宇都宮徹壱ウェブマガジン

パ・リーグはなぜ共同マーケティング会社を設立したのか? パシフィックリーグマーケティング株式会社の「中の人」に訊く<2/2>

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■収益拡大が期待されるパ・リーグTV

――セ・リーグとのビジネスの考え方の違いが最も色濃く出るのが、放映権に関する考え方だと思います。御社ではパ・リーグTVを2012年からスタートさせています。今、Jリーグ界隈で話題のDAZNと同じネット配信ですが、立ち上げた一番の要因は何だったのでしょう?

上田 収益ですね。現状、パ・リーグの地上波中継がローカルでしか流れていない。となると、ビジターになったときの試合が観られないわけで、そこにニーズはあるだろうと。先ほどMLBの収益が1500億円から1兆円になったというお話をしましたが、その最大の要因は放映権でした。そこに収益を伸ばすチャンスがあるのではないかと。

――実際、パ・リーグの中継にニーズがあるという確証は?

上田 ありましたね。もともとソフトバンク系列のTVバンクさんが、パ・リーグTVの前身となる配信サービスをやっていて、それなりの会員数を確保していました。その状況を踏まえて、球団側が自社のサービスとしてプロモーションすれば、ファンクラブを中心に取り込めるという算段がありました。それと今はスポナビ・ライブさんにも映像の権利をご提供させていただいていますので、収益×露出の双方においてもネット配信というのが重要ではないかと思っています。

――パ・リーグTVの有料会員って、どれくらいでしょうか?

荒井 パ・リーグTVの有料会員は、16年のマックスの時で7万人いました。で、各球団のファンクラブ会員が950円で視聴できるというサービスなんです。それ以外のファンクラブ非会員の人が1450円。平均ひとり1200円として、7万人ですから。

――月で8400万円。大きいですね。

荒井 もちろんシーズンオフになると会員数が半分くらいまで減ってしまうんですね。ですから、僕らとしても試合がない時期のコンテンツをいろいろ考えなければならなくて、この間も6球団のチアを集めたダンスフェスティバルというイベントを配信しました。あとは開幕前のキャンプ、オープン戦中継も、コアなファンには人気があります。

――オフシーズンのコンテンツはどこが作っているんですか?

荒井 先ほど言ったダンスフェスティバルですと、大阪で開催されていますので、バファローズ球団が制作した映像をパ・リーグTVで配信しました。それからキャンプについても、各球団が現地で制作したものをいただいています。

――そうしたコンテンツに対しての、視聴者からの反応はどこから入ってきますか?

荒井 大きく2つあって、弊社でダイレクトに反応が見られるものはSNSとコールセンターですね。SNSだと、コアなファンのレスポンスが速いです。まだまだ知名度を上げていかなければならないフェイズではあるんですけど、少なくともコア層に対しては一定のブランディングはできていると思います。

上田 ただ、サービスを始めたばかりの12年は、わりと回線が止まってクレームの嵐でしたね。ファイターズがリーグ優勝した年で、優勝が決まった直後にTV中継が終わってしまったんですが、パ・リーグTVでは胴上げのところまで全部流したんです。「(回線が止まって)見られないぞ!」っていう電話がある一方で、「最後まで見せてくれてありがとう!」と言ってくださる方もいて、実にアンビバレンツでしたね(苦笑)。

荒井 その当時は、コールセンターがまだ設置されていなかったんですよね?

上田 だから僕がクレームの電話に出ていましたよ。あの時は鬱になりそうでした。

――今は上田さんが電話を取らなくていいんですね?

上田 コールセンターがちゃんとありますし、回線もあまり止まらなくなりました。ですから隔世の感はありますね。

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