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【無料記事】ご隠居が心配するJリーグの未来(再) 川端暁彦(ライター・編集者)インタビュー<2/2>

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■2ステージ制復活はJリーグの「ブラック企業化」?

――そして最後に2ステージ制の復活についてですが、これに関してはどうでしょう?

川端 アイデアがないんだなって思いますけどね。これはあまり指摘されてないですけど、2ステージ制って、要は「試合数を増やす」って決断なんですよ。かつての2ステージ制は16チームで行われていたので、30節プラスCS(チャンピオンシップ)だったわけです。でも18チームとなると34節のままですから、当時より4試合増えることになる。

――なるほど。ただでさえ過密スケジュールなのに、さらに試合数が増えると。

川端 そもそも18チームでCSなしの1ステージ制に変えるときの大義名分が「優勝チームしか出られないCSより、レギュラーリーグの試合数を4節分増やした方が収入増えるでしょ」ってことなんですよね。だから今回の2ステージ制導入は、まさに「ブラック企業化」(笑)。あえて嫌な言い方をすれば、「試合数をもっとギチギチに詰め込んじゃえば儲かるじゃん」っていうところなんですよね。

――いやあ、笑うに笑えない(苦笑)。これに入れ替え戦復活なんて話もあるんでしょうか?

川端 CSの裏番組としては成立するんですよ。具体的にまだ言及されていませんけど、2ステージ制復活となれば、恐らく入れ替え戦的なものも導入されることでしょう。ただ、試合数自体は劇的に増えるので、そうなると頑張って水曜日に試合しまくるのかなあとは感じますね。

――そんな過密日程の中で、しかもシーズン移行するとしたらウィンターブレイクも入るわけで、いったいどんなカレンダーになるんでしょうかね。

川端 ウルトラCが必要になるでしょうね。天皇杯を縮小するか、ナビスコカップをどうにかするのか。本気で全部詰め込むのも無理じゃないんですけど、今年みたいにコンフェデがあるとか、ワールドカップがあるとかいったら、本当に難しいと思いますよ。そうなると、選手にしてみれば「あれ、オフはいつ?」っていう日程になるんですよ。そもそもシーズン移行って、代表選手のオフを確保するためのアイデアだったはずなんですが(苦笑)。

――それにしても2ステージ制に関して、あれほどサポーターが拒否反応を示すとは、Jリーグ側も考えていなかったんでしょうかね?

川端 JFAハウスの前でも横断幕を張られて、正直ビビったとは思いますよ。おそらく内輪では「いいじゃない、CSやれば儲かるじゃない」みたいな感じで、そんな異論反論みたいな空気じゃなかったと思うんです。でも、お金を払っている側の気持ちは違った。この空気感をまったく想像できてなかったんだなと感じましたね。

――サポーターに対する想像力の欠如もさることながら、そもそも情報の出し方自体に問題があるように私には感じられましたね。密室の中でいろいろな重要案件が議論されていて、それがサポーターにはまったく伝わってこないという。

川端 旧態依然としていますよね。戦略会議だ、実行委員会だといっても、議論の中身は完全に見えないものになっていたじゃないですか。そのくせ個々の委員は、新聞社の取材を受けたらポロポロしゃべって、その中身が断片的にポロポロ出てくるっていう。でもって、Jリーグが後から「あれはそういうことじゃありません」なんてリリース出して。だったら最初から「こういう見解だ」「こういう会議をして、こういうことを話し合いました」っていうリリースを逐一出していくべきですよね。

――2ステージ制も最初新聞で出ましたもんね。

川端 そうそう。しかも「朝日新聞だから実質大本営発表なんだな」ってサポーターから見透かされていたり。これってもうナンセンスですよね。そういうJリーグの脇の甘さみたいなのが、サポーターの怒りを買ったというのは少なからずあったと思います。

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