーナーを放置してしまった。そうこうするうちに、このほど7巻が発売。またしても献本していただいたので、慌てて2冊同時にご紹介させていただくことにした(上野さん、ゴメンナサイ!)。

 今回の内容について、ざっくりと表現するなら「予想を超える怒涛の展開」と「意外性に満ちた布石の数々」。これ以上はネタバレになってしまうのであえて触れない。代わりに言及したいのが、作品を通して透けて見える、分厚い取材力。当作品の原案を作るために、上野さんが育成の現場を丹念に取材していたのは、ご本人からもたびたび聞いていた。ただしこの人の活動の場は、サッカーやスポーツビジネスだけにはとどまらず、その蓄積もまた膨大なものとなっている。

 先日、愛媛での全社(全国社会人サッカー選手権大会)取材の際にも、上野さんにばったり遭遇して嬉しく思うと同時に、「ここにも顔を出すか!」とある種の脅威さえ感じた。なでしこリーグ、トライアスロン、JOCBリーグ、スポーツビジネスの学会、そして全社。上野さんの取材現場の多様性には、いつもながら驚かされる。

 一見すると散漫にも感じられる、さまざまな現場での取材。しかしそのひとつひとつが、実は上野さんが抱えているテーマの重要な布石となっている。『アオアシ』もまた、そうした重層的な構造を持った作品である。定価552円+税。

【オススメ度】☆☆☆★★

「上野さん。今度飲むときに、例のクラブの内情をこっそり教えてください!」

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