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【無料記事】スタジアムで見つけた「湘南らしさ」今日の現場から(2017年3月4日@BMW)

 3月最初の週末は、Shonan BMWスタジアム平塚で行われたJ2リーグ第2節、湘南ベルマーレ対ザスパクサツ群馬の試合を取材した。試合は、杉岡大暉の先制ゴール(これがプロ初ゴール)、そして高山薫の2ゴールで湘南が3-1で勝利。開幕2連勝で暫定首位に立った。

 今回、5年ぶりに湘南のホームゲームを訪れたのは、スポナビで連載中の『J2J3漫遊記』の取材である。この連載では、いつもは明確にテーマを絞ってから現地を訪れるのだが、今回は取材対象が関東のクラブということもあり、試合の中から「湘南らしさ」を抽出することを第一に考えて臨んだ。ここでは現場で見つけたヒントらしきものを、メモ代わりに記すことにしたい。

 まず感じたのは、スタジアムの雰囲気が昔と(それこそ中田英寿がプレーしていた頃と)ほとんど変わっていないことだ。もちろん、スタンドの増築や大型モニターの設置など、いくつかのマイナーチェンジはあったものの、それでも全体の雰囲気は往時とほとんど変わらない。そしてゴール裏のサポーターが歌うチャントもまた、90年代に耳にしていたものとまったく変わっていなかった。

 一方でピッチ上に目を転じると、今オフも主力が引き抜かれる一方で、新戦力が躍動していた。左サイドから切れ込んで先制ゴールを挙げた杉岡、そして75分に山田直輝に代わって投入された齊藤未月は、いずれも18歳。前者は市立船橋から今季入団、後者はベルマーレユースからの昇格組である。ちなみに同ユースからは、齊藤と同じく99年生まれの石原広教もトップに昇格(この日はベンチ外)。次代を担う選手たちが次々と現れるのもまた、このクラブの特徴である。

 試合後、今シーズンからスポンサーに復帰したフジタを歓迎する横断幕が、ゴール裏に掲出されたことも印象的な出来事であった。かつての責任企業であったフジタが、経営再建のためにスポンサーを撤退したのは99年のこと。それから18年の時を経て、同社は市民クラブとなった湘南のスポンサーに復帰することとなった。あの年に生まれた子供たちがトップチームに昇格したことも含めて、古参サポーターの万感はいかばかりであろうか。

 変わらぬスタジアムの雰囲気、若い選手たちの躍動、そして18年ぶりに復帰したスポンサー。この日の現場で「湘南らしさ」というものを、はっきりと確認することができた。ここからさらに取材を重ねて、自分なりの湘南ベルマーレ像を紡いでいくことにしたい。

<この稿、了>

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