宇都宮徹壱ウェブマガジン

『サポルト! 木更津女子サポ応援記』に託したもの 高田桂(漫画家・イラストレーター)インタビュー<1/2>

 先週に続いて「Jリーグの女子サポ」をテーマにゲストをお招きするシリーの第2弾。前回は「お笑い」という視点で、ものまねタレントのシンディーさんに登場いただいた。今回のゲストは、漫画家でイラストレーターの高田桂さん。高田さんといえば、女子高生のサポーターを主人公とした『サポルト! 木更津女子サポ応援記』(以下、『サポルト!』)が好評連載中で、私もWMにて書評を書かせていただいている。一部、引用しよう(参照)

 ありそうでなかった、女子サポを主人公にした当作品。作者は、東京ヴェルディのサポーターとしても知られる高田桂さんである。舞台は千葉県の木更津市。当地を本拠地とする木更津FCを応援する、女子高生3人組が主人公だ。コアサポでちょっとオラオラ系の風夏、何事にも前向きな帰国子女あゆみ、そしてライトサポ代表で「地味め女子」のムー子。物語は、ムー子の視点を通して、地元クラブをサポートする喜怒哀楽を描いてゆく。

 書評でも書いたとおり、高田さんご自身はヴェルディの熱心なサポーターであり、味スタのゴール裏での発見や感動のかなりの部分が作品にも反映されている。また、かつてはトップリーグでの優勝経験もある古豪で、2部暮らしが続いている上に経営的にも厳しく、だからこそ地元の熱狂的なサポーターに支えられている木更津FCは、ヴェルディとの共通点が意外と多い。となると、主人公の3人の女子高生たちにも「モデルがいるのではないか」と、あれこれ想像してみたくもなる。

 今回のインタビューで、「なぜ主人公を女子高生にしたのか?」、あるいは「なぜ舞台を木更津にしたのか?」といった疑問を投げかけながら、この作品に託そうとしたものについて、高田さんにじっくりと語っていただいた。なお、今回のインタビューはコミック アース・スター編集部のTさん(当人の希望により仮名)にも同席していただいている。(取材日:2017年1月20日@東京)

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■なぜ主人公を女子高生にしたのか?

――今日はよろしくお願いします。高田さんが描くサッカーの世界観といえば、『東京偉蹴Football』が思い出されます。あれはいつでしたっけ?

高田 向こう(FC東京)が落っこちてきて、J2でダービーをやったシーズンでしたから2011年でしたね。ただ当時は、自分の創作の中心に置くほど、サッカーにはまだ入れ込んでいたわけではないんです。応援のスタイルとか、横断幕のデザインとかには惹かれることはあっても、サッカーについては正直よくわからないところがありましたから。

――その後、『サポルト!』を描くまでの間、サッカーは扱っていない?

高田 モーニングで読み切りが1本、『あけがらすのランデブー』というサッカーボールが一度しか出てこないサポーターの作品があります。それが13年の3月。それから同人誌で『はまねこのアンサンブル』という、これもサポーターの漫画を描いて、あとは『グッバイ・ボールボーイ』。それでTさんが声をかけてくれたんだっけ。

編集T とある同人誌即売イベントで購入させていただいて、「サッカーのサポーターをテーマにした漫画家さんがいらっしゃるんだ」ってことをその時に初めて知り、それでぜひうちで連載をしていただけないかということをお話させていただきました。

――サポーターの作品を描き続けたのは、ずっとこだわっていたからですか? それともご自身の中で「プレーを描くのは厳しい」という判断があったとか。

高田 両方あるとは思います。サッカーに関していえば、ちょっとでも間違ったものを描いてしまうと、すごく厳しく指摘されたりするじゃないですか(苦笑)。そういう意味で、プレーヤーをあえて描こうとは思わなかったんですけど、その代わりに「サポーターって面白い」というのが大前提としてありました。

 サポーターって、最初はひとつの塊として、おっかなそうな兄ちゃんたちがワイワイやっている感じですよね。でも、ひとりひとりと接しているうちに、それぞれに顔があって生活がある。先代のヴェルディのコールリーダーが、水曜開催の試合にスーツ姿で現れたときは、何だか新鮮な気分になりましたね(笑)。

――「ああ、この人もちゃんと働いていて、養う家族があるんだ」みたいな感じですかね。わかります。で、この『サポルト!』なんですけど、あえてサポーターを女子高生に設定した理由って、何だったのでしょうか?

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