宇都宮徹壱ウェブマガジン

なぜいわきFCはフィジカルとビジネスにこだわるのか? 大倉智(いわきスポーツクラブ代表取締役)インタビュー <1/2>

 今週は、昨シーズンのアンダーカテゴリーで旋風を巻き起こした、いわきFC(福島県1部)の大倉智代表にご登場いただく。いわきFCについては、昨年の全社(全国社会人サッカー選手権大会)での衝撃もあり、かねてより注目していたクラブであったが、一方で謎に包まれた存在、というのが私の認識である。単に、ホームタウンのいわき市が東京から離れているということもあるが、クラブを経営面で手厚くサポートしている株式会社ドーム(アンダーアーマーの日本総代理店)の思惑が、今ひとつ掴みきれずにいた。

 幸い、広報担当の方とは以前からの知り合いだったこともあり、直接メールにて今回の取材を申し込んだところ「それなら大倉がドームに来るこの日でお願いします」という色良いお返事をいただくことができた。訪れたのは、江東区有明にある、さながら秘密基地のようなドームのオフィス。普段なかなか訪れる機会のない、スポーツビジネス最前線の場所に身を置いていると、アンダーカテゴリーのクラブを取材しているとは思えない、何とも不思議な感覚に襲われる。そんな空気感をイメージしていただきながら、さっそく大倉社長にご登場いただくことにしよう。(取材日:2017年1月26日@東京)

【主筆・宇都宮徹壱よりお願い】

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■いわきFCは何を担っているのか?

――今日はよろしくお願いします。今日はいわきではなく、東京でお話が伺えることができて助かりました。こちらのドームのオフィスには、どれくらいの頻度でいらしているんですか?

大倉 毎週、基本的に木曜と金曜ですね。ドームの業務執行会議があったり、プロジェクトの戦略会議であったり。社内に11のプロジェクトがあるんですけど、その中に去年立ち上がった「いわきグローリープロジェクト」というのがあります。

――どのようなプロジェクトなんでしょうか?

大倉 プロジェクトでは、主にいわきFCのこと、将来のスタジアムビジネスのこと、それからいわきでの各種スポーツイベントのことを話し合っています。当然、いわきFCを主体で考えつつ、コンセプトづくりからブランド構築まで、ドーム内の専門スタッフが集まっています。これらはすべて、自社のスタッフで賄えるのが、ドームという会社の強みなんですよね。さらにドームでは新しいチャレンジとして「正しいチーム作りをしましょう」という動きがあります。

 内容としては、現場寄りというよりも正しいチームがあるからこそ、情報や人を育てるという価値が生まれてマネタイズもできるという、スポーツビジネスの根源の部分をします。それは、いわきFCだけの話ではなくて、法政、東大をはじめとする、大学スポーツの改革というものも含まれています。そういった動きにも関わっていますので、木金はこっちでビッチリやらせていただいています(笑)。

――なるほど。今のお仕事は、いわきFCの社長の仕事のみならず、ドームという会社をハブとして日本のスポーツを変えていくようなアクションもやっていらっしゃると。

大倉 そうです。それの最たる切り口のひとつが、いわきFCなんです。ドームが考える「企業理念」や「スポーツの産業化」を世の中に伝えるのが、いわきFCが担っている役割ということです。

――ただでさえクラブの社長と忙しいと思うんですけど、その上に壮大なプロジェクトを抱えて、さらに今季から総監督も兼任することになりましたよね。はっきりいってキャパオーバーのようにも思えるのですが。

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