宇都宮徹壱ウェブマガジン

中村憲剛のMVP受賞を心から祝福する理由 レギュラーシーズンの重みを再確認した今年のJリーグアウォーズ

 2016年のJリーグ最後のイベントである、Jリーグアウォーズ2016が12月20日に横浜アリーナで開催された。前回のアウォーズは「2016年問題」が理由とのことで、観客なしで行われたが(参照)、今年はJリーグを愛するファンやサポーターが全国から集まる、例年どおりのフォーマットが復活。やはり観客あってのアウォーズだな、とあらためて実感した。

 さて周知のとおり、今年のMVPは川崎フロンターレの中村憲剛が受賞した。03年に入団以来、川崎一筋14シーズン。36歳での受賞は歴代最年長である。とはいえ、当人は今回の受賞をまったく予期していなかったようだ。何度も深呼吸をして臨んだスピーチでは、チームメイトやクラブスタッフのみならず、「普段、僕らの洗濯物を洗ってくれているおばちゃん、掃除してくれているおばちゃん、グラウンドを管理してくれている皆さん、そしてフロンターレのすべてに関わってくれている皆さん」への感謝の言葉に終始した。

 今回の中村の受賞は、もちろん川崎のサポーターにとって嬉しいニュースであったわけだが、SNSでの反応は「信じられない」「びっくりした」といったものが多かったように思う。実はサポーターだけでなく、普段から川崎を追いかけている同業者でも、中村がMVPに選ばれるとは予想していなかったようだ。そのうちのひとりは「自分は阿部勇樹(浦和)だと思いましたね」と告白している。その理由は「今季、フィールドプレーヤーとして全試合にスタメンフル出場しているし、J1通算500試合出場の記録を打ち立てたし、セカンドステージ優勝と年間1位を達成したチームのキャプテンだから」。なるほど、確かに説得力はある。

 しかし投票の結果は、中村がぶっちぎりでトップ。MVPはJ1の18クラブの監督、そして17試合以上に出場した選手による投票で決まるが、中村には148票が集まり、2位の西川周作(浦和)の132票、3位の柏木陽介(浦和)とレアンドロ(神戸)の128票を大きく引き離しての受賞となった。ちなみに阿部は104票で7位と、思いのほか得票数は伸びていない。文字通り、蓋を開けてみなければわからない結果となった。

 今回の中村の受賞について、個人的には十分に納得できるものであり、心から祝福したいと思っている。そしてそれは「今季のJ1リーグ」という視点から考えても、非常に喜ばしく感じられる。ただ単に「憲剛、よかったね」ではなく、もっと広い意味で喜ばしい受賞だった、というのが私の率直な感想。以下、その理由を述べる。

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