宇都宮徹壱ウェブマガジン

三浦知良フォトブック『BOA SORTE KAZU』ができるまで 岩本義弘(プロデューサー)&中林良輔(編集)インタビュー<1/2>

 カズ50歳のバースデーを記念して作られた三浦知良フォトブック『BOA SORTE KAZU』が、売れに売れている。誕生日の2月26日がJ2開幕と重なり、しかもカズが開幕スタメンを飾るというトピックスもあり、話題性に事欠かなかったこともあっただろう。それでもこの出版不況の折、初版2万1000部がすぐに売り切れ、いきなり増刷がかかるというのは尋常ではない。

 この奇跡のようなフォトブックを世に送り出したのが、岩本義弘さん(左)、そして中林良輔さん。岩本さんはプロデューサーとして、そして中林さんは版元である東邦出版の編集長として当企画に関わってきた。日本のサッカー業界で知らぬ者はない、おふたりの強力なタッグがなければ、当企画の実現は難しかっただろう。出来上がったフォトブックは、確かに素晴らしい作品に仕上がった(私も見開きで1点、作品を提供させていただいた)。だが個人的に最も関心を寄せているのが、本書の制作過程である。

 本書に関して、私は2つの疑問があった。まず、業界内でも「非常にハードルが高い」とされるカズの事務所は、なぜ今回の企画にゴーサインを出したのだろうか。そして、サッカーキング(フロムワン)の統括編集長だった岩本さんと東邦出版の中林さんは、どのような理由からライバル会社の枠を越えてタッグを組むことになったのか。それらの疑問を探るべく、東京・高田馬場にある東邦出版のオフィスにお邪魔して、おふたりにお話を伺った。(取材日:2017年3月7日@東京)

【主筆・宇都宮徹壱よりお願い】

今回のコンテンツをご覧いただきましたら、ネタバレにならない範囲で感想を「# 宇都宮徹壱WM」のハッシュタグをつけてツイートしてくださるとありがたいです。参考になるツイートに関しては、編集部でRTさせていただくと同時に、今後の取材・執筆にも反映させていただきます。

■初版2万1000部ですぐさま増刷!

――今日はよろしくお願いします。この本が発売された2月26日は、ちょうどカズさんの50歳の誕生日であり、J2の開幕戦でもありました。実はここにいる3人は、いずれもニッパツでの横浜FCの開幕戦の現場にいたんですよね。私はゴール裏でカメラを構えていたのですが、中林さんはホームのゴール裏にいらしたとか。

中林 そうです。(前日までの)報道を見る限り、カズさんの開幕戦でのスタメン出場が濃厚だったので、子供を連れてプライベートで行こうと思っていました。じゃあ、どの席で見ようかと思ったときに、ゴール裏の皆さんがカズさんの登場にどういうリアクションをするのかを見てみたいと思って。けっこう楽しい一日でしたね。

――岩本さんは記者席ですか?

岩本 前半は記者席、後半はピッチサイドで見ていました。実は記者席には関係者も座っていたんですけど、カズさんのご家族が僕の目の前にいらしたんですよね。試合後もメディアによる誕生会までずっといました。

――あまりにも人が多くて、私は途中で失礼したんですけど、とにかくメディアの数にびっくりでしたね。ゲストも豪華で、ヴェルディや日本代表のチームメイトだった北澤豪さん、武田修宏さん、あとは川淵(三郎)さんも来ていたのはびっくりでした。

岩本 川淵さんはカズさんに「50まで頑張ってくれ」と言っていたので、行かないわけにはいかないとおっしゃっていましたね。ちょうどJリーグが開幕した頃って、川淵さんはまだ50代で、当時のプロ野球の社長とか実業界なんかだと小僧扱いだったそうです。でも当時の川淵さんに近い年齢で、カズさんが現役を続けているというのは、何とも不思議な感じですよね。

――確かにそうですよね。では、さっそくフォトブックの話題に入りたいと思います。発売してすぐに増刷がかかったとのことですが、初版はどれくらいだったんでしょうか?

中林 最初は1万部から考えていたんですけど、書店さんからの反応がものすごく熱いものに感じられて、1万部だと到底さばききれないと思ったんです。それで初版2万1000部にして、すぐに1万部を重版したんですけど。

――初版が2万1000部で、重版が1万部というのは、昨今の出版不況ではなかなかない数字ですよね。それにしても初版の数字が半端なのは、何か理由があるんでしょうか?

(残り 3591文字/全文: 5335文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

1 2 3
« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ